ブログ・コラム
2026.05.03
認知のゆがみを整える住まい|暮らしの環境を見直す建築家の設計視点
- カテゴリ:
- 暮らしの事
認知のゆがみを整えるということ
暮らしと関係性を整える
住まいの設計視点を丁寧に・・・・・。
今日は、認知のゆがみについて、
ゆっくりと言葉を交わす
時間がありました。
新築やリフォームのご相談ではなく、
「暮らしの環境を、どうにか整えたい」という
「お問い合わせ」から
はじまった「ご相談」の時間。

※現在お住まいのマンション住戸(共同住宅)の平面図
間取りは広さではなく“関係性の設計が重要”
距離と動線が家族の空気を変えていきます。
住まいの話でありながら、
本質はもっと内側にあるもの。
人の感じ方や、関係性の在り方。
そして、日々の解釈の
積み重ねについての話です。
同じ出来事なのに、
なぜ「疲れる日」と「穏やかな日」が
あるのか?
日々の出来事は、
それほど大きく変わりません。
けれど、
その一日が軽やかになるのか、
それとも重たく感じるのかは、
出来事そのものではなく、
「受け取り方」と「その環境」によって
大きく左右されます。
〇関連blog
人生の質を整える住まいとは何か。|間取りの前に考える「暮らしの価値観」と日日是好日の設計
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail821.html
たとえば、何気ない家族のひと言。
それを「無関心」と感じるのか、
それとも「信頼」と受け取るのか。
ほんのわずかな違いですが・・・・・。
その解釈の差が、
関係性の温度を変えていきます。
そしてその変化は、
ある日突然ではなく、
日々の中で少しずつ
積み重なっていくものです。
認知のゆがみは、
環境の中で大きくなっていくという事。
認知のゆがみは、
特別なものではありません。
むしろ、
・疲れているとき
・余裕がないとき
・空間が落ち着かないとき
こうした状態の中で、
自然と生まれてくるものです。
そして多くの場合、
「相手が変わった」のではなく、
自分の「解釈のフィルター」が
変わっていることが多いように思います。

※人の動作寸法と行動範囲を示した人体スケール図。
座る・歩く・食事するなどの日常動作を基準に、
家具配置や通路幅を設計するための基礎資料。
住まいのストレスを減らすための
人間工学的視点を取り入れた住宅設計の考え方。
ここで見落とされがちなのが、
そのフィルターをつくっているのが
「環境」から生まれているという視点です。
空間が思考をつくり、
思考が感情をつくるということ。
〇関連blog
間取りの前に整える「居場所」の設計|建築家が提案する“程よい心地よさ”で家族と人生の質を高める住まい
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail819.html
整っていない空間は、
無意識のうちに思考へ負荷をかけ続けます。
視界に入る情報が多いほど、
脳は常に処理を求められます。
これは環境心理学の分野でも
明らかになっていることで、
・視覚ノイズの増加
・判断回数の増加
・注意の分散
これらはすべて、
精神的な疲労につながります。
そしてその状態では、
・ネガティブな解釈を選びやすくなる
・短絡的な判断が増える
・他者への許容度が下がる
つまり・・・・・。
空間の乱れは、
感情の揺れを増幅させる
装置にもなり得るのです。

※(HAREM)・ローソファ
視線が下がると、心も落ち着く。
家具の高さひとつで暮らしの質は変わります。
家具レイアウトが“心の流れ”を左右する
ということ。
〇関連blog
なぜか落ち着かない家を整える ― 配色・レイアウト・家具から考える、くつろげる住まいの設計
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail688.html
ここで具体的な設計の話に触れてみます。
間取りの中に配置する家具のレイアウトは、
単なる「物の配置」ではありません。
「視線」と「動線」と「心理」を
同時に整える設計要素となるものであり
間取りにも空間構成にも
大きく関与するものです。
たとえば、
・ソファの向きひとつで、
会話の生まれ方は変わります
・ダイニングとリビングの距離感で、
家族の関係性は変わります
・視線の抜けがあるかどうかで、
安心感は大きく変わります
・間取りに対する配置で、生活動線や
家事動線が変化します
〇関連blog
ダイニングテーブルの置き方ひとつで、暮らしの質は変わる|和モダン住宅におけるLDK設計の考え方
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail737.html
さらに、
壁際に寄せすぎた配置は、
空間に圧迫感を生み、
逆に、適度な余白を持たせた配置は、
心理的な“逃げ場”をつくります。
やまぐち建築設計室では、
単に「広く見せる」ためではなく、
住まい手さんの生活と暮らし
そしてこれから始まる暮らしの趣に沿って
“感情が穏やかに流れる配置”を
設計するように心掛けています。
収納は「心の余白」をつくる装置
収納もまた、
単なる「機能」として解釈していません。
収納の設計が曖昧だと、
・物の定位置が決まらない
・探す時間が増える
・出しっぱなしが習慣になる
こうした状態が日常化します。
そしてこれは、
思考の中にも同じ状態をつくります。
つまり、
片付かない空間は、
思考の中にも“未処理”を増やしていく。
逆に、
・使う場所の近くに収納がある
・ワンアクションで出し入れできる
・見せる/隠すが整理されている
こうした収納は、
日頃の行動をスムーズにしつつ、
思考のノイズを減らします。
これは結果として、
感情の安定や、
人との関係性の穏やかさにも
つながっていきます。
照明は“感情のスイッチ”をつくる
照明の設計も、
非常に重要です。
明るさは、単に見やすさだけでなく、
感情に直接作用します。
・強すぎる光は、緊張を生み
・均一な光は、単調さを生み
・陰影のある光は、落ち着きを生みます
特に間接照明や局所照明は、
空間にグラデーションをつくり、
心理的な奥行きを生み出します。
これは、
「どこにいても同じ」ではなく、
「場所ごとに意味がある」空間をつくること。
つまり、
照明は空間に“居場所”を与える設計要素
にもなるものです。
夜の時間帯に、
自然とリラックスできる空間には、
必ず灯りの設計が整っています。
パーソナルエリアと距離の設計
人にはそれぞれ、
心地よい距離があります。
近すぎれば疲れ、
遠すぎれば孤独を感じる。
この微妙な距離感を整えるのが、
間取り要素では足りない
色相心理学も含めた
住まいの「空間設計」による考え方です。
〇関連blog
なぜか心地いい家には理由がある ― 床色と家具の関係から考える、ホテルライクで和モダンな住まいづくり
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail689.html
・視線が交わりすぎない配置
・音が届きすぎない構成
・気配だけを感じられる距離
・気持ちに働きかける色彩計画
これらはすべて、
住まい手さんの「価値観と思考、習慣」から
意図して設計できます。
やまぐち建築設計室では、
“関係性が壊れない距離”ではなく、
“関係性が深まる距離”を設計します。
設計とは「暮らしの解釈」を整えること
単なる図面作成ではなくて、
その人の暮らし方を見つめ直し、
意味を再定義する行為が設計の価値です。
・なぜ違和感が生まれているのか
・どこでストレスが発生しているのか
・どうすれば自然に整うのか
これらを読み解き、
空間として再構築していく。
それが、設計という行為の本当の意味。
では、何から始めればいいのか?
特別なことは必要ありません。
まずは、
日頃から暮らしている空間や間取りの中で
「なんとなく気になっている違和感」を
見過ごさないこと。
その違和感は、
・家具の配置かもしれません
・収納の使いにくさかもしれません
・光の質かもしれません
そしてそれらは比較的、
改善できる要素です。
認知のゆがみは、日常生活の周辺で
誰にでも起こります。
だからこそ、
心だけで解決しようとするのではなく、
環境からも
整えていくことが大切です。
住まいを整えることは、
思考を整えること。
思考が整えば、
関係性も自然と整っていきます。
やまぐち建築設計室では、
間取りの前に「暮らしの状態」を
整えることから始めています。
誰かに相談するほどでもない
違和感でも構いません。
その違和感こそが、
これからの暮らしを変える
入口かもしれません。
無理に答えを出す必要はありません。
ただ一度、
今の暮らしを言葉にしてみる時間を
持ってみませんか?
その先に、
これまでとは違う景色が
見えてくるかも知れません。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
ご連絡ください
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