ブログ・コラム
2026.02.16
住まいは、人と環境の関係を整える場所 ― 間取りや設計の前に考えたい暮らしの本質
- カテゴリ:
- 住まいと暮らしの考え方
住まいは、
人と環境との関係を整えるために。
設計の前に、
暮らしの本質を考えるということ。

※空間を取り込んだ光と環境の関係を整えた
ホテルライクなLDK空間提案
家づくりやリフォームを考え始めると、
多くの方がまず「間取り」や「性能」、
「予算」から検討を始められます。
それは、ごく自然な流れです。
情報が整い、
比較がしやすい時代だからこそ、
合理的な判断をしようとされるのは
当然のことだと思います。
ただ、
設計の現場に長く身を置いていると、
間取りの前に
考えるべき事柄について
問いを投げかけさせていただく
事があります。
その住まいで、
どんな時間を過ごしたいのか?
その空間は、
暮らしの感情まで
受け止めてくれるものですか?
住まいとは本来、
「暮らすための箱」ではなく、
人と環境、人と時間、
人と感情との関係を整える場
なのではないでしょうか?
環境は、設計の素材ではなく
「対話の相手」ということ。
「光や風を感じる家にしたい」
そうお話しされる方は、
年々増えています。
・明るさを取り込みたい
・風通しの良い家にしたい
・庭や外とのつながりを感じたい
どれも、
とても大切な視点です。
ただ、私はその一歩手前で、
必ずこう考えるようにしています。
周囲の環境は、
演出する対象ではなく、
向き合う存在である
ということ。
敷地ごとに異なる日照条件
季節によって変わる風の流れ
時間帯で移ろう光と影
それらは、
人の都合だけで
完全に制御できるものではありません。
だからこそ、
どの時間帯に光が差し込むのか?
どの季節に風が抜けるのか?
どんな陰影が生まれるのか?
そういった内容を丁寧に読み取り、
設計に反映していく必要があります。
これは、技術以前に、
住まい手さんの暮らしを担う
設計者の姿勢そのものだと
考えています。
性能を高めれば、
暮らしは快適になるのか?
よくあるご相談のひとつに、
性能を重視すれば、
快適な家になりますか?
という問いがあります。
確かに、断熱や気密、
設備性能はとても重要です。
それを否定することはありませんし
状態の底上げは重要です。
けれど、ここで一度立ち止まって
考えてみたいのです。
性能は高いはずなのに、
なぜか落ち着かない
居場所が定まらない
家にいるのに気持ちが休まらない
そんな住まいが存在するのも、
事実です。
理由はとてもシンプルで、
人の感覚は、数値や仕様だけでは
整わないからです。
・光の質
・音の響き方
・視線の抜け
・家族との距離感
こうした要素が重なり合って、
はじめて「心地よさ」は生まれます。
理由は分からないけれど
落ち着く家が生まれる理由
この家、
なぜか落ち着きますね。
完成後、
そういった言葉をくださることがあります。
その理由を言葉にするのは、
簡単ではありません。
けれど設計者としては、
偶然ではないことを知っています。
人は本来、
光や音、空気の動きを
感じ取りながら
暮らしを営んできました。
だからこそ、
・強すぎない明るさ
・完全に遮断しない環境
・適度な陰影と奥行き
こうした要素に、
人は無意識の安心を覚えます。
住まいの心地よさとは、
人が本来備えている感覚を、
呼び覚ますことなのかもしれません。
間取りを考える前に、
必ず行うこと・・・・・。
やまぐち建築設計室では、
いきなり間取りの話に入ることは、
ほとんどありません。
その前に、
必ず行うことがあります。
それは、
暮らしの時間を言葉にすること。
朝はどんな気持ちで
目覚めたいか?
帰宅したとき、
どこで一息つきたいか?
家族と過ごす時間と、
一人の時間のバランスはどうか・
これらは、
図面には直接描けません。
けれど、
設計の方向性を決定づける、
非常に重要な要素です。
自分たちに合う住まいが
分からないという悩み・・・・・。
それは、
感覚が鈍いからではありません。
情報が溢れる時代だからこそ起こる、
ごく自然な迷いです。
正解が無数にあるように見えて、
自分たちの軸が
見えにくくなっている。
だからこそ、
設計者の役割は
答えを提示することではなく、
問いを一緒に整理すること
だと考えています。
設計という仕事は、
人を育てる営みに似ているという事。
ある思想書に、
教育とは人の内側にある可能性を
引き出す営みである。
という言葉があります。
この考え方は、
住まいづくりにも
そのまま重なります。
設計者が前に出すぎれば、
住まいは設計者の
作品になってしまう。
引きすぎれば、
ただの要望整理で終わってしまう。
その間に立ち、
住まい手自身も
気づいていなかった価値観を
丁寧に言語化し、
暮らしの営みを形にしていく。
それが、
設計という仕事だと考えています。
環境と調和した住まいが、
暮らしを変える理由。
光や風、
季節の変化と調和した住まいでは、
暮らしに静かな変化が
生まれます。
・家で過ごす時間が心地よくなる
・無意識に深呼吸する回数が増える
・気持ちの切り替えが早くなる
これは、
精神論ではありません。
周囲の環境要素が、
人の感覚や自律神経に対して
穏やかに作用しているからです。
住まいは、
感情を整えるための環境という器
でもあるのです。
「足す設計」から「整える設計」へ
現代の住まいづくりは、
どうしても「足す」方向に
進みがちです。
・機能を足す
・広さを足す
・設備を足す
けれど、
満足度の高い住まいほど、
構成は驚くほどシンプルです。
必要なものが
必要な場所に
過不足なく存在している
それだけで、
暮らしは整っていきます。
住まいは、
完成した瞬間から「育つ」という事。
家は、完成した瞬間が
ピークではありません。
住まい手の人生とともに、
少しずつ表情を変え、
深まっていきます。
だからこそ、
流行ではなく、
時間に耐える設計を大切にしています。
住まいを考えることは、
人生を見つめ直すことに、
とてもよく似ています。
忙しさに流されていないか?
本当に大切にしたい時間は何か?
これから、
どんな日々を重ねていきたいのか?
住まいは、
その問いに、
日々こたえ続ける場所です。
派手な提案はしません。
けれど、
長く心に残る住まいを、
一つひとつ丁寧に考え続けています。
もし今、
・家づくりやリフォームで迷っている
・情報が多すぎて判断できない
・しっくりくる住まいが見えない
そんな状態であれば、
設計の前に、
暮らしの話から始めてみてください。
住まいは、
急いで決めるものではありません。
人生を受け止めるための器だからこそ
丁寧な時間を考える余白が重要です。
今回の投稿が、
少し立ち止まって
ご自身の暮らしと人生を
見つめ直すきっかけになれば幸いです。
住まいを考えることは、
人生の問いと向き合うことでもあります。
他にも、暮らしの視点から
住まいを考える
ヒントをまとめた記事がありますので、
ぜひご覧ください。
○関連blog
冷暖自知という考え方から見つめ直す、五感が整える上質な住まいの設計思想
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail749.html
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建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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