ブログ・コラム
2025.12.28
和モダン住宅は、なぜ落ち着くのか・日常と非日常のあいだを設計する、心地よい住まいの考え方
- カテゴリ:
- 和モダン思想
日常と非日常の「あいだ」を
設計する。
和モダン住宅が
「なぜ落ち着くのか」の正体。

※日常と非日常のあいだに、
そっと身を置くLDK。
空間の温もりと陰影が
何もしない時間さえ
心地よく受け止めてくれます。
「この家、なぜか落ち着きますね」
完成した住まいで、
そう言っていただく瞬間があります。
設計者として、
それ以上に嬉しい言葉は
ありません。
しかしこの“落ち着き”は、
感覚や偶然、
センスだけで
生まれているものではありません。
そこには、
意図された設計と
暮らしを深く観察した
結果があります。
今回のblogでは、
やまぐち建築設計室が
日々の設計で大切にしている
日常と非日常のあいだをつくる
という考え方を軸に、
・なぜ和モダン住宅は
落ち着くのか
・なぜ住んでからの
満足度が高いのか
・なぜ頑張らなくていい暮らしに
つながるのか
それらを、丁寧に紐解いていきます。
住まいにおける
「非日常」とは何か?
まず最初に、
よくある誤解からお話しします。
「非日常」と聞くと、
多くの方が
・高級ホテル
・旅館のような空間
・特別なインテリア
を思い浮かべます。
もちろん、
それらも非日常の一つです。
しかし、
住宅における非日常は、
もっと静かで、
もっとささやかなものです。
・外から帰ってきたとき、
ふっと肩の力が抜ける
・玄関を上がった瞬間に、
気持ちが切り替わる
・何もしていない時間を、
肯定されている感覚
こうした 「心の状態の変化」 こそが、
住まいにおける
非日常なのだと、
やまぐち建築設計室では
考えています。
和モダン住宅が得意とする
「切り替えの設計」
和モダン住宅は、
この“切り替え”を
とても上手に扱います。
なぜなら、
日本の住文化そのものが
境界を大切にしてきた
歴史を持っているからです。
- 内と外
- 公と私
- 動と静
- 明と暗
それらを完全に
区分するのではなく、
曖昧につなぐ
「間(ま)」 をつくる。
土間、中庭、縁側、障子、格子、陰影。
和モダン住宅に用いられる要素は、
すべてこの思想に
基づいています。
「あいだ」が、
人を落ち着かせる理由
人は、
極端な環境に長くいると
疲れます。
・明るすぎる空間
・広すぎるリビング
・情報量の多いインテリア
一見、快適そうに見えても、
無意識のうちに
神経を使っています。
現代社会の中で言われている
「脳疲労」のような状態です。
和モダン住宅の思想がつくるのは、
ちょうどよい
グラデーションです。
・明るい場所と、
少し影のある場所
・家族が集まる場所と、
一人になれる場所
・見せる空間と、
隠す空間
この“あいだ”があることで、
人は無意識に呼吸を整え、
心を休ませることができます。
落ち着く家は「頑張らせない」
設計相談の中で、
よく耳にする言葉があります。
ちゃんと暮らせるか不安で・・・。
・片付けが苦手
・料理が得意ではない
・家事に自信がない
そうした不安を抱えたまま、
住まいづくりを
されている方は少なくありません。
しかし、本来住まいは
人を評価する場所ではありません。
設計の中で
考えるようにしているのは、
住まい手さんが
頑張らなくても成立する暮らしです。
・散らかっていても、
視線が逃げる設計
・家事を少し休んでも、
居心地が崩れない動線
・何もしない時間が
許される居場所
それらを、
建築とインテリア空間の力で
支えるように。
光の設計が、感情を左右する
「明るい家にしたいです」
これは、
とても多いご要望です。
しかし、
やまぐち建築設計室では
必ず一歩踏み込んで伺います。
どんな“明るさ”を
想像されていますか?
光には量だけでなく
質があります。
- 直射光
- 反射光
- 拡散光
- 間接光
和モダン住宅では、
すべてを均一に
明るくするのではなく、
場所ごとに光の表情を
変えることを大切にします。
朝の光、夕方の陰影、夜の静けさ。
その変化が、
暮らしに程よいリズムを与えます。
中庭という
「外でも内でもない場所」
中庭は、
和モダン住宅を象徴する
存在にもなります。
しかし、
単なる採光装置ではありません。
中庭がもたらす価値は、
・視線が抜ける
・季節を感じる
・外界と適切な距離を保つ
という、
心理的効果にあります。
完全に閉じない。
完全に開かない。
その絶妙な距離感が、
住まいに深い落ち着きを
生み出します。
インテリアは
「飾る」より「整える」・・・。
和モダン住宅では、
インテリアを主張させすぎません。
・色数を抑える
・素材感を揃える
・余白を残す
住まい手さんの
暮らしそのものが
主役になるようにするためです。
家具や照明は、
生活を引き立てる背景であり、
決して前に出すぎない存在。
その結果、
住んでから
完成していく家になります。
設計とは、
暮らしの翻訳である
ということ。
やまぐち建築設計室では、
設計を
要望を形にする作業
だとは考えていません。
むしろ、
・言葉にならない違和感
・漠然とした不安
・うまく説明できない理想
それらを丁寧に読み取り、
空間に翻訳する
行為だと考えています。
だからこそ、
設計の初期段階では、
間取りの話よりも
暮らしの話をたくさんします。
なぜ、
和モダン住宅は
満足度が高いのか?
住んでからの満足度が高い理由は、
「派手さ」を主張するのではなく
「日々の小さな快適さ」を
積み重ねているからです。
・朝の身支度が楽
・夜の時間が静か
・家に帰るのが苦にならない
こうした感覚は、
図面や写真では
伝わりにくいものです。
しかし、
暮らし始めると確実に効いてきます。
日常を、
少しだけ整える住まいへ
非日常を取り入れるのではなく、
日常の質を程よく上げる。
それが、
やまぐち建築設計室が考える
和モダン住宅の本質です。
住まいは、人生の器です。
だからこそ、
静かで、無理がなく、
長く寄り添える
場所であってほしい。
そんな想いを、
一棟一棟の設計に込めています。
設計相談をご検討の方へ
「なぜか落ち着かない」
「今の暮らしに、少し違和感がある」
その感覚は、
住まいからのサインかもしれません。
言葉にならない段階からでも、
どうぞお気軽にご相談ください。
このブログが、
家づくりや模様替えを考える方の
小さなヒントになれば幸いです。
○関連ブログ
毎日暮らす住まいに、静かな非日常を。日常と非日常を重ねる、上質な住宅設計の視点
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail681.html
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