ブログ・コラム
2026.07.20
奈良で注文住宅を考える方へ|家づくりで後悔しないために、建築家はなぜすぐに間取りを描かないのか
- カテゴリ:
- 住まいと暮らしの設計思想
奈良で注文住宅を考える方へ。
家造りの希望をすべて受け入れることが、
よい設計とは限らない理由。

※家族の暮らしや価値観を丁寧に紐解き、
ご要望の一つひとつを見直し設計すること。
それが、完成後の住みやすさと
暮らしの充実度を左右する 第一歩だと
考えています。
家づくりの打ち合わせで、
「そのご希望で進めましょう」
「できます」「問題ありません」と、
設計者が何でも受け入れてくれたら、
安心するかもしれません。
自分たちの希望を否定されない。
話をよく聞いてもらえている。
理想の住まいに近づいている。
そのように感じるのは、自然なことです。
けれど、少し考えてみてください。
希望をすべて受け入れてくれる人が、
本当にご家族の将来まで考えている
設計者なのでしょうか。
住まいは、
完成した瞬間がゴールではありません。
そこで始まる暮らしが、
十年、二十年、
その先まで続いていきます。
だからこそ私は、
目の前のご希望にただ賛成することよりも、
その選択がご家族の将来にとって
本当によいものなのかを
考えることが大切だと思っています。
希望どおりにつくるだけでは
暮らしは整わないことがあります。
家づくりを始めると、
さまざまな希望が生まれます。
広いリビングがほしい。
大きな窓から景色を眺めたい。
収納をできるだけ増やしたい。
家事が楽になる回遊動線をつくりたい。
ホテルや旅館のような上質な空間にしたい。
中庭や吹き抜け、
ビルトインガレージも採用したい。
どれも、決して間違った希望ではありません。
しかし、それぞれのご希望を、
そのまま一つの間取りに詰め込めば、
暮らしやすい家、
心地よい住まいになるとは限りません。
広すぎるリビングは落ち着かず、
冷暖房の負担や
掃除の手間、片付けの時間を
増やすことがあります。
大きな窓は、
眺望や開放感を生む一方で、
外からの視線、日射、
家具の配置、掃除、
構造との関係まで考える必要があります。
収納も、面積を増やせば
使いやすくなるわけではありません。
暮らしの動線から離れた収納は、
次第に使われなくなり、
物をため込む場所になることもあります。
回遊動線も同じです。
歩きやすそうに見えても、
通路が増えることで家具を置ける壁が減り、
落ち着く居場所をつくることが
できなくなる場合があります。
大切なのは、
ご希望を採用するかどうか
だけではありません。
なぜ、そのご希望が生まれたのか。
その奥にある暮らしの理由を、
丁寧に紐解くことです。
〇関連blog
間取りで後悔する本当の原因とは|奈良で失敗しない注文住宅を建てるために建築家と考える7つのポイント
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail938.html
「広いリビングがほしい」という
言葉の奥にあるもの・・・・・・。
例えば、ご相談の項目から、
「家族が集まれる、広いリビングにしたい」
というご希望を伺ったとします。
その言葉だけを受け取れば、
リビングの面積を
広くすることが答えに見えます。
しかし、もう少し深くお話を伺うと、
本当に求めているものが
見えてくることがあります。
仕事や学校で生活時間が異なっていても、
自然に家族が
顔を合わせられる場所がほしい。
休日には、
子どもや孫が集まれる家にしたい。
今の住まいでは家族が
それぞれの部屋へ閉じこもり、
少し寂しさを感じている。
来客を招いても、
気兼ねなくゆっくり過ごしてもらいたい。
表現上「広いリビング」という
内容であっても
求めているのは単なる面積の広さではなく、
家族が集まりやすい関係性や、
誰かと時間を共有できる安心感
ということもあります。
それならば、
広さを増やすこと以外にも最適解があります。
キッチンとダイニングの位置関係を整える。
視線が自然に交わる家具配置を考える。
家族が同じ場所にいながら、
別々のこともできる居場所をつくる。
庭や中庭へ視線を抜き、
実際の面積以上の
広がりを感じられるようにする。
天井の高さや光の入り方を調整し、
落ち着きと開放感を両立させる。
ご希望の奥にある本当の願いが分かれば、
面積や設備だけに頼らず、
暮らしに合った解決方法を
考えることができます。
設計者が「一度考え直しましょう」と伝えるとき
設計の打ち合わせでは、
ときに住まい手さんのご希望に対して、
「その選択は、もう一度考えてみませんか」
とお伝えすることがあります。
ご希望を否定したいからではありません。
むしろ、ご家族のこれからを
大切にしたいからです。
例えば、眺望のよさだけで
土地を購入しようとしているとき。
その土地に擁壁や高低差の問題があり、
想定以上の造成費用がかかる可能性、
がけ地条例や
宅地造成及び特定盛土等規制法に関する
規制内容があれば、
購入を急ぐ前に様々な想定を
確認しなくてはなりません。
〇関連blog
奈良で土地の購入を申し込む前に|この土地に希望の家が建つのか、建築家と確認する最低限の10項目
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail933.html
広い家をご希望でも、
建築費だけでなく、将来の修繕費、
冷暖房費、
掃除や維持管理の負担まで
考える必要があります。
流行している間取りや
設備が魅力的に見えても、
ご家族の生活リズムや価値観に合わなければ
数年後には
使われなくなるかもしれません。
大きな窓を設けたいというご希望も、
外からの視線や夏の日差し、
家具の配置まで考えなければ、
カーテンを閉めたままの
窓になってしまいますし、
日常の維持管理、掃除の事も考えると
家事の負担が増えたり、
場合によっては
一か月に一度は専門業者に窓や室内階の
クリーニング等を依頼することも
視野に入れておく必要があります。
住まい手さんご家族が
望まれていることであっても、
暮らしに不都合が生まれる可能性があれば、
設計者はそれを一旦考え直します。
耳当たりのよい言葉だけを
並べることよりも、
判断に必要な情報を正直にお伝えする。
それも、住まいの設計者が
果たすべき打ち合わせだと考えています。
本当の意味で「住まい手さんのために考える」とは
経営者・稲盛和夫氏は、
自分にとって得かどうかではなく、
「人として何が正しいのか」を
判断の基準としてきたことで
知られています。
これは、単に人に優しくするという
意味ではありません。
目の前の人に喜んでもらうことと、
その人の将来にとって本当によいことは、
必ずしも同じではないからです。
住宅設計にも、
同じことがいえると思います。
何でも「できます」と答えることは、
打ち合わせの場では
喜んでいただけるかもしれません。
しかし、建築費が大きく膨らみ、
完成後の維持管理が負担になったり、
夢や理想はよいとしても
現実的な暮らしで、
不便や不幸になる内容は
本当の意味で住まい手さんの為の
暮らしの改善提案にはなりません。
要望をそのまま間取りに
置き換えるだけなら、
設計は比較的早く進みます。
けれど、なぜその要望を持たれたのか。
その背景には、
今の暮らしに対する
どのような不便や不満があるのか。
これからどのような人生を送りたいのか。
家族とどの程度つながり、
どの程度一人で過ごしたいのか。
何に時間を使い、
何を大切にして生きたいのか。
そこまで考えなければ、
本当にそのご家族に合う住まいは
見えてきません。
住まい手さんご家族のために考えるとは、
ご希望をすべて受け入れることではなく、
そのご希望が暮らしの中で
どのような意味を持つのかを
一緒に確かめることだと考えています。
家は暮らし方だけでなく、
家族の関係にも影響します。
住まいは、家族を入れるための
器ではありません。
そこで毎日繰り返される小さな行動が、
家族の関係や心の状態に影響していきます。
朝、家族が慌ただしく支度をする時間。
仕事から帰り、気持ちを切り替える時間。
食卓を囲み、今日あったことを話す時間。
誰にも話しかけられず、一人で静かに過ごしたい時間。
休日に庭や景色を眺めながら、何もしない時間。
こうした日々の積み重ねが、
その人の暮らしをつくります。
生活動線が少し交差しすぎるだけで、
毎日の小さなストレスが増えることがあります。
家族の気配が常に近すぎることで、
自宅にいるのに
深く休めないこともあります。
反対に、それぞれの居場所が離れすぎると、
家族が自然に顔を合わせる機会が
減ることもあります。
家族は、いつも一緒にいればよいわけでも、
完全に分かれていればよい訳でもありません。
つながりたいときにつながり、
離れたいときには程よく離れられる。
そのご家族に合った距離感を、
間取り、視線、光、音、建具、家具、
庭との関係によって
整えていくことが大切です。
やまぐち建築設計室が考えているのは、
単に部屋をどこへ
配置するかということではありません。
その空間によって、
家族がどのような時間を過ごすのか。
その時間が積み重なった先に、
どのような暮らしが育っていくのか。
そこまで想像しながら住まいを設計しています。
暮らしを紐解くことから、
住まいの設計は始まります。
やまぐち建築設計室では、
すぐに間取りを描き始めるのではなく、
まず現在の暮らしについてお話を伺います。
今の住まいで不便に感じていること。
日々の家事や移動にかかっている時間。
家族が一緒に過ごす時間と、
一人で過ごす時間。
休日の過ごし方。
大切にしている家具や、
これからも残したい物。
人を招くことが多いのか、
家族だけで静かに過ごしたいのか。
十年後、二十年後、
どのような暮らしをしていたいのか。
一見すると、
建物とは直接関係がないような話もあります。
けれど、そのような会話の中に、
その人らしい住まいを考える
手掛かりがあります。
例えば、朝の支度で
家族が洗面台の前に集まり、
いつも時間がかかっている。
帰宅後の鞄や上着がLDKに置かれ、
片づかないことに疲れている。
共働きで洗濯の時間が限られている。
家族と一緒にいたいけれど、
仕事や読書に集中できる場所もほしい。
来客用につくった和室が、
普段は閉じたままになっている。
こうした暮らしの事実を一つずつ整理すると、
必要な部屋の数や広さだけではなく、
動線、収納、居場所、光、音、庭との
つながり方が見えてきます。
設計とは、たくさんの要望を
一枚の図面に詰め込む作業ではありません。
暮らしの中に散らばっている希望、
不便、習慣、価値観を紐解き、
そのご家族にとって
本当に必要な環境へ整えていく仕事です。
上質な住まいとは、
高価なものを集めた家ではありません。
上質な住まいというと、
高価な素材や設備、
大きな空間を思い浮かべる方も
いるかもしれません。
もちろん、
美しい素材や丁寧につくられた家具には、
暮らしを豊かにする力があります。
しかし、それだけで
上質な暮らしが生まれるわけではありません。
朝の光が心地よく入る。
動作に無理がなく、家事が自然に進む。
片づけようと頑張らなくても、物が戻る場所がある。
家族の気配を感じながら、自分の時間も守られる。
季節の変化や庭の緑を、日常の中で楽しめる。
疲れて帰ったときに、少し呼吸が深くなる。
そのような、
言葉にしにくい心地よさが
積み重なる住まいこそ、
本当の意味で上質な住まいではないでしょうか。
豪華に見せることではなく、
住む人の時間と心を大切に扱うこと。
余計な負担を減らし、
大切にしたいモノゴトに
時間を使えるようにすること。
そうした暮らしの基盤を
建築によって整えようと考えています。
よい設計者は、
答えを押しつける人でもありません。
ここまで読むと、
設計者がすべてを判断し、
住まい手ご家族のの希望を
止めるように感じるかもしれません。
しかし、設計者の考えを
一方的に押しつけることも、
よい設計ではありません。
住まいの最適解は、
設計者の中にあるのではなく、
住まい手の暮らしの中にあります。
設計者の役割は、
専門知識を使って一つの答えへ
誘導することではありません。
それぞれの選択肢に、
どのような利点と負担があるのかを
分かりやすく整理する。
住まい手ご家族も
まだ言葉にできていない思いを、
会話から見つけ出す。
希望同士が矛盾しているときは、
何を優先するべきかを一緒に考える。
目の前の好みだけでなく、
将来の変化まで含めて
比較できるようにする。
そのうえで、
ご家族が納得して選べる状態をつくることです。
設計者が決めるのでも、
お客様の言葉をそのまま形にするのでもない。
対話を重ねながら、
ご家族にとっての最適解を見つけていく。
そこに、建築家と
住まいを考える意味があると思っています。
家づくりの途中で迷うことは、
決して悪いことではありません・・・・・。
土地を購入してよいのか分からない。
希望を整理できない。
間取りを見ても、
自分たちに合っているのか判断できない。
工務店やハウスメーカーを何社も回ったけれど
なぜか決められない。
家づくりを始めると、多くの方が迷います。
けれど、その迷いは
知識が足りないからとは限りません。
ご家族が本当に大切にしたい暮らしが、
まだ整理されていないだけかもしれません。
早く答えを出そうとすると、
価格、面積、性能、設備、見た目といった、
比較しやすい条件だけで判断してしまいます。
しかし、本当に考えなければならないのは、
その家で、どのような毎日を過ごしたいのか。
何を大切にし、何を減らしたいのか。
家族とどのような関係を育てたいのか。
という、数字だけでは表せない部分です。
迷っているときこそ、
間取りを急いで決めるのではなく、
暮らしを見つめ直す時間が必要です。
その時間は、
家づくりを遅らせるものではありません。
完成後の後悔を減らし、
ご家族らしい判断軸を
つくるための大切な過程です。
ご希望をかなえるだけでなく、
その先の暮らしまで考えること。
住まい手ご家族に好かれるための
設計をするのではありません。
もちろん、
気持ちよくお話しいただけることや、
信頼関係を築くことはとても大切です。
しかし、
打ち合わせの場で
喜んでいただくことだけを優先し、
完成後の暮らしに
負担を残してしまえば、
暮しが人生を台無しにしてしまいます。
ときには、ご希望とは異なる案を
ご提示することがあります。
計画を一度立ち止まって
考えていただくこともあります。
必要がないと考慮する場合は、
面積や設備を減らすご提案もします。
土地について問題があると判断すれば、
購入を見送る選択肢もお伝えします。
それは、
ご希望を否定するためではありません。
ご家族が家を建てた後も、
無理なく、穏やかに、
充実した時間を
重ねていただけるようにするためです。
ご希望をすべて受け入れることよりも、
ご家族の将来にとって
本当に良い選択を丁寧に考えるように。
奈良で注文住宅やリフォームについて
迷われている方へ
家づくりの相談は、
すべての希望が決まってから
行うものではありません。
土地を探し始めたばかりの段階。
新築かリフォームか迷っている段階。
家族の希望がまとまっていない段階。
工務店やハウスメーカーを回ったものの、
判断できなくなっている段階。
そのような状態でも大丈夫です。
むしろ、具体的な計画が固まる前だからこそ、
一度暮らしについて
整理しておくことに意味があります。
やまぐち建築設計室では、
間取りを描く前に、現在の生活、
ご家族の価値観、
これから大切にしたい時間について
丁寧にお話を伺います。
何を建てるかを決める前に、
どのように暮らしたいのかを一緒に考える。
ご家族の中にある、
まだ言葉になっていない思いを紐解き、
土地、予算、間取り、性能、素材、家具、
庭まで一つの暮らしとして
整えていきます。
誰かが用意した一般的な正解ではなく、
ご家族自身が心から
納得できる住まいを考えたい方へ。
住まいづくりについて迷っていることや、
現在感じている違和感から、
お聞かせください。
完全予約制の個別相談にて、
落ち着いてお話を伺っています。
住まいをつくることは、
これからの暮らし方を選ぶことでもあります。
その大切な判断を、急がず、曖昧にせず、
ご家族と一緒に
考えていきたいと考えています。
ご提案したいと考えています。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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