ブログ・コラム
2026.01.17
美容室付き住宅という選択・暮らしと仕事を両立させる店舗付き住宅の設計プロセス
- カテゴリ:
- 仕事と暮らしを整える 店舗付き住宅の設計
暮らしと仕事が、静かに調和する場所
奈良県葛城市|美容室付き住宅の設計から考える
「店舗付き住宅」の本質。
奈良県葛城市にて、
美容室付き住宅(店舗併用住宅)の設計が
進んでいます。
今回の計画は、
「美容室を営むオーナーさんの住まい」と
「お客様を迎える仕事場としての美容室」が
ひとつの建物の中で、
無理なく、そして心地よく共存する住まい。

写真は、その設計段階に行っている
住宅部分のデザインをオーナーさんと
打ち合わせ中の様子です。
橿原アトリエにて
図面、CG、資料を広げながら、
暮らしと仕事の距離感、
お客様が感じる空気、
一日の流れ、
そして「この場所でどんな人生を送りたいか」を、
丁寧に言葉にしていく時間。
やまぐち建築設計室では、
店舗付き住宅の設計を
「間取りの工夫」や「法規対応」だけの
話だとは考えていません。
暮らし方と働き方を、
建築でどう結び直すべきか?
という、とても人間的で、
本質的な設計テーマだと考えています。
店舗付き住宅は「考える順序」が
違うということ。
「店舗付き住宅は難しいですよね?」
設計相談の場で、
よくいただく言葉です。
確かに、
店舗付き住宅には、
一般的な住宅設計とは異なる
いくつかのハードルがあります。
・建築基準法
・都市計画法
・用途地域の制限
・店舗面積の考え方
・消防・保健所対応
・業種特有の法律(今回で言えば美容関係)
・動線計画
・音、匂い、視線のコントロール
・プライバシーと開放性の両立
ですが、
本当に難しくしている原因は、
「設計の出発点を間違えてしまうこと」
にあります。
多くの場合、
・とりあえず店舗をここに
・住宅は余ったスペースで
・法規は後から確認
という順番で進めてしまい、
結果として
「暮らしも仕事も、どこか無理がある建物」に
なってしまう。
やまぐち建築設計室では、
この順序を、
根本から入れ替えます。
まず考えるのは
この場所で、どんな時間が流れるのか?

※基本構成と店舗動線を計画途中の美容室CG。
平屋の店舗空間に、セット面を一直線に配置し、
土間コンクリート仕上げの無機質な質感を
ベースに構成。
長時間滞在しても疲れにくい落ち着いた
美容室空間を目指しています。
今回の美容室付き住宅でも、
最初にお聞きしたのは、
「店舗の広さ」や「席数」ではありません。
・どんなお客様と、どんな関係を築いていきたいか
・この仕事を、何歳まで、どんなペースで続けたいか
・暮らしの時間を、どう守りたいか
・一日の中で、気持ちを切り替える瞬間はどこか
・“オン”と“オフ”の境界線を、どこに置きたいか
こうした問いを、
会話から展開する言葉や
CGや図面を使いながら、
ひとつひとつ整理していきます。
建築は、
単なる器ではなく、
人生の在り方を形にする場だと
考えているからです。
今回の計画|平屋+スキップフロアという選択
今回の建物は、
平屋建てをベースとしながら、
住宅部分に
一部スキップフロアを取り入れています。
理由は明確です。
・店舗と住宅を、明確にゾーニングできる
・上下移動を最小限に抑えられる
・将来の暮らしにも柔軟に対応できる
・平屋特有の安心感と、立体的な広がりを両立できる
店舗部分(美容室)は、
無機質だけれど、質が高く、
落ち着く空間を目指しています。
いわゆる「作り込みすぎたデザイン」ではなく、
素材感、光の入り方、天井高さ、音の反射、
そうした要素を丁寧に整えることで、
長時間滞在しても疲れない、
リラクゼーション空間をつくる。
一方、住宅部分は、
スキップフロアによって
視線と空間が緩やかにつながり、
同じ気配の中で違う時間を過ごすことが出来る
構成としています。
美容室という「仕事場」を建築的に読み解く
美容室は、
とても繊細な空間です。
・お客様は、長時間同じ場所に座る
・鏡越しに、空間全体が視界に入る
・音、照明、色味が、体感として残りやすい
・施術者の動線が、空気感に影響する
そのため、
派手さや流行だけで空間をつくると、
違和感が生まれやすい。
今回の計画では、
「無機質だけれど、冷たくない」
「静かだけれど、閉じていない」
そんなバランスを大切にしています。
これは、
暮らしの質を整える設計の考え方が、
そのまま店舗設計にも活きている部分です。
店舗付き住宅に関わる主な法規を、
やさしく整理する。
ここで、
店舗付き住宅を考えるうえで
避けて通れない法規について、
簡単に整理しておきます。
建築基準法
・用途区分(住宅/店舗)
・用途地域による制限
・延べ面積に対する店舗面積の割合
・容積率・建ぺい率
都市計画法
・市街化区域/市街化調整区域
・用途地域(第一種住居地域、準住居地域など)
・店舗併用が可能かどうか
・可能な場合は面積制限はどうか?
美容関係の法律
・美容師法
・保健所の指導基準
・作業スペース、給排水、換気、照明計画
消防・その他
・内装制限
・防火区画
・非常照明
・誘導計画
これらは、
計画性に最初から設計に組み込むことで、
無理なくクリアできるものです。
やまぐち建築設計室では、
設計初期段階から
行政・保健所・関係機関との調整を視野に入れ、
後戻りのない少ない
設計プロセスを大切にしています。
言葉とCGを使った打ち合わせが生む、
設計の質。
今回の打ち合わせでも、
CGを用いて、
空間のイメージを共有しています。
CGは、
「完成予想図」ではありません。
・光の入り方
・天井高さの体感
・視線の抜け
・動線の自然さ
こうした感覚的な部分を、
言葉と一緒に確認するためのツールです。
「この高さだと、落ち着きますね」
「ここは、もう少し静かにしたいですね」
そんな会話を重ねることで、
設計は、図面以上の精度を
持ちはじめます。
店舗付き住宅設計が、
考える価値を高める理由・・・・・。
店舗付き住宅は、
単に「住宅も店舗もできます」
という話ではありません。
・暮らしを理解する力
・仕事の構造を理解する力
・法規を整理する力
・将来を見据える視点
これらすべてが求められる分野です。
だからこそ、
店舗付き住宅を丁寧に設計する際は、
特に「オンとオフ」を含めた
理解度は重要です。
住まいと仕事は、
対立させるものではない・・・・・。
住まいと仕事を、
きっぱり分けるのもひとつの選択。
けれど、
緩やかにつなぐことで生まれる豊かさも、
確かにあります。
・通勤時間がない安心
・暮らしの気配を感じられる距離
・働く環境
今回の美容室付き住宅は、
そうした価値を、
建築として丁寧に編み直す試みです。
設計とは、人生とその中身を描くこと
やまぐち建築設計室が考える設計は、
かっこいい建物をつくること
ではありません。
その人、その家族、その仕事が、
どんな時間を重ねていくのか
その背景を、静かに整えること。
店舗付き住宅は、
その思想が、
最も試される分野だと感じています。
今回の計画も、
計画の過程を通じて、
また少し、
暮らしの見直しや情緒を深める時間を
確保する予定です。
・自宅で仕事をしたい
・将来を見据えた店舗計画を考えたい
・法規も含めて、安心して相談したい
そんな思いを持っておられる方は、
「間取りの前に、暮らしと仕事の話」から、
一度、整理してみてはいかがでしょうか?。
建築は、人生を支える、静かな土台です。
その土台を、丁寧に、誠実に。
今回のブログが、住まいと暮らし
そしてご自身の仕事と将来像を見直す
小さなきっかけになれば幸いです。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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