ブログ・コラム
2026.01.28
奈良の風土に寄り添う家の形を設計する・和モダン住宅が「長く心地よく」暮らせる理由
- カテゴリ:
- 設計の事・デザインの事
地域性に寄り添う家の「形」を考える
奈良の風土とともに、
長く愛される住まいとなるために。
家の形に、
絶対的な「正解」があるとは
考えていません。
けれど、その土地に暮らす人の時間を、
静かに、しかし確実に支える「かたち」は、
確かに存在すると感じています。

※奈良の風土に寄り添う「形」を大切にした
和モダン住宅。
深い軒、石畳のアプローチ、雑木の庭が、
四季の変化を穏やかに受け止めながら、
長く住み継がれる住まいの佇まいをつくります
奇抜なデザインでも、
流行のスタイルでもありません。
もっと根源的で、
もっと静かなもの・・・・・。
地域に馴染み土地の気配に
きちんと耳を澄ませてつくられた輪郭。
やまぐち建築設計室が
大切にしているのは、
「かっこいい家」よりも、
この土地で、十年、二十年、三十年と、
暮らしの時間を受け止め続けられる家です。
そのためにはまず「形」を
住まい手さんの価値と暮らし
そして「場と環境」からも考えます。
家の形は見た目ではなく「環境への態度」
一般に「家の形」と聞くと、
外観デザインや意匠を
思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、やまぐち建築設計室が考える
「形」とは、そうした表層の
話ではありません。
・屋根のかかり方
・建物の高さと厚み
・開口部の向きと位置
・外と内の間にある「余白」の取り方
・敷地の中での建ち方、構え方
・風・雨・日射・音を
どう受け止めて、どう逃がすか
これらすべてを含めた、
環境に対する建築の姿勢そのものを
指しています。
同じ性能数値の家でも、
形が違えば、
暮らしの感覚は驚くほど変わります。
・夏の夕方、体から熱が抜けていく速さ。
・雨の日に、家の中に残る静けさ。
・冬の朝、足元に伝わる冷えの質。
それらは設備より先に、
形が決めていることが多いのです。
そもそも状態をキチンと考えれば
「同じ家」を建てるべきなのか?
日本は南北に長く
山と海に囲まれて、湿度が高い国です。
ひとくちに「日本の家」と言っても、
地域ごとの気候条件は
大きく異なります。
特に奈良県は、
内陸に位置する大和盆地を中心に、
寒暖差、湿度、降雨の集中、
風の弱さといった特徴を併せ持つ地域です。
私が住んでいる吉野町、
アトリエのある橿原市、
これだけでも一日を通しての環境も
周辺から受ける影響も
随分異なります。
・夏は蒸し暑く、風が滞留しやすい
・夕方になっても熱が抜けにくい日がある
・冬は底冷えしやすく、
放射冷却の影響を受けやすい
・梅雨から夏にかけて降水量が集中する
・局地的な雷雨や天候の急変も少なくない
こうした異なる条件の中で、
「全国共通の形の家」を
そのまま当てはめることが、
本当に心地よい暮らしにつながるのか?
常にその問いから設計を始めます。
例えばですが、奈良県香芝市・・・・・。
利便性の裏側にある、夏の「重たさ」
奈良県香芝市は
大阪方面へのアクセスが良く、
暮らしやすい街として人気があります。
一方で、実際に住んでみると、
夏の暑さや湿気の「重さ」を
感じる方も少なくありません。
大和盆地の西側に位置する香芝市は、
日中に蓄えた熱が夕方以降も残りやすく、
風が弱い日は、
空気が停滞しやすい傾向があります。
この地域で重要なのは、
「冷やす」よりも前に、
熱を溜め込まない形をつくること。
・日射を受けすぎない屋根のかかり方
・夕方に熱を逃がすための開口配置
・湿気が滞留しない空気の流れ
設備に頼ることも勿論重要ですが
その前に、家のカタチや状態そのものが、
夏をやり過ごせるようにしておく。
それが、長く落ち着いて暮らすための
基本になります。
奈良市
寒暖差のある盆地で四季と折り合う
奈良市周辺は、
内陸性の気候による寒暖差が
比較的大きいエリアです。
夏の蒸し暑さと、冬の底冷え。
この両方に向き合わなければなりません。
ここで大切なのは、
一年を通して「同じ表情」でいる家ではなく、
季節によって振る舞いを変えられる形です。
・夏は影をつくり、風を通す
・冬は光を迎え、冷えを和らげる
・視線や音を抑え、内側に落ち着きをつくる
和風や和モダンの家が、
奈良の風景に美しく馴染む理由は、
単なる意匠ではなく、
こうした季節との折り合い方が、
形の中に組み込まれているからだと
感じています。
桜井市
同じ市内でも条件が大きく変わる土地
桜井市は、
盆地特有の寒暖差に加え、
平地と山裾で環境条件が変わりやすい地域です。
少し敷地が変わるだけで、
・雨の当たり方
・風の抜け方
・湿気の溜まりやすさ
などが大きく変わることも珍しくありません。
この地域では、
「桜井市だからこう」という
大雑把な判断は危険です。
一敷地ごとに、
詳細な土地の癖を丁寧に読み取り、
その場所専用の形を
通常よりも、より詳細に
導き出す必要があります。
そうしなければ、完成後に
「思っていたより暑い」「雨音が気になる」
といった違和感が、
じわじわと暮らしに影を落とします。
葛城市
雨の季節を前提にした「構え」を
葛城市周辺では、
梅雨から夏にかけての降雨量が比較的多く、
雨との付き合い方が、
家の寿命にも影響します。
ここで重要なのは、
雨を完全に遮断しようとするのではなく、
受け止めて、いなして、
逃がすという考え方。
・雨だれや跳ね返りを抑える屋根の出
・風雨の方向を考えた開口配置
・外と内の間に、
濡れてもよい中間領域をつくる
こうした形は、見た目のためではなく、
建物を守り、
暮らしを静かに保つためのものです。
明日香村
風景と時間を受け継ぐ場所での家づくり
明日香村は、
言うまでもなく歴史的風土と
景観が守られてきた土地です。
同時に、近年は豪雨や
災害リスクにも目を向ける必要があります。
この地で求められるのは、
「昔風の家」ではなく、
風景に馴染みながら、
現代の環境条件にも耐える形です。
・土地の水の流れを読む
・無理のない配置計画
・控えめで、しかし芯のある佇まい
美しさと強さは、
決して相反するものではありません。
むしろ、長く愛される家ほど、
その両方を備えています。
形が整うと、
暮らしは自然に整いはじめるということ。
地域性に合った形の家は、
暮らしに無理を強いません。
・冷暖房に頼りすぎない
・窓の開け閉めが自然に決まる
・音や視線に、
必要以上に神経を使わなくていい
・季節の移ろいを、心地よく感じられる
それらの充実は
住まいが人を回復させる器として
機能している状態に近づきます。
丁寧な暮らしに憧れる方が
求めているのは、派手さではなく、
こうした日常の「疲れにくさ」
なのではないでしょうか?
地域性に合った家は、
街並みも育てるということ。
その土地に合った形の家は、
突出しすぎず、
しかし埋もれもしません。
時間が経つほどに、
「そこにあるのが自然な家」になっていく。
それらの考え方から生まれた風景は、
住まい手さん個人の満足を超えて、
街全体の風景を
育てていく力を持っています。
やまぐち建築設計室は、
「流行の家」や「目立つ家」を
つくるために
設計を行っている訳ではありません。
この土地で、
この家族が、
この時間を、
穏やかに重ねていける家。
そのために、
地域性に耳を澄まし、
形を丁寧に考え続けています。
地域性に合った家の形を選ぶことは、
過去から受け取った知恵を、
未来へとつないでいくこと。
そんな住まいづくりを、
これからも、
奈良の地で続けていければと
考えています。
今回の記事が、
暮らしの基準という視点で
ご自身の住まいを
見直すきっかけになれば幸いです。
○関連blog
家づくりは「問い」から始まる・最適で理想の暮らしを後悔なく形にする、設計の思考整理
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail701.html
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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