ブログ・コラム
2026.01.26
暮らしが整わない本当の理由・空間ではなく「基準」から考える住まいの設計哲学
- カテゴリ:
- 過ごし方、暮らし方、生活環境と間取り
暮らしが整わない理由は、
空間だけではなくて「基準」にあるということ。
住まいのご相談を受けていると、
似た言葉に何度も出会います。
・きちんと片付けているはずなのに、
落ち着かない
・生活感を消したいのになぜか残ってしまう
・理想の空間に憧れているのに、心配になる
多くの方はそこで、
収納量やモノの多さ、
家具配置や動線に原因を探そうとします。

※造作収納と居場所を一体で設計した
ホテルライクな住空間。
視線と行為を整理することで、
住まい手さんにとっての
生活感が前に出にくい基準のある暮らしを
形にしています。
けれど、私が最初に見るのは
そこではありません。
暮らしが整わない本当の理由は、
モノの量や収納力ではなく、
暮らしの中に通っている「基準」が
曖昧なままになっていること。
人は基準のない空間では
落ち着けないということ。
どれだけ上質な素材を使っても、
どれだけ広さに余裕があっても、
なぜか心が休まらない
住まいもあります。
一方で、決して派手ではないのに、
一歩足を踏み入れた瞬間、
自然と呼吸が深くなる空間も
確かに存在します。
この違いを生むのは、
デザインの巧拙ではありません。
その空間に、
判断の軸が通っているかどうか?
何を大切にしている住まいなのか?
何を迎え入れ、
何を迎え入れないのか?
どんな時間を過ごすための場所なのか?
これらが無意識のレベルで
揃っている空間は、
人に余計な判断をさせません。
判断が減ると思考は静かになる。
思考が静かになると、
行動が整う。
だから、散らかりにくい。
だから、生活感が前に出てこない。
だから、落ち着くのです。
暮らしの質は、
「何を持つか」よりも
「どう選ぶか」で決まるということ。
多くの人は、
「何を持つか」で暮らしを考えます。
けれど実際には、
どういう理由で選んでいるのか?
ということの方が、
空間に与える影響は
はるかに大きくなります。
・とりあえず必要そうだから
・無いと不安だから
・周囲が持っているから
こうした理由で
迎え入れられたモノたちは、
空間に目立たないノイズを
生み続けます。
一つひとつは些細でも、
積み重なることで
「なぜか落ち着かない住まい」へと
変わっていきます。
反対に、
選ぶ理由が明確なモノは、
多くなくても空間に芯を通します。
よく「断捨離」と表現されますし
整理収納の特集や「その界隈」では
物を減らすことにクローズアップ
されることも多いですが
住まいに必要なのは、
モノを減らすことだけではありません。
選択に一貫性を持たせることです。
生活感が出る家と、
出にくい家の決定的な違い・・・・・。
「生活感を消したい」という想いは、
とても自然なものです。
ただし、
生活感は「隠すもの」ではありません。
生活感とは、
暮らしの軸が定まっていないとき、
自然と滲み出る結果です。
・使う場所が定まっていない
・戻す場所が決まっていない
・使う理由が曖昧
この状態では、
どれだけ収納を増やしても、
生活感は必ず戻ってきます。
一方、
生活感が出にくい住まいには、
必ず共通点があります。
行為と場所が結びついているという事。
・使う理由がはっきりしている
・置く場所に迷いがない
つまり、
暮らしそのものが
設計されているということ。
余白とは、「何もないこと」ではない。
やまぐち建築設計室が
大切にしている
「余白」という考え方。
それは、
単に何も置かない空間のこと
ではありません。
余白とは、
選ばれなかったものが、
正しく扱われている状態です。
・必要だけれど、今は使わない
・好きだけれど、今の暮らしには合わない
・大切だけれど、表に出す役割ではない
それらが、
正しい距離感で
整理されている住まいには、
自然と余白が生まれます。
この余白が、
人の動きを邪魔せず、
視線を疲れさせず、
思考を静かに整えていく。
住まいは、
「心の扱い方」がそのまま表に出る場所。
住まいには、
意識していることよりも、
無意識の癖が正直に表れます。
・判断を後回しにする癖
・違和感を我慢する癖
・なんとなく選ぶ癖
それらはすべて、
空間の中に痕跡として残ります。
だからこそ、住まいづくりを
「建物をつくる行為」だとは考えていません。
暮らし方を、
もう一度選び直す行為だと考えています。
選択肢が多い人ほど
静かな基準が必要になるということ。
選べる立場にいる人ほど、
基準を持たない暮らしは
不安定になるということ。
情報も、モノも、
簡単に手に入る時代だからこそ、
「選ばない勇気」が必要になる。
静かで上質な住まいは、
足し算ではつくられません。
削ぎ落としではなく、
選び抜いた
結果として生まれるものです。
暮らしを整えるとは、
自分を雑に扱わないということ。
どんなモノに囲まれているかは、
自分をどう扱っているかと、
驚くほど正確に一致します。
・違和感を放置していないか
・惰性で選んでいないか
・本当は不要だと気づいていないか
暮らしを整えるとは、
自分自身への扱いを丁寧にすること。
住まいは、
その姿勢を最も正直に映す場所です。
やまぐち建築設計室が考える
「整った住まい」・・・・・。
私たちが目指しているのは、
流行のデザインでも、
見せるための住宅でもありません。
・理由のある選択
・迷いの少ない空間
・心が散らからない構成
それらが自然に
積み重なった結果としての、
静かな美しさが生まれる住まい。
暮らしに基準が通ったとき、
住まいは何も語らなくても、
その人の生き方を伝え始めます。
今回の投稿が、
ご自身の暮らしを見つめ直す
きっかけになれば幸いです。
○関連blog
「捨てる」より「選び直す」。片付けを減らす作業ではなく暮らしを整える時間として考える。奈良のやまぐち建築設計室が提案する心地よく暮らせる収納設計と住まいの整え方。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail634.html
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建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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