ブログ・コラム
2026.02.11
設計者は、感情を設計している。 ── 暮らしの心地よさから考える、建築家による住まいづくり
- カテゴリ:
- 設計の事・デザインの事
建築家・設計者は暮しに宿る「感情」を
デザインしています。
住まいは、
暮らしの気持ちを
受け止める場であるという事。

※価値観を反映し、光・素材・視線を整えることで
今回設計依頼をいただいた住まい手さんの感情が
自然と落ち着くリビング空間。
中庭の緑と室内の陰影が、
日常の時間にやさしい在り方を生み出します。
住まいづくりとは、
図面を描くことでも、
性能を並べることでもありません。
本質的には、
そこで暮らす人の「感情の流れ」を
どのように整えるべきなのか?
その問いに向き合い続ける行為だと、
私は考えています。
朝、どんな気持ちで目覚めるのか。
玄関に立ったとき、
心は緩むのか、張りつめるのか。
夜、照明が落ちた空間で、
呼吸は自然に深くなるのか。
設計とは、
人の感情が無意識のうちに
どのように動くかを見つめ、
整える行為だと・・・・。
やまぐち建築設計室では、
そう捉えています。
人は、感情の中で暮らしている
私たちは日々、
「合理的に判断している」と
思いながら暮らしています。
しかし環境心理学の視点から見ると、
人の行動や選択の多くは、
感情に大きく左右されています。
落ち着く空間では、
言葉が柔らかくなる
圧迫感のある場所では、
無意識に早足になる
光がやわらかいと、
思考も穏やかになる
これは特別な感性の話ではありません。
誰にでも起こる、
ごく自然な反応です。
住まいは、
毎日その感情の影響を
受け続ける場所であるということ。
だからこそ設計者は、
「目に見える形」以上に、
目に見えない感情の動きを
丁寧に考える必要があります。
良い家とは、
ある意味では「気持ちが乱れにくい家」
家づくりを考え始めた方から、
よく聞く言葉があります。
「おしゃれな家にしたい」
「ホテルのような空間に憧れる」
「和モダンな落ち着いた雰囲気が好き」
それらはすべて、
見た目の話のようでいて、
実は感情の話です。
・緊張しすぎず
・だらけすぎず
・自分を保てる場所であること
成熟した感性を持つ方ほど、
無意識に「気持ちが整う空間」を
求めています。
私はそれを、
「感情が暴れない住まい」
と表現することがあります。
設計者の役割は「感情の翻訳」
住まい手の方は、
自分の感情を正確に
言葉にできるとは限りません。
「なんとなく落ち着かない」
「広いのに、くつろげない」
「きれいだけれど、疲れる」
これらはすべて、
感情の違和感が
言葉になりきっていない状態です。
設計者の仕事は、
それを「要望」として
処理することではなく、
感情の奥にある本音を読み取り、
空間というカタチに翻訳すること。
ですから、やまぐち建築設計室は、
間取りの前に、
必ず暮らしの話をします。
環境心理学が示す「空間と心の関係」
環境心理学では、
人の心は環境から
常に影響を受けていると考えます。
例えば、
天井の高さは、
思考の広がりに影響する
視線の抜けは、安心感を生む
明暗のグラデーションは、
感情を落ち着かせる
これらはデザインの
テクニックではなく、
人の心の反応に基づいた設計判断。
やまぐち建築設計室では、
和モダンやホテルライクといった様式を
「雰囲気」ではなく、
感情を整えるための
手段として捉えています。
和モダンが与える「安心」と「品格」
和の空間がもつ本質は、
装飾ではありません。
・余白
・間(ま)
・陰影
・素材の静けさ
・わびさび
それらが生み出すのは、
自分の感情を
過剰に刺激しない環境・・・。
忙しさの中で暮らす現代人にとって、
この「刺激の少なさ」は、
非常に価値のある感覚です。
和モダンとは、
懐かしさではなく、
感情をニュートラルに
戻すための知恵だと考えています。
ホテルライク住宅が求められる理由
一方で、ホテルライクな住まいに
惹かれる方も多くいます。
それは単に
「非日常に憧れている」
からではありません。
ホテルの空間には、
・安心感
・整然さ
・自分を委ねられる余白
が存在しています。
つまり、
感情を預けても
大丈夫だと思える設計がされている。
私は住宅においても、
その「安心して委ねられる感覚」を
日常に落とし込むことを
大切にしています。
成熟した選択眼を持つ人ほど、
感情を重視するという事。
住まいづくりの初期段階では、
多くの情報に目が向きます。
性能、価格、設備、数値。
それらはもちろん大切です。
ただ、
経験を重ね、
選択の質が上がるほど、
人は次の問いに向かいます。
この空間で、
自分たちは穏やかに過ごせるだろうか?
これは、
感情を基準にした問いです。
設計とは、
暮らしの未来を想像する行為
住まいは、
完成した瞬間がゴールではありません。
10年後、
家族構成が変わったとき。
仕事のスタイルが変わったとき。
心境が変化したとき。
その変化を、
やさしく受け止められるかどうか?
私は、時間の中で変わる感情も
意識しながら暮らしの環境を
設計しています。
それは決して
派手な提案ではありません。
むしろ、
とても静かな判断の積み重ねを
どのように「カタチ」として
反映するべきなのか
ということですから・・・。
この家にいると、気持ちが整う
もし住まいについて、
そんな言葉が自然に出てくるとしたら。
それは、
設計が感情に届いている証拠です。
「目立つ建築」よりも
「長く信頼される住まい」を。
設計相談とは、
感情を整理する時間・・・・・。
やまぐち建築設計室の
設計相談は、
いきなり間取りの話から始まりません。
そういう部分も
知っていただければと思いますので
設計相談等の際に
感情の設計などのお話のさせていただく
質問と回答を一部抜粋して
以下に少しまとめました。
よくある質問|
Q1. 建築家が「感情を設計する」とは、
どういう意味ですか?
A. 建築家が感情を設計するとは、
間取りや素材、光、視線、
音の響きなどを通して、
そこで暮らす人の気持ちが
自然に整う環境をつくることを指します。
人は住まいの中で、
無意識のうちに空間から
影響を受けています。
落ち着く、安心する、集中できる、
呼吸が深くなる── 。
そうした感情の変化は、
偶然ではなく
設計によって生まれるものです。
Q2. なぜ住まいづくりに「感情」が
重要なのですか?
A. 住まいは、人生の中で
最も長い時間を過ごす場所だからです。
性能やデザインが優れていても、
気持ちが落ち着かない住まいでは、
日々の暮らしに
知らず知らずの疲れが
蓄積されていきます。
感情を意識した設計は、
暮らしの質そのものを静かに支え、
長く心地よさが続く住まいに近づきます。
Q3. 感情を設計するために、
建築家は何を見ているのですか?
A. 建築家は、図面だけでなく
住まい手の暮らし方・価値観
無意識の反応を見ています。
どんな時間帯に気持ちが切り替わるか?
どんな場所で落ち着くか?
何にストレスを感じやすいか?
こうした感覚的な部分を
丁寧に読み取り、
必要な知見を踏まえて空間に反映していきます。
Q4. 和モダンやホテルライクな住まいは、
感情とどう関係しますか?
A. 和モダンやホテルライクな空間が持つ魅力は、
見た目の美しさ以上に、
感情を乱しにくい環境にあります。
余白のある構成光と
影の穏やかなグラデーション素材の
主張を抑えた静けさこれらはすべて、
人の心を過度に刺激せず、
自然体に戻すための設計要素となります。
Q5. 設計者によって、
住まいの「心地よさ」は変わるのでしょうか?
A. はい、大きく変わります。
同じ広さ、同じ性能であっても、
設計者の視点や思考が違えば、
住まい手が感じる心地よさは
まったく異なります。
設計者が「形」を優先するのか、
「感情の流れ」を優先するのか?
その違いが、
暮らしの質として積み重なっていきます。
Q6. やまぐち建築設計室では、
どのような住まいづくりを
大切にしていますか?
A. やまぐち建築設計室では、
形だけではなく、
気持ちから住まいを考えることを
大切にしています。
華やかさや流行よりも、
長い時間の中で
「この家にいると、気持ちが整う」と
感じられること。
住まいを、
人生の感情を受け止める場として捉え、
設計の工夫を施しています。
設計相談とは、
感情を整理する時間・・・・・。
やまぐち建築設計室の
設計相談は、
いきなり間取りの話から始まりません。
まず、
・どんな一日を過ごしたいか
・どんな時間が好きか
・何に疲れやすいか
・自分たち家族の在り方はどうなのか
そうした感情の話を、
丁寧に伺います。
住まいづくりは、
自分自身の感情と向き合う
機会でもあるからです。
住まいは、人生の場であるということ
家は、
成功を誇る場所ではありません。
誰かに見せるためだけの
舞台でもありません。
嬉しい日も、
疲れた日も、
言葉にできない感情も、
すべてを受け止める場所です。
人生の喜怒哀楽に程よく寄り添う空間。
だからこそ、
設計者は感情の設計から
逃げてはいけないという事。
感情を大切にする人のための
住まいを丁寧に。
やまぐち建築設計室の
設計思想は
形ではなく、気持ちから考える
ということ。
家づくりに迷いを感じている方、
これから住まいを考え始める方へ。
間取りという
カタチの存在を急がず、
感情を整理するところから、
丁寧に考えてみませんか?
今回のblog投稿記事と
一部ご紹介したQ&Aが、
ご自身の暮らしを
少し立ち止まって考える
キッカケになれば幸いです。
○関連blog
住まいが整うと、日々の暮らしの選択が上質に変化する理由 ― 思考と感情に作用する、インテリアと設計の見えない力 ―
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail738.html
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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