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ブログ・コラム

2026.09.06

理想を詰め込むほど、いい家になるとは限らない|注文住宅を建てる前に知っておきたい「間取りは足し算ではない」という考え方

カテゴリ:
家づくりと間取りの考え方

希望を全部入れたのに、

なぜか暮らしにくそうな家になるのはなぜか?

 

理想と現実をバランスよく考えた注文住宅を建てる前に考えておくべき、

間取りと暮らしの「優先順位」。

 

 

奈良県で注文住宅を計画する建築家の間取り設計風景。LDK、パントリー、ファミリークローゼット、洗面脱衣室、玄関収納などを配置し、家族の暮らしや収納、生活動線の関係を検討している住宅プラン。

※間取りは希望する部屋を並べるのではなく、家族の暮らしと動線、収納、居場所の関係を整えた暮らしのカタチを具体化した結果です。

 

 

家を建てるなら、

できるだけ希望を叶えたい。

 

そう思うのは、とても自然なことです。

広く開放的なLDK

家事が楽になる回遊動線。

玄関からつながるパントリー。

大容量のファミリークローゼット。

洗濯が一か所で完結するランドリールーム。

ホテルのような美しいインテリア。

庭を眺めながら過ごせるリビング。

そして、できることなら平屋で。

 

SNSや住宅雑誌、YouTubeなどを見ていると、

「これもいい」

「あれも欲しい」

と、住まいへの希望は少しずつ増えていきます。

 

住宅設計をしていると、

希望したものをたくさん取り入れることと、

その家族にとって暮らしやすい家になることは、

必ずしも同じではないと感じる場面があります。

 

なぜなのでしょうか?

今日は「何を取り入れるか」ではなく、

希望と希望を、どのようにつなげて考えるのか。

そんな視点から、家づくりについて

考えておくべき内容を少し書いてみたいと思います。

 

「欲しいもの」を集めるだけでは、家は整わないということ。

 

このコラムを読んでいる皆さんも、

注文住宅について調べていると、

「採用してよかった間取り」

「絶対につくりたい設備」

「後悔しない家事動線」

といった情報をたくさん目にするのではありませんか?。

 

参考になるものも少なくありません。

しかし、それをそのまま自分たちの家に当てはめられるかというと、

話は随分異なってきます。

 

なぜなら、

暮らしている人が違うからです。

これまで暮らしてきた生活環境。

身近で接している人間関係。

家族構成。

仕事。

起床時間。

帰宅時間。

料理の仕方。

洗濯する時間。

買い物の頻度。

休日の過ごし方。

来客の多さ。

趣味。

一人で過ごしたい時間。

家族で過ごしたい時間。

そして、10年後、20年後の暮らし。

 

例えば同じ「5人家族」だったとしても、

生活の中身、暮らしの持つ意味はまったく同じではありません。

 

だからこそ、

よさそうに見えても、

誰かにとって便利だった間取りが、

綺麗に見えるデザインも、

実際にそのような空間に身を置いても

自分たちにも心が穏やかになる空間だとも限りませんし、

暮しが楽しくなるとは限らないのです。

 

例えば「回遊動線」は、本当に必要でしょうか?

回遊できる間取りは人気があります。

玄関から洗面室へ。

洗面室からファミリークローゼットへ。

そこからLDKへ。

行き止まりをつくらずに、家の中をぐるりと移動できる。

 

確かに暮らし方と合えば、とても便利です。

しかし、回遊できるようにするためには、

もう一つ出入口が必要になります。

 

すると、その部分には家具や収納を置きにくくなることがあります。

さらに「歩く距離は短くなったけれど、収納できる場所も減った」

ということも起こり得ます。

 

つまり、

回遊できることだけを考えるのではなく、

動線・収納・家具配置を一緒に考える必要がある

ということです。

 

収納は、多ければ多いほど片付くのでしょうか?

「収納はできるだけ多く欲しい」というご希望もよくあります。

 

もちろん、収納は大切です。

しかし、収納面積を増やすことと、

暮らしが片付くことも同じではありません。

 

〇関連blog・コラム

収納を増やしても片付かないのはなぜ?|散らからない家をつくるために、建築家が見つけた本当の原因

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail949.html

 

大切なのは、

何を・誰が・いつ・どこで使うのか?

例えば、掃除機を使う場所から離れた収納にしまえば、

毎回取りに行かなければなりません。

帰宅して脱いだ上着を収納する場所が生活動線から外れていれば、

椅子やソファに置いてしまうかもしれません。

料理中に使うものがキッチンから離れていれば、

大きなパントリーがあっても使いにくく感じることがあります。

 

収納は「量」だけではなく、

暮らしの行動と収納場所との距離

まで考えて初めて機能します。

 

LDKも、広いほど開放的になるとは限りません。

LDKはできるだけ広くしたい」これも注文住宅では多いご希望です。

けれど、28帖のLDKより20帖のLDKの方が、

広く心地よく感じられることがあります。

 

なぜでしょうか?

視線がどこまで抜けるのか。

窓の位置はどうなのか。

庭とのつながり。

天井の高さと幅の関係性はどうなのか。

家具の大きさ。

家具と家具の間隔。

照明。

壁や床の色。

そして、人が歩く場所。

こうしたものが組み合わさって、

私たちは空間の広さを感じています。

 

つまり「何帖あるか」と「どう感じるか」は別の問題です。

これは以前のコラムでも詳しく書いたテーマですが、

家づくりの優先順位を考えるうえでも非常に重要です。

 

数字を大きくすることではなく、

その面積をどう使うのか?

そこに設計の意味があります。

 

〇関連blog・コラム 

LDKは何帖あれば広いと感じるのか?奈良で注文住宅を建てる前に知っておきたい「25帖でも広く感じる家、35帖でも狭く感じる家」の設計の違い

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail965.html

 

ホテルライクな家も「高級な素材」だけではつくれない

ホテルライクな住まいにしたい。

和モダンの落ち着いた家にしたい。

旅館のように静かに過ごせる家にしたい。

そうしたご相談もあります。

 

では、高価なタイルを使い、

大きなキッチンを入れ、

間接照明を増やせば、ホテルライクな家になるのでしょうか?

 

私は、それだけではないと考えています。

ホテルで感じる心地よさを思い出してみると、

視界に余計なものが入りにくい。

照明が眩しすぎない。

家具の位置が整っている。

素材が無秩序に切り替わらない。

そして、空間に「余白」があります。

 

和の住まいにも「間」や「陰影」という考え方があります。

何かを足し続けるのではなく、

あえて何も置かない場所をつくる。

 

視線の先に庭を置く。

少し天井を抑えてから、その先の空間を開く。

 

明るさを均一にするのではなく、

光と陰をつくる。

 

そうした関係を整えることで、

住まいの上質さは生まれていきます。

一つひとつは「正解」でも、全部集めると正解ではなくなることがある。

ここが、今回いちばんお伝えしたいことです。

 

回遊動線が悪いわけではありません。

ファミリークローゼットが悪いわけでもありません。

広いLDKも、ランドリールームも、

パントリーも、大きな窓も、平屋も、

ホテルライクなインテリアも、それぞれに魅力があります。

 

〇関連blog・コラム

ランドリールームで後悔する人が見落としていること。家事動線だけでは叶わない、建築家が提案する本当に暮らしやすい間取りと住まいの考え方

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail874.html

 

問題は、それぞれを単独で考えてしまうことです。

建築空間では、一つを動かすと、別の何かが変わります。

窓を大きくすれば、

家具を置ける壁が減るかもしれません。

 

収納を増やせば、

居室の面積とのバランスが変わります。

 

回遊動線をつくれば、

収納できる壁が減ることがあります。

 

LDKを広くすれば、

家族同士の距離や音の感じ方も変わります。

 

中庭をつくれば、

光や視線だけではなく、動線や建物の形も変わります。

 

つまり家は「欲しいものの集合体」だけを考えてしまうと

何かが崩れてしまうということ。

家の空間は、

それぞれの要素が影響し合う、一つの生活環境ですから。

 

では、家づくりでは何を優先すればよいのでしょうか?

ここで「家事動線を1位、収納を2位、デザインを3位」

というように順位を決めればよい、

という話でもありません。

 

私が設計の前に大切にしているのは、

その希望が生まれた理由を考えることです。

 

例えば「広いLDKが欲しい」という希望があったとします。

そこで「何帖欲しいですか?」だけで終わらせない。

なぜ広いLDKが欲しいのでしょうか。

家族みんなで過ごしたいから?

友人をよく招くから?

庭を眺めながら過ごしたいから?

大きなソファを置きたいから?

子どもが遊んでいても窮屈に感じないようにしたいから?

 

同じ「広いLDKが欲しい」でも、

理由が違えば設計の答えも変わります。

「何が欲しいか」より、「どんな時間を過ごしたいか」

これは、家づくりを整理するときの大切な視点です。

 

例えば「アイランドキッチンが欲しい」ではなく、

料理をしながら家族と話したい。

「中庭が欲しい」ではなく、

外からの視線を気にせず朝の光を感じたい。

「和室が欲しい」ではなく、

休日に寝転がったり、静かに瞑想したり、

写経をしたり、穏やかな気持ちで和の雰囲気を味わいたい。

 

「ファミリークローゼットが欲しい」ではなく、

朝の支度を家族がスムーズにできるようにしたい。

 

ここまで掘り下げてみると、

本当に必要なのは、

最初に思っていた「設備」や「間取り」とは違う場合があります。

 

逆に、当初は考えていなかった空間が、

その家族にとって大切だと気づくこともあります。

夫婦で希望が違うことも、家づくりでは自然なことです。

 

家づくりの打ち合わせをしていると、

ご夫婦で大切にしたいことが違うことがあります。

 

一人は、開放的なLDKを望んでいる。

もう一人は、落ち着ける小さな居場所を望んでいる。

一人は、生活感を徹底的に隠したい。

もう一人は、使いやすさを優先したい。

 

これは、どちらかが間違っているわけではありません。

家に求めている役割が違うのです。

 

そこで、どちらかが我慢するのではなく、

「なぜ、それを大切にしたいのか」を整理していきます。

 

すると、一見対立していた二つの希望を、

別の方法で両立できることがあります。

 

設計とは、

希望を多数決で決める作業ではありません。

異なる価値観の間に、

その家族らしい答えを見つけていくことでもあると思っています。

 

SNSやAIで集めた情報は、捨てなくてもいい。

最近では、

InstagramやPinterestYouTube

そしてAIを使って、

家づくりについて詳しく調べてからご相談に来られる方も増えました。

 

私は、それ自体はとても良いことだと思っています。

好きな空間。

気になる間取り。

暮らしてみたい家。

逆に「これは嫌だ」と感じる写真。

そうした情報には、その人の価値観が表現されています。

 

ですから、

集めた情報を捨てる必要はありません。

ただし「これをそのまま採用したい」で終わらせず、

なぜ自分はこれに惹かれたのかを考えてみる。

 

そこから、住まいづくりは少しずつ自分たちのものになっていきます。

奈良で家を建てるということも、間取りに影響します。

そして住宅は、

家族の希望だけで完成するものでもありません。

 

建物が建つ「場所」。

奈良市、生駒市、大和郡山市、橿原市、桜井市、香芝市、葛城市、生駒郡、北葛城郡、明日香村、高取町、吉野郡など、

同じ奈良県内でも、

土地の形状や高低差、道路との関係、周囲の建物、山や庭への眺望、

光の入り方、外からの視線など、

敷地条件は一つひとつ異なりますが

特に奈良県は南北方向に広く、平地、盆地が多い北部。

比較的色々な環境が混ざり合った橿原、桜井、葛城、香芝を中心とした中南和地域。

山々に囲まれ、郊外の贅沢や自然な眺望に恵まれた高市郡地域や吉野方面。

 

SNSで見つけた同じ間取りを、

違う土地に置いたとしても、

同じ心地よさになるとは限りません。

 

家族の暮らしと、土地の個性。

その両方を読み解きながら、

住まいを整えていくことが大切です。

 

希望を叶えることから、「暮らしを整えること」へ

家づくりでは、たくさんの選択をします。

土地、間取り、広さ、構造、性能、キッチン、

収納、窓、照明、素材、家具、庭。

 

選択肢が多いからこそ、

途中で何が正解なのか分からなくなることもあります。

 

そんなときには「どちらの商品がいいだろう」

だけではなく、

一度「私たちは、この家でどんな時間を増やしたかったのだろう?」

というところまで戻ってみてください。

 

すると考える基準が少し変わります。

やまぐち建築設計室が、すぐに間取りを描かない理由。

やまぐち建築設計室では、

最初から間取りを決めていくのではなく、

現在の暮らしについてお聞きする時間を大切にしています。

 

朝起きてから家を出るまで。

帰宅してから眠るまで。

休日の過ごし方。

家事の仕方。

趣味。

家族で過ごす時間。

一人になりたい時間。

これまでの暮らしの文化と価値観。

今の住まいで感じている小さな不便。

そして、これからどんな暮らしをしてみたいのか。

 

それらを整理していくと、

最初に挙げていた「欲しいもの」の奥から、

そのご家族が本当に大切にしたかったものが見えてくることがあります。

 

間取りを考える前に、暮らしを考える。

そして、

暮らし・動線・収納・光・視線・家具・庭・デザインを、

別々ではなく一つの環境として設計する。

 

和モダンでも、

ホテルライクでも、

ジャパンディでの

平屋でも、二階建てでも、三階建てでも

その考え方は変わりません。

 

美しいことと、

暮らしやすいこと。

 

静寂と、

家族の賑わい。

 

日常と、

少し特別な時間。

 

そのどちらかを選ぶのではなく、

そのご家族にとって心地よい関係を探すこと。

そこに、注文住宅を設計する意味があると考えています。

 

まだ希望がまとまっていなくても、

相談できることが沢山あります。

 

「土地もまだ決まっていない」

「夫婦で希望が違う」

「平屋か二階建てか迷っている」

「和モダンとホテルライク、どちらも好き」

SNSを見すぎて、何が自分たちに合うのか分からなくなった」

そんな段階で、

設計事務所や建築家に相談するのは早いと思われるかもしれません。

 

けれど、

すべてが決まってから相談する必要はありません。

むしろ、まだ答えが決まっていない段階だからこそ、

多く事柄を整理できることがあります。

 

やまぐち建築設計室では、

奈良県橿原市のアトリエにて、

予約制で住まいづくりのご相談をお受けしています。

 

何を建てるかを急いで決めるためではなく、

今の暮らしに感じていること、

これから大切にしたい時間、

土地や間取りについて迷っていることを整理しながら、

自分たちの家づくりでは、何を基準に考えていけばよいのか。

 

そこから一緒に考えていく時間。

家づくりは、

希望をたくさん叶える競争ではありません。

 

完成したときだけではなく、

その家で5年、10年、20年と暮らした先にも、

「この家でよかった」と思えること。

 

そのために、

何をつくるかの前に、

どんな暮らしをつくりたいのか。

 

一度、丁寧に考えてみませんか。

やまぐち建築設計室の予約制住宅相談会のご案内

 

 

※新築・リフォーム・土地探しなど、

まだ考えがまとまっていない段階からご相談いただけます。

 

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

住まいの設計、デザインのご相談は
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