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2026.09.23
ホテルライクな家はなぜ「天井」でも変化するのか?|グレージュモダンのLDKに光と陰影と心の居場所を生み出す設計の工夫と提案。
- カテゴリ:
- 店舗併用住宅の設計と暮らし
暮らしの空間は「天井」でも変わる。
グレージュモダンのLDKに陰影をつくる、
建築家の設計の工夫。

※ホテルライクな空間は、素材を選ぶだけでは生まれない。グレージュモダンのLDKに、ルーバー天井と照明がつくる光と陰影。その見え方まで図面を広げ、丁寧に考える設計打ち合わせの様子。
ホテルライクな家にしたい。
グレージュを基調にして、
生活感を抑えた、上質でモダンなLDKにしたい。
そんなご要望をいただくことが増えています。
けれど、ホテルライクな空間は、
グレージュの壁や床を選び、
おしゃれなキッチンや家具を置くだけで完成するものではありません。
空間に入った瞬間、
「なんとなく心地いい」
「落ち着く」
「少し特別な場所に感じる」。
そんな感覚を生み出しているのは、
目立つものだけではなく、
天井の高さ、素材、光の位置、陰影、視線の抜け方といった、いくつもの要素の重なりです。
今回は、奈良県内で計画を進めている、
平屋の美容室付き住宅の打ち合わせから、
そんな「空間の質」について少し書いてみたいと思います。
美容室と住まい。二つの空間を、一つの建築として考える。
今回計画しているのは、
美容室と住まいが一つになった、店舗併用の平屋住宅。
一部ロフトスペースを設けて空間の意味を拡張しています。
美容室は、お客様を迎える場所。
住まいは、ご家族が日常へ戻る場所。
求められる役割は違います。
だからといって、美容室と住宅を単純に二つ並べればよい、
という訳でもありません。
今回の計画では、
特徴的でモダンな住宅と、
少し無機質でありながらも、不思議と安らぎを感じる美容室。
その二つの異なる表情を持たせながら、
建物全体として一つの世界観を感じられることを大切にしています。
美容室を訪れる時間も、
家族が家で過ごす時間も、
日常の中にある「少し特別な時間」。
建築やインテリアが主張し過ぎるのではなく、
そこで過ごす人の気持ちが自然と整っていくような空間を考えています。
図面を広げて確認しているのは、「見え方」まで設計するため。
今回の打ち合わせでは、オーナーである美容師さんと一緒に、
展開図や立面図を広げながら細部を確認しています。
平面図だけでは分からないことがあります。
壁がどう見えるのか。
天井と壁がどうつながるのか。
家具や設備がどの高さに納まるのか。
そして、照明を点けたときに、どこに光が落ち、どこに影が生まれるのか。
〇関連blog・コラム
美容室付き住宅という選択・暮らしと仕事を両立させる店舗付き住宅の設計プロセス
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail718.html
ですから設計では、平面だけではなく、
「その場所に立ったとき、人の目に空間がどう映るのか」
という視点から考えることも大切です。
今回、特に確認しているのが、住宅部分のLDK。
その中でも、キッチン上部の天井について。
グレージュモダンだからこそ「少しの変化」をつくる。
LDKは、グレージュを基調としたモダンな空間を計画しています。
グレージュは、上品で落ち着きがあり、
ホテルライクなインテリアとも相性のよい色のように感じられます。
一方で、色調や素材感をきれいに揃えるだけでは、
空間全体が均質になりすぎてしまうこともあります。
整っている。
きれい。
でも、どこか印象に残らない。
そんな空間にならないように・・・・・。
そこで今回の住まいでは、キッチン上部の天井に、
木質感のあるルーバー状の意匠を取り入れる計画を進めています。
グレージュを基調とした静かな空間の中に、木の表情を加える。
ただし、木を強く主張させるのではありません。
必要なのは、素材そのものを見せること以上に、
天井に奥行きとリズムをつくること。
それによって、LDKの中に一つの「場」が生まれてきます。
ルーバーを付けることが目的ではありません。
ここは、今回の設計で大切にしているところです。
「ホテルライクだからルーバー天井にする」という考え方ではありません。
ルーバーは、あくまでも手段です。
なぜ、そこに必要なのか。
どの範囲に設けるのか。
ピッチはどうするのか。
天井との距離をどうするのか。
キッチンやダイニングから、どのように見えるのか。
そして、
照明と組み合わせたとき、どんな陰影が生まれるのか。
そこまで考えて初めて、
空間をつくる一つの要素になります。
今回検討している天井材も、
意匠性だけでなく、軽量性や不燃性、
施工方法などを確認しながら選定しています。
住宅では「見た目が好き」という理由だけでは
決められない部分も少なくありません。
デザインと性能。
意匠と施工。
美しさと現実性。
その間にある最適なところを探していくことも、
設計の仕事だと考えています。
照明は「明るくするもの」だけではないということ。
そして、もう一つ重要なのが照明です。
住宅の照明計画というと、
「何畳だから何灯必要か」
「暗くならないようにダウンライトを配置する」という考え方になりがちです。
もちろん、必要な明るさを確保することは大切です。
でも、ホテルや旅館で感じる落ち着きは、
単純な「明るさ」だけではつくられていません。
光がある場所。
少し暗い場所。
素材に光が当たる場所。
影になる場所。
その濃淡によって、空間に奥行きが生まれます。
今回のキッチン上部も同じです。
ルーバーと照明を別々に考えるのではなく、
光と素材を一緒に設計する。
ルーバーに落ちる光。
その間に生まれる影。
見る方向によって少しずつ変化する天井の表情。
そうした小さな積み重ねによって、
グレージュモダンのLDKに、趣が生まれてきます。
「高級に見える家」と「上質に感じる家」は違うということ。
ホテルライクな家を考えるとき、
私はこの違いを大切にしています。
高価な素材をたくさん使えば、
豪華な空間をつくることはできます。
大理石調の素材。
大きなキッチン。
間接照明。
大判タイル。
高級家具。
もちろん、それらも魅力的です。
でも、上質な住まいは、高級商材の価格だけでは決まりません。
たとえば今回のように、
天井の一部分に素材を変える。
照明の位置を少し考える。
光の方向を整える。
視線が止まる場所をつくる。
そうした設計によって、
同じ広さのLDKでも感じ方は大きく変わります。
「何を使ったか」だけではなく、なぜそこに使うのか。
その理由まで考えられていることが、
空間の質につながっていくのだと考えています。
ホテルライクとは「ホテルのようにすること」ではない。
私は、ホテルライクな住宅とは、
ホテルをそのまま住宅へ持ち込むことではないと考えています。
ホテルは非日常の場所です。
住宅は、毎日暮らす場所です。
朝起きて、
料理をして、
仕事へ出掛け、
家へ帰り、
家族と食事をして、
一日の終わりを過ごす。
ある意味ではその繰り返しが日常であり暮らしの根底にあります。
だからこそ住宅では、見た目の持つ意味と同時に、
動線や収納、使いやすさ、
メンテナンス性なども考えなくてはいけません。
そのうえで、
家に帰ったときに、気持ちが切り替わる。
照明を落とした夜、いつものLDKが少し特別に見える。
そんな瞬間をつくること。
それが、住宅におけるホテルライクな設計の
一つのあり方ではないかと思います。
美容室にも、住宅にも共通する「心のスイッチ」。
今回の美容室付き住宅を考えていると、
美容室と住宅には意外な共通点があることに気付きます。
美容室を訪れる人は、
髪を整えるためだけに来るわけではありません。
少し気分を変えたい。
リラックスしたい。
自分のための時間を過ごしたい。
そんな気持ちもあるはずです。
住宅も同じです。
玄関を開けた瞬間。
LDKへ入った瞬間。
夜、照明を少し落とした瞬間。
建築によって、気持ちが切り替わることがあります。
今回の建物では、
美容室ではお客様のために。
住まいではご家族のために。
それぞれ異なる方法で「心のスイッチ」が入る空間を考えています。
図面には、完成した暮らしまでの「意味」が描かれている。
打ち合わせテーブルの上にあるのは、
展開図や立面図、カタログや施工資料です。
一見すると、
寸法や線が並んでいるだけに見えるかもしれません。
でも、その一本一本の線の先には、
完成したLDKで料理をする時間や、
ダイニングで家族が過ごす時間、
美容室を訪れたお客様が椅子に座ってほっとする時間の意味が含まれています。
ですから、
図面を描くことそのものが目的ではありません。
その先にある時間や感情まで想像しながら、
空間を整えていく。
それが、住まいを設計するということなのだと思います。
奈良でホテルライク・グレージュモダンの家を考えている方へ。
ホテルライクな家にしたいけれど、
どこかで見たような家にはしたくない・・・。
グレージュモダンが好きだけれど、
単調なインテリアにはしたくない。
間接照明やルーバー天井を取り入れたいけれど、
本当に自分たちの家に必要なのか分からない。
住宅展示場とは違う、
自分たちの暮らしに合った上質な家をつくりたい。
そんなときは、好きな素材や設備を決める前に、
どんな時間を家で過ごしたいのか。
そこから考えてみることをおすすめします。
やまぐち建築設計室では、奈良県を中心に、
新築住宅・平屋・店舗併用住宅・リフォームやリノベーションなど、
住まい手の暮らし方から設計を考えています。
ホテルライク、グレージュモダン、和モダン。
言葉で表せば同じテイストでも、
そこで暮らす人が違えば、必要な最適解(答え)も変わります。
完成形がまだはっきり決まっていなくても構いません。
「こんな雰囲気が好き」
「こんな暮らしをしてみたい」
「今考えている間取りで、本当にいいのだろうか」
そんなところから、まず暮らしの輪郭を整理していく。
設計の出発点は、
まだ言葉になっていない暮らしへの想いを考えること。
その先に、その人、その家族だからこその
心地よい住まいが見えてくると考えています。
〇関連blog・コラム
美容室付き住宅の設計と照明計画の打ち合わせ|暮らしと仕事を整えるモノトーン空間の設計プロセス
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail791.html
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奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
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