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ブログ・コラム

2026.03.13

内的外部という設計思想|ホテルライクに設計するリビングとつながる半外部空間が暮らしを豊かにする住まい

カテゴリ:
設計の事・デザインの事

「必要な余白」という設計

内的外部がつくる、暮らしの豊かさ

 

住まいの設計を考えるとき、

多くの人はまず「部屋の数」や

「間取りの効率」から考え始めます。

 

・リビングは何畳必要か

・収納はどれくらい必要か

・家事動線はどうするのか

・書斎は作れるのか

 

もちろんそれらは、

住まいづくりにおいて大切な要素です。

 

しかし、設計という視点から見ると、

本当に暮らしの質を左右するのは、

それらの機能だけではありません。

 

むしろ大切なのは「空間の余白」です。

 

奈良の建築家による住宅設計事例。リビングとフラットに繋がる半外部空間の中庭テラス。タイル張りの床と壁で囲われた内的外部にポルトローナ・フラウの屋外家具SOLARIAを配置し、深い庇と大開口サッシによって室内と屋外が一体化したホテルライクな住まいの空間設計。

※リビングからフラットに繋がる半外部空間。
 深い庇とタイル壁で囲われた中庭テラスが、

 室内のように心地よい内的外部を生み出します。 

 

 

 

私は設計の中で、

意図的に「余白」をつくることがあります。

 

それは無駄なスペースではなく、

暮らしに豊かさを生むための

「必要な余白」と呼んでいるものです。

 

今回は、

その設計の考え方である

「内的外部」という空間について、

少しblogで書いてみたいと思います。

 

内的外部という空間

 

住まいには

「内部」と「外部」があります。

リビング、ダイニング、キッチン、

書斎、寝室、トイレ、洗面、脱衣、浴室・・・。

 

これらは内部空間です。

 

一方で、庭、テラス、アプローチ、外構

これらは外部空間になります。

 

しかし、住まいの設計において

本当に面白く、

そして暮らし始めてから

豊かな空間になるのは、

その中間領域帯です。

 

私はそれを「内的外部」

と呼んでいます。

 

これは

「外部でありながら内部のような空間」

という意味です。

 

たとえば今回のブログ画像では、

リビングからフラットに繋がる

テラスを設けています。

 

段差はなく、

室内の床と連続する高さで繋がる

デッキのようなスペース。

 

そしてその周囲を

少し高い壁で囲います。

 

屋根でも囲いながら

外側を意識できる「隙間」を設計しています。

するとどうなるのか?

 

そこには

外なのに室内のような空間

が生まれるのです。

 

単純な中庭空間ではなくて

外側を味わいつつも内側の居心地で

過ごすことが出来る空間。

 

室内のような外部空間

 

一般的なウッドデッキやテラスは

庭に開かれた空間です。

 

しかし、その状態に緩急をつけ、

周囲を壁で囲い「スリット」のような

外部を味わう状態を設計する事で

空間の性質が変わります。

 

視線が守られ

外からの気配が和らぎ

その場所は安心できる場所

へと変わります。

 

そしてそこに

天井のように、深い庇を設けます。

 

庇には

さまざまな役割があります。

 

・日差しをコントロールする

・雨を防ぐ

・建物の外観を整える

 

しかし設計者の視点では

もう一つ大きな役割があります。

 

それは空間をつくることです。

 

深い庇があることで

外部空間は

単なる屋外ではなくなります。

 

光はやわらかくなり

陰影が生まれ、

その場所は半屋内空間のような

性質を持ち始めます。

 

人が落ち着く空間の条件

 

人はどんな空間で

落ち着くのでしょうか?

 

環境心理学の研究では、

人が安心感を感じる空間には

いくつかの特徴があるといわれています。

 

その一つが「守られている感覚」です。

 

これは心理学で

プロスペクト・リフュージ理論

と呼ばれる考え方です。

 

簡単に言うと

・視界は開けている

・背後は守られている

という状態です。

 

カフェ等で席を選ぶとき、

人は無意識に、壁際の席、角の席

を選ぶ傾向があります。

かなりの確率で・・・・・。

 

それは

背後が守られているからです。

住宅でも同じです。

 

完全に開けた空間よりも

・一部が囲われ

・視線がコントロールされ

・安心できる

そんな空間の方が人は落ち着きます。

 

内的外部は、

まさにその条件を満たしています。

 

庭でもない、室内でもない

内的外部は、庭でもない、室内でもない

その中間です。

 

しかしこの

「中間領域」があることで

暮らしの幅は大きく広がります。

 

例えば

朝のコーヒーを飲む場所

夕方に風を感じる場所

読書をする場所

子どもが遊ぶ場所

何もしない時間を味わう場所

 

そんな時間を

自然と生み出してくれるのです。

 

実際に住まい手の方からも

今回の画像のような空間を設計した住まいでは

LDKも居心地がいいのですが、

室内から繋がった場所もアレンジが出来て好きです

という言葉をよく聞きます。

 

面白いことに、

居心地のそれは必ずしも

・リビング

・ダイニング

という訳ではありません。

 

むしろ

・デッキ

・テラス

・中庭

などの中間空間

であることが多いのです。

 

法規制が厳しい地域ほど効果的

 

実はこの「内的外部」は、

設計的には非常に有効な手法です。

 

特に庭をつくりにくい場所

では

その効果が大きくなります。

 

奈良県での駅近くや

奈良市内の中心部、

大和郡山市の市街地では

建築可能な床面積が

制限されることが多くあります。

 

すると多くの住宅は

どうしても

部屋を詰め込む設計になりがちです。

 

しかしそうすると窮屈な空間

になってしまいます。

 

そこで

内的外部のような空間をつくることで

空間の広がり

を生み出すことができるのです。

 

○関連blog

壺中天を宿す住まい ― 制約の中で人生の質を整える暮らしの設計

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail732.html

 

一見すると無駄なスペースかも知れません。

このような空間を

初めて見る方は、

「ここは何に使う場所ですか?」

と疑問をもたっれるかも知れません。

 

確かに

・リビング

・ダイニング

・寝室

のような

明確な用途はありません。

 

しかし

実はそこにこそ価値があります。

 

用途が決まっていないからこそ

その場所は、自由な空間になります。

 

人は余白があると

そこに暮らしを見つけます。

 

子どもは遊び場にし

大人はくつろぎの場所にし

家族は会話の場所にします。

 

それが「余白空間の力」です。

 

必要な余白という考え方・・・・・。

私はこのような空間を

「必要な余白」と呼んでいます。

 

建築空間というのは設計する際に

・機能

・効率

・面積

を追い求めてしまいます。

 

しかし

効率だけで設計された空間は

どこか息苦しいものになります。

 

皆さんも「息苦しい感覚が生まれる空間」を

味わったことはありませんか?

 

そういった空間には必ずと言っていいほど

人間工学的、建築工学的な

数値理論からの寸法(サイズ)や

決まった寸法での空間構成によって

設計が施されています。

 

その方が「無駄」がありませんから。

 

皆さんも、

余裕のある時と、余裕のない時では

行動も考え方も変わるのではありませんか?

 

でも・・・人の暮らしには

少しの余裕が必要です。

 

時間の余裕

心の余裕

空間の余裕

 

その余裕が、暮らしの質を高めます。

 

だからこそ、私は設計の中で

意図的に余白をつくるようにしています。

 

それは結果的に

決して無駄ではなく

暮らしを豊かにするための空間に変化します。

 

密度とゆとりの設計を。

面白いことに

計画の密度が高い住宅ほど

この余白が効いてきます。

 

収納も整い

動線も整理され

機能が詰まった住宅ほど

 

余白があることで、

バランスが取れるという事です。

 

建築はよく「緊張と緩和」

で成り立つと言われます。

 

密度のある空間

開放的な空間

 

その「間」があることで

住まいは豊かになります。

 

余白とは

その緩和の部分です。

 

暮らしを設計するということ・・・・・。

 

住まいは単なる箱ではありません。

そこには人の営みと

日々の時間が流れます。

 

朝起きて、支度をして

コーヒーを飲み

家族と会話をし

静かな夜を過ごす

 

そんな日常の時間を

受け止める場所です。

 

だからこそ、

私はいつも暮らしを設計するという視点で

住宅を考えています。

 

余白のある空間は

その暮らし全体と人生の喜怒哀楽を

やさしく受け止めてくれます。

 

家づくりを考え始めた方や、

これから注文住宅を検討される方にとって

今回のblogが

少しでも参考になれば嬉しく思います。

○関連blog

暮らしの質は、思考の積み重ねで決まっていく ― 建築家が住まいづくりの現場で大切にしていること ―

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail746.html

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

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