ブログ・コラム
2026.05.30
間取りの前に今ある暮らしと少し先の未来を考える事。人は体験したことしか理解できないものです、冷暖自知のように|だからこそ家づくりは人生を考える事につながります。
- カテゴリ:
- 住まいと暮らしの考え方
なぜ家づくりで後悔する人は減らないのか。
建築家が考える「価値を設計する」
という視点からのすまいづくり・・・・・。
家づくりを考え始めた時、
多くの人はまず間取りを探します。
〇関連blog
なぜ“間取りから考える家づくり”は失敗するのか|住まいは人生観の表出である―建築家が紐解く暮らしの質を高める設計という考え方
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail830.html

※人は体験したことしか理解できない。
だからこそ間取りの前に暮らしを考える。
・SNSで施工事例を見る。
・住宅展示場へ行く。
・YouTubeでルームツアーを見る。
・住宅会社のホームページを眺める。
そして「吹き抜けが欲しい」
「アイランドキッチンに憧れる」
「平屋が良い」
「中庭が欲しい」
そんな理想を思い描きます。
しかし私は建築家として、
長年住まいづくりに携わる中で
感じていることがあります。
家づくりで悩む人は
決して少なくありません。
性能は向上しています。
設備も進化しています。
情報も昔より圧倒的に増えました。
それなのに、なぜ悩みは
なくならないのでしょうか?
私はその理由が、
家を考える時間に比べて、
暮らしを考える時間が少ないから
だと考えています。
※設計のご依頼をいただく方には
この「意味」を
最初にお話させていただいています。
そしてもうひとつ。
家づくりが難しい理由があります。
それは、
人は、自分が体験したことしか
本当の意味では理解ができないからです。
〇関連blog
間取りの前に人生設計を考える|冷暖自知という設計思想が導く、本当に納得できる住まい
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail798.html
この事実が、家づくりの難しさの
本質なのだと思います。
人は体験したことしか理解できない。
調理をほとんどしない人には、
料理をする人がキッチン周辺や
家事に関して何に困り、
何を大切にしているのかを
完全には理解できません。
毎日洗濯をしている人と、
そうでない人では、
ランドリールームに求める
価値が違います。
子育て経験がない人には、
子どもが成長する中で、
どれほど暮らしが変化するのかを
想像することは難しいものです。
子育ての相談も
そうではありませんか?
これは能力の問題ではありません。
認知の問題なんです。
人は経験を通して
世界を理解しています。
そしてそこには、
必ず「バイアス」がかかります・・・・・。
だから見えている世界が違うのです。
〇関連blog
認知の歪みが暮らしを疲れさせる理由|住まい・間取り・住環境と「心」の関係を、建築家が丁寧に整える理由
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail838.html
家づくりとは、
今の暮らしだけではなく、
未来の暮らしまで
想像しなければならない行為です。
だから難しいのです。
車を運転する人にしか分からないこと。
私は時々、
家づくりを車の運転に例えます。
車を普段から運転する人であれば、
縦列駐車の難しさを知っています。
死角の危険性を知っています。
夜間の見え方も知っています。
雨の日の乗り降りの不便さも知っています。
歩行者や自転車、
バイクの恐ろしさを知っています。
制動距離も知っています。
車体の大きさによる
感覚の違いも知っています。
しかし、
運転をしていない人や
運転経験の少ない人には、
その感覚が分かりません。
図面上では「駐車場2台分」
と書かれていても、
実際には車庫入れしにくいことがあります。
荷物を降ろしにくいことがあります。
子どもを乗せ降ろししにくいことがあります。
高齢になった時に使いづらいことがあります。
つまり、
数字上は問題なくても、
体験としては問題があることがあるのです。
設計者(建築士)がペーパードライバーや
休日ドライバーの場合は
駐車場計画に関して、
建築各論やマニュアルに沿っての
計画のみになり、
想定の範囲や傾斜との影響や
隣地の塀の影響、
道路対岸の電柱の影響などに
どの程度対処できるのかは
難しいところだと思います。
家づくり全般も全く同じです。
図面では良く見える。
しかし暮らしを紐解くと
過ごしにくくなる・・・・・・。
なぜそういう事が起こるのか?
人は行動の中で暮らしているからです。
間取りは見える、
でも暮らしは見えないということろ。
図面には寸法があります。
収納量も分かります。
窓の位置も分かります。
しかし、暮らしは描かれていません。
朝起きる。
歯を磨く。
朝食を作る。
洗濯をする。
出勤する。
帰宅する。
片付ける。
くつろぐ。
家族と話す。
その行動は図面には見えません。
だから建築家は、
図面を描く前に
暮らしを想像する必要があります。
それに関して、
住まい手さんご家族も同様です。
夫婦で違う「普通」という落とし穴。
設計相談でよく感じることがあります。
夫婦であっても「普通」が違うということです。
〇関連blog
家族だから同じはず…が危ない| 建築家が提案する、価値観のズレを整え上質な時間を生み出す「共創住宅」という設計思想
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail816.html
ご主人はリビングを広くしたいと言う。
奥様はリビングの広さよりも収納を充実させたい
と言うご希望。
どちらも間違いではありません。
しかし、
なぜそう思うのかを深掘りすると、
価値観の違いが見えてきます。
ある人は家族との時間を大切にしたい。
ある人は家事の負担を減らしたい。
ある人は趣味を大切にしたい。
ある人は来客を大切にしたい。
その違いを整理せずに間取りを決めると、
住み始めてから違和感が生まれます。
家づくりとは、
結婚前、結婚後と同じように
暮らしや感性を再度見直して、
夫婦がお互いを理解して、
違いを知り、
再構築する時間でもあるのです。
家事文化、家庭の文化の違いが
間取りを変えるという事。
家庭ごとに生活の文化があります。
朝洗濯する家庭。
夜洗濯する家庭。
週末にまとめて家事をする家庭。
毎日少しずつ進める家庭。
料理を楽しむ家庭。
時短を優先する家庭。
来客が多い家庭。
家族だけで過ごす家庭。
これらはごく一部ですが
家事や生活の文化です。
つまり、
間取りに正解がない理由でもあります。
家事文化が違うのに、
同じ間取りがやイメージが
最適になるはずがありません。
だからこそ私は、
間取りや家事動線を考える前に、
そのご家族の暮らし方を整理、
理解することを大切にしています。
収納と認知の関係性。
収納計画も同じです・・・・・。
収納は量だけでは決まりません。
認知と行動が大きく関係します。
帰宅してどこに鞄を置くのか。
郵便物をどこに置くのか。
上着をどこで脱ぐのか。
掃除機をどこから出すのか。
人は面倒なことを続けられません。
つまり収納とは、
空間の問題ではなく、
行動設計の問題でもあるのです。
収納が多いのに片付かない家。
収納が少なくても整う家。
その違いは認知と行動の設計にあります。
SNSが見せる理想と現実。
現代の家づくりは、
SNSの影響を大きく受けています。
美しい住まい。
洗練されたインテリア。
ホテルライクな空間。
確かに魅力的です。
しかし、それは誰かの暮らしです。
あなたの暮らしではありません。
憧れや理想は大切です。
でも本当に大切なのは、
その空間でどんな時間が流れ、
暮しにどのように作用するのかということです。
環境は人をつくるということ。
私は住まいを単なる箱だとは思っていません。
環境は人に影響を与えます。
自然光が入る部屋では気持ちが前向きになる。
風が抜ける空間では呼吸が深くなる。
木の質感は安心感を与える。
視線が抜ける場所では心に余裕が生まれる。
逆に、
閉塞感のある空間はストレスを生みます。
散らかった空間は思考を乱します。
環境は行動を変えます。
行動は習慣を変えます。
習慣は人生を変えます。
だから住まいは
人生に大きな影響を与えるのです。
空間は人間関係を育てるということ。
家族の関係も同じです。
家は人間関係を育てる器です。
いつも楽しく近くで・・・と思いますが、
近すぎる距離感は
息苦しくなることがあります。
遠すぎる距離感は孤独を生みます。
だからこそ私は、
距離感の設計を大切にしています。
気配は感じる。
でも干渉しすぎない。
一緒にいられる。
でも一人にもなれる。
この絶妙な距離感が家族関係を支えます。
喜怒哀楽を受け止める住まいということ。
人生は楽しいことばかりではありません。
嬉しい日もある。
悲しい日もある。
怒りを感じる日もある。
不安になる日もある。
住まいは、その全てを受け止める場所です。
だから私は、
住まいにその時々の
居場所が必要だと思っています。
一人で考えられる場所。
家族と笑い合える場所。
静かに過ごせる場所。
そうした余白が人生を支えてくれるのです。
人生と住まいの関係・・・・・。
住まいは人生の器です。
人生そのものでもあります。
毎日使う場所だからこそ、
小さな違いが積み重なります。
朝の光。
風の流れ。
収納の使いやすさ。
家族との距離感。
帰宅した時の安心感。
その積み重ねが人生になります。
だから家づくりとは、
人生づくりなのだと考えています。
やまぐち建築設計室が考える暮らしの設計
私は間取りを提案する前に、
暮らしを考えます。
収納を考える前に習慣を考えます。
家事動線を考える前に家事文化を考えます。
リビングの広さを考える前に
家族の距離感を考えます。
そして、
そのご家族がどんな人生を
送りたいのかを考えます。
家を設計するのではありません。
暮らしを設計するのです。
未来を設計するのです。
その為に計画前の「暮らしの見直し」時間を
大切にしています。
家づくりで後悔する人が減らない理由は、
家そのものを見る時間が長く、
暮らしを見つめる時間が
短いからかもしれません。
間取りは手段です。
設備も手段です。
収納も手段です。
本当に大切なのは、
その先にある暮らしそのものです。
どんな時間を過ごしたいのか。
どんな家族でありたいのか。
どんな人生を育てたいのか。
その問いから始まる家づくりこそが、
最適解が生まれる
住まいづくりにつながるのだと思います。
やまぐち建築設計室は、
図面を描く前に暮らしを見つめます。
そして、
そのご家族らしい価値を探します。
住まいとは人生そのもに直結するものです。
だからこそ、
「どんな家を建てるか」だけではなく、
「どんな人生を育てたいのか」から
家造りを考えてみてください。
その問いの先に、
本当に豊かな住まいづくりがあると
私は考えています。
‐----------------------------------------
■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
ご連絡ください
------------‐-----------------------------





