ブログ・コラム
2025.12.20
料理が苦手でも大丈夫。 頑張らなくていいキッチンの環境が、暮らしと家族関係を穏やかにする理由。
- カテゴリ:
- キッチン 収納
料理が苦手だったとしても・・・。
キッチンから始まる
「環境」と「気持ち」を
整える住まいづくり。
建築家も“料理をする生活者”
として考える、
空間の心理と暮らしの本質。

※「頑張らなくても回る」ことを大切にした、
和モダン×ホテルライクのキッチン空間。
料理のしやすさだけでなく、
立ったときの気持を
整えることを意識した
設計提案のカタチです。
得意不得意もありますが
料理を始めたばかりの頃、
多くの人が
同じところで立ち止まります。
・何を買えばいいのか分からない
・道具をそろえないと
・始められない気がする
・自分には向いていないのではないか
こうした気持ちは、
料理に限らず、
普段の生活でもそうですが
家づくりをはじめとして
暮らしのあらゆる場面で
現れます。
そして実はこれらの悩みは、
個人の能力や性格の問題ではなく、
“環境”の問題にも
起因することがほとんどです。
やまぐち建築設計室は、
これまで数多くの
住まいを設計してきました。
同時に、
自身もキッチンに立ち、
料理をする一人の生活者です。
※マニュアル対応ではなくて
本当の意味で
料理や実際の家事を
行っていないと
キッチンの優劣や家事についても
ご相談をお受けできません。
その両方の立場から、
強く実感していることがあります。
人の行動と感情は、
空間によって
大きく左右される。
料理が楽しいかどうか。
家事が続くかどうか。
家族との関係が
穏やかに保たれるかどうか。
それらは、
「気合」や「努力」よりも、
空間がどのように
人を支えているかによって
決まっていくものです。
料理が続く人と、続かない人の違い
料理が得意な人と苦手な人。
その違いは、
技術やセンスだけに
あると思われがちです。
けれど、
実際に暮らしを観察してみると、
大きな差はそこにはありません。
違いは、
・キッチンに立つまでの心理的ハードル
・立った後に感じるストレスの量
・「またやろう」と思えるかどうか
この積み重ねです。
これは建築の世界で言えば、
使いにくい建物は、
どんなに美しくても人を遠ざける
という事実と同じです。
道具は「上達のため」ではなく
「気持ちを守るため」に選ぶ
初心者ほど、
「良い道具を買えば上手くなる」
と考えがちです。
しかし、
僕自身が料理をする中で感じたのは、
道具の役割は「上達」よりも
“心を折らないこと”にある
ということでした。
よく切れる包丁が、
心の余裕を生む理由
切れない包丁は、
時間を奪い、力を奪い、
気力を奪います。
逆に、よく切れる包丁は、
・下ごしらえが早く終わる
・失敗が減る
・「まだやれる」という気持ちが残る
これは空間設計で言えば、
ドアの開閉が重いか軽いか、
動線が遠いか近いか、
その違いにも似ています。
小さな抵抗が、
人のやる気を削っていく。
フライパン選びにあらわれる
「理想」と「現実」
重たい鉄フライパンに
憧れる気持ちは、
とてもよく分かります。
しかし、
毎日仕事をし、家事をし、
生活を回す中で、
その重さは確実に負担になります。
これは、
「広いLDKが欲しい」
「大きな家がいい」
という家づくりの理想とも
重なります。
大切なのは、
自分の暮らしに関して
ストレスのたまらない内容や
リズムに
合っているかどうか。
軽くて扱いやすいフライパンは、
「今日も作ろう」という
気持ちを守ってくれます。
計ることは、
安心できる“基準”をつくること
計量スプーンや計量カップは、
初心者にとっての「支点」です。
味が安定すると、
料理への不安が減り、
自信が生まれます。
これは、設計打合せで
住まい手さん自身が
寸法やイメージを
言語化・数値化することと同じです。
人は、分からないことに
最も不安を感じる。
だからこそ、
料理でも最初は「計る」ことが
大切ということです。
余白のある道具、余白のある空間
深めの片手鍋、
大きめのまな板。
これらに共通するのは、
「余白」です。
余白があると、
・慌てなくていい
・失敗しても立て直せる
・心にゆとりが生まれる
建築における余白とは、
単なる広さではありません。
行動に選択肢を与えるための空間。
キッチンでも同じで、
余白のない環境は、
人を追い込み疲れさせます。
音・光・触感が、
気持ちに与える影響
シリコンヘラの
「音がしない」という特徴。
これは非常に象徴的です。
朝の静かな時間、
夜遅い時間、
家族が寝ている時間。
音は、無意識に人の神経を
刺激します。
同じように、
・照明が強すぎないか
・影ができすぎていないか
・手に触れる素材が冷たすぎないか
これらはすべて、
空間の心理に深く関わっています。
キッチンは、
家族の生活リズムと
重なる場所だからこそ、
実は繊細な配慮が必要なのです。
保存容器と収納が、思考を整理する
耐熱の保存容器が揃うと、
冷蔵庫の中が整います。
冷蔵庫が整うと、
「何があるか」が一目で分かる。
これは、
収納計画の本質そのものです。
見えない、分からない、
取り出しにくい。
この状態は、
人の思考を確実に疲れさせます。
空間が整うと、思考も整う。
「持たない」選択が、
暮らしを軽くするということ。
便利そうに見える道具。
格好良く見える設備。
それらが、
必ずしも暮らしを
豊かにするとは限りません。
使いこなせない道具は、
・片付かない
・考える負担が増える
・自己否定につながる
住まいでも同じです。
暮らしに合わない設備は、
ストレスになる。
だからこそ、
やまぐち建築設計室では
「足す設計」よりも
程よく
それぞれの人に準ずる
「削ぎ落とす設計」を
大切にしています。
キッチンは、
人間関係を映す場所
キッチンは、
ただ料理をする場所ではありません。
・家族が交わる
・会話が生まれる
・感情が表に出る
非常に人間的な空間です。
キッチンが使いづらいと、
気持ちに余裕がなくなり、
言葉が荒くなり、
関係性にも影響が出てきます。
逆に、
キッチンが心地よいと、
自然と会話が増え、
空気が柔らかくなります。
空間は、
人間関係の土台です。
建築家として大切にしていること
やまぐち建築設計室が
キッチンのリフォームや
家のリノベーション、
住まいの新築で
最も大切にしているのは、
「人が無理をしなくていい環境を
つくること」。
頑張らなくても回る。
我慢しなくても続く。
自分を責めなくていい。
そのために、
動線、寸法、光、素材、
収納、音、視線。
間取りのみに注力するのではなく
そういった環境要素を
丁寧に考えます。
料理の喜びは、空間が育てる
料理が好きになるかどうか。
それは、
才能の問題ではありません。
環境が人の気持ちを
支えているかどうか。
キッチンが変わると、
行動が変わり、
気持ちが変わり、
暮らし全体が変わっていきます。
これから家づくりを考える方へ。
キッチンを見直したい方へ。
まずは、
「自分がラクに立てるか」
「心が穏やかでいられるか」
そこから考えてみてください。
キッチンは、
暮らしと気持ちを整える、
とても大切な“環境”のことを。
○関連blog
家の中心にキッチンを置くという選択。家事がラクになり、家族がつながる間取りと暮らしを上質に変化させる設計提案。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail518.html
暮らしを丁寧に考える建築家の視点から子育て世代のための「片付くキッチン設計」に家事動線・収納・間取りで叶える整う暮らしに収納物の情報整理と現状の見直し提案。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail514.html
オープンスタイルのLDKと暮らし方の趣を考えたアイランド型キッチンの採用提案、広々した空間だけではなくて家事動線やインテリア空間としての付加価値も検討しながら過ごす空間としてのキッチンレイアウトの設計と暮らしの提案。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail408.html
キッチンと家事と食洗機を考える暮らしの提案、家事時間の様々な考え方の中に食洗機を設置することで変化、キッチン周辺から派生する余裕がうまれるように、海外製の食洗機の魅力も。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail395.html
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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