ブログ・コラム
2026.10.15
仕事も、暮らしも、自分らしく。|奈良の美容室付き住宅で考える、アイランドキッチンと心地よい住まいの設計提案
- カテゴリ:
- 店舗併用住宅の設計と暮らし
美容室付き住宅で、仕事も暮らしも豊かにするには?
奈良県葛城市で新築工事中の
店舗併用住宅で考える
アイランドキッチンと間取り・色彩・空間デザイン。
仕事を終えたあと、どんな家に帰りたいですか?

※美容室で働く時間も、家族と過ごす時間も大切に。
アイランドキッチンの仕様と寸法を確かめながら、
仕事と暮らしを豊かにつなぐ住まいを考える設計打ち合わせ。
美容室を経営されている方にとって、
店舗はお客様を迎え、
自分の技術や感性を表現する大切な場所。
一方で、住まいは仕事から少し離れ、
自分自身や家族との時間を取り戻す場所でもあります。
もし、その二つが一つの建物になったとしたら。
通勤時間がなくなり、
仕事と家事の行き来が便利になる。
そんな合理的なメリットが思い浮かぶかもしれません。
けれども、
店舗付き住宅を設計するうえで、
本当に大切にするべき事柄は、
それだけではありません。
仕事を充実させることと、暮らしを豊かにすること。
その両方を無理なく叶えられる建築であること。
今回は、奈良県葛城市で工事に着手した
美容室併用住宅の打ち合わせから、
住宅側のアイランドキッチンを中心に、
暮らしの付加価値を生み出す
設計について考えてみたいと思います。
美容室と住まい。
近くにあるからこそ、距離感を考える。
今回の打ち合わせには、
美容室のオーナーさんと
スタッフさんに参加していただきました。
店舗の空間構成や設備について
確認するとともに、
住宅側のLDKに設置する
アイランド型キッチンについて、
パーツ発注前に
図面とカタログを広げながら
最終的な確認を進めています。
美容室と住宅。
同じ建物にあっても、
そこで過ごす時間の意味は異なります。
美容室では、
お客様に心地よく過ごしていただくこと。
スタッフが働きやすく、
施術に集中できること。
そして、オーナーの美意識や
お店の世界観が伝わること。
一方、住まいでは、
誰かに見せるためではなく、
自分たちが自然体で過ごせること。
仕事の緊張感から離れ、
食事を楽しみ、
会話を交わし、
ときには何もせずに過ごせること。
店舗と住居が隣り合うからこそ、
単に移動距離を短くするだけでは、
心地よい建築にはなりません。
例えば、営業中のお客様の視線が
住宅側に届かないこと。
店舗の音や人の出入りが、
家族の落ち着きを妨げないこと。
仕事を終えて住まいに戻ったとき、
自然と気持ちを切り替えられること。
そのためには、
玄関の位置や窓の向き、建具、
音の伝わり方、
視線の抜け方などを
丁寧に整理する必要があります。
仕事と暮らしを近づけながら、
心の距離は自分で選べる。
それも店舗併用住宅ならではの
設計の価値だと考えています。
美容室は無機質に、住まいは黒を基調に。
それぞれの空間に異なる心地よさを。
今回の美容室は、
少し無機質な素材感を基調とした
空間を考えています。
その中に木材の柔らかな表情を
部分的に取り入れ、
素材の対比によって
空間に奥行きを生み出す構成です。
美容室を訪れるお客様にとって、
髪を整える時間は、
単に身だしなみを整えるだけの
時間ではありません。
鏡の前で自分自身と向き合い、
気分を変えたり、
日常から少し離れたりする時間でもあります。
だからこそ、
店舗の内装には、
施術の機能性だけでなく、
そこで過ごす時間の質を考えた
デザインが必要になります。
一方、住宅側のLDKは、
黒を基調とした空間構成。
美容室オーナーの感性や暮らしの趣を、
住まいのデザインへと反映させています。
黒は、空間に落ち着きや重厚感、
洗練された印象を与えやすい色です。
ただし、黒を多く使えば、
それだけで
上質な空間になるわけではありません。
床や壁、天井の素材。
自然光の入り方。
照明によって生まれる陰影。
家具やキッチンの質感。
それらの組み合わせによって、
同じ黒でも感じ方は大きく変わります。
店舗は、お客様のための少し特別な空間。
住宅は、住まい手自身の感性が自然に馴染む空間。
異なる役割を持つ二つの場所を、
それぞれの目的に合わせて整えることで、
一つの建物の中に豊かな表情が生まれます。
アイランドキッチンは、料理をする場所だけではない。
今回、住宅側の打ち合わせで
重点的に確認しているのが、
LDKに設置するアイランド型キッチンです。
アイランドキッチンと聞くと、
開放的でおしゃれな
LDKを思い浮かべる方も
多いのではないでしょうか?
けれども、
見た目の美しさだけで選ぶと、
実際の暮らしの中で
使いにくさを感じる場合があります。
例えば、料理をしているときに
家族とどのように会話をしたいのか。
食事の準備と片付けを、
誰がどのように行うのか。
休日にはキッチンを囲んで
ゆっくり過ごしたいのか。
それとも、
生活感を抑えて過ごせるLDKを望むのか。
同じアイランドキッチンでも、
暮らし方によって必要な設計は異なります。
今回の計画でも、
キッチンの形状や仕様だけでなく、
周囲の通路、収納、設備、
LDK全体との関係を確認しています。
大切なのは、
キッチンそのものの存在感ではなく、
キッチンがあることで、
日常の過ごし方が
どのように豊かになるのか?
ということ。
料理をしながら家族と話す。
お気に入りの器を並べる。
仕事を終えた夜、ゆっくりと食事を楽しむ。
そんな何気ない時間を想像することが、
キッチン選びの
出発点になるのだと思います。
図面に書かれた10cmには暮らしの意味がある。
設計の打ち合わせでは、
図面に書かれた寸法を
一つひとつ確認していきます。
例えば、キッチンと背面収納の間隔。
キッチンの周囲を歩くための通路幅。
引き出しを開けたときに必要なスペース。
冷蔵庫の扉の開き方や、家族がすれ違う場所。
図面では、
ほんの10cmの違いに見えるかもしれません。
しかし、実際の暮らしでは、
その10cmが使いやすさに
大きく影響することがあります。
通路が狭ければ、
人がすれ違うたびに
身体を避ける必要があるかもしれません。
反対に、
必要以上に広くすれば、
作業のたびに歩く距離が
増えてしまうこともあります。
キッチンのカウンター高さについても同様です。
使う人の身長だけでなく、
調理姿勢や作業内容によって、
心地よい高さは異なります。
寸法は、
単に家具や設備を納めるための
数字ではなくて、
そこに立つ人の身体の動きと、
毎日の時間を整えるための設計の感度。
特に美容室のように、
日々姿勢を無理する仕事をされる方の住まいでは、
帰宅後の家事負担や
身体の動き方までを
重要視して
想像することが大切だと考えています。
黒いキッチンは暗くならない?
色彩心理と素材から考えるLDK。
黒を基調としたキッチンや
LDKを希望される方からは、
こんな疑問も聞かれます。
黒いキッチンにすると、
部屋全体が暗くなりませんか?
高級感は欲しいけれど、
冷たい印象にはしたくない。
色彩は、空間の印象を左右する大切な要素です。
色彩心理の観点では、
黒は重厚感や引き締まった印象、
洗練された雰囲気と
結びつきやすい色とされています。
ただし、
人が色から受ける印象は
一律ではありません。
素材の光沢や照明、周囲の色、
個人の経験や好みによっても
変わります。
また、黒は一般的に光の反射が少ないため、
広い面積に使用すると、
室内が暗く感じられる場合があります。
だからこそ、
黒を基調としたLDKでは、
色だけでなく、
光と素材の関係を
他の色よりも考える必要があります。
例えば、マットな黒と光沢のある黒では、
同じ色でも表情が異なります。
そこに木材の質感や、
柔らかな間接照明を組み合わせることで、
視覚的な緊張感を和らげることもできます。
大切なのは、
黒を使うこと自体を目的にしないこと。
住まい手がどのような時間を過ごしたいのか。
そのために、
どのような明るさや質感、
色の組み合わせが心地よいのか。
色彩計画もまた、
暮らし方から考えるものだと思います。
美容室付き住宅を建てる前に、
確認しておきたいこと。
これから美容室併用住宅を
新築したいと考えている方には、
間取りやデザインを決める前に
整理していただきたいことがあります。
まず、店舗と住宅の面積配分です。
美容室には、
セット面やシャンプー台だけでなく、
受付、待合、収納、
スタッフの作業スペースなどが必要になります。
一方、住宅には
家族が落ち着いて暮らすための
十分な広さと、
生活動線が必要です。
店舗の面積を優先しすぎて、
住宅側が窮屈にならないように
考えることが重要です。
次に、お客様と家族の動線。
特に奈良県の建物立地事情も考慮は必要です。
駅近で建てる場合以外は
駐車場から店舗への入り方、
住宅の玄関、外部からの視線、
営業時間外の過ごし方。
これらを一体的に考えることで、
仕事と私生活の境界を整えやすくなります。
そして、将来の使い方です。
スタッフが増えたとき。
営業形態が変わったとき。
家族の生活が変化したとき。
今だけでなく、
将来の変化にも対応できる余地を
残しておくことが大切です。
また、美容室の開業には、
用途地域や建築基準法、
美容師法に基づく美容所の基準、
そして保健所への届出や検査など、
規模によっては消防等確認すべき事項があります。
仮に住宅ローンを活用する場合には、
店舗部分と住宅部分の面積や
資金使途によって利用条件が変わります。
そのため、
土地を購入する前、
建物の形を決める前から、
事業計画と住宅計画を
並行して考えておくことをおすすめします。
店舗併用住宅でよくある疑問
Q.美容室と住宅は、完全に分けた方がよいのでしょうか?
必ずしもそうではありません。
大切なのは、店舗と住宅の出入口や視線、
音、生活動線を整理することです。
法令や融資条件によって
区画や行き来に関する要件も異なるため、
計画に応じた検討が必要です。
Q.アイランドキッチンは、どんな住まいにも向いていますか?
アイランドキッチンは
開放感や回遊性を生み出しやすい一方、
通路幅や収納、換気、
手元の見え方などに配慮が必要です。
LDKの広さだけでなく、
普段の料理や片付けの習慣に
合うかどうかで判断することが大切です。
Q.黒を基調としたLDKでも、落ち着いた住まいになりますか?
可能です。ただし、黒の使用面積、
自然光、照明計画、
床や壁の素材によって印象は変わります。
色彩だけでなく、
空間全体の明暗や
質感を整えることが重要です。
仕事も暮らしも、自分らしく愉しむための建築。
今回の打ち合わせで広げていたのは、
キッチンのカタログや設計図面でした。
けれども、そこで考えているのは、
設備の仕様だけではありません。
美容室でお客様を迎える時間。
スタッフと一緒に働く時間。
仕事を終えて家族と過ごす時間。
そして、何も予定のない休日に、
自分らしく過ごす時間。
一つの建物の中に、異なる時間が流れています。
その一つひとつが、
無理なく心地よくつながっていくこと。
私は、そこに店舗併用住宅ならではの
魅力があると考えています。
家を建てることも、
店舗をつくることも、
それ自体が最終的な目的ではありません。
その場所で、
どのような日々を重ねていきたいのか?
どのような気持ちで仕事をし、
どのような気持ちで家に帰りたいのか?
そんなことを丁寧に考えながら、
図面の寸法や素材、
色彩、光のあり方を整えていく。
仕事を大切にする人だからこそ、
自分自身の暮らしも大切にしてほしい。
今回の美容室併用住宅も、
そのような思いを込めて
設計の工夫を施し、実施に至っています。
奈良県で美容室付き住宅や
店舗併用住宅の新築、
建て替えをお考えの方へ。
やまぐち建築設計室では、
店舗の事業計画と
ご家族の暮らし方を丁寧に伺いながら、
建築とインテリアを
一体的に考える住まいづくりを
行っています。
店舗をどうつくるかだけでなく、
これからの暮らしを
どのように豊かにしていくべきなのか?
その両方を大切にしたい方と、
建築の可能性を考えていきたいと思います。
奈良県橿原市を拠点に、
奈良県内および近隣地域で
注文住宅、店舗併用住宅、
リフォーム・リノベーション、
店舗設計を手がけています。
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新築・建て替え・店舗併用住宅のご相談は、
完全予約制の個別相談にて承っています。
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奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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