ブログ・コラム
2026.05.12
コロナ禍の家づくりでいただいた一通のお手紙から考える 「家に帰るのが楽しみになる住まい」とは|建築家が考える、暮らしを整える家づくり
- カテゴリ:
- 住まいと暮らしの考え方
コロナ禍だったころに
家を新築した住まい手さんのお手紙を、
たまたま読み直す機会があり
改めて、
「家づくりで本当に大切なこと」について
考えていました・・・・・。
先日、
コロナ禍の頃に住まいを
新築された
F様ご夫婦から以前いただいたお手紙を
ふと読み返す機会がありました。
〇関連ページ
住まい手のF様からいただいたお手紙
https://www.y-kenchiku.jp/voice_detail21.html
建物のお引き渡しから
数か月後に届いたそのお手紙には、
土地探しのこと。
設計打ち合わせの時間。
工事中の不安。
完成後の日常。

※灯りが漏れる夜の住まいには、
「おかえり」という言葉を使わなくても、
人を迎え入れる力があるのかもしれません
そして、
毎日仕事を終え、
家に帰ってくるのが
楽しみになりました・・・・・。
という言葉まで、
丁寧に綴られていました。
その文章を読み進めるうちに、
当時の打ち合わせの空気感や、
現場で交わした何気ない会話、
完成した住まいの中で
見せてくださった笑顔まで、
遠い記憶がよみがえってきました。
そして改めて思う事も・・・・・。

※畳に腰を下ろす何気ない日常の時間が
少しずつ“心の余白”を取り戻していく
ゆとりのある素材感の提案空間
家づくりとは、
単に建物を完成させることではなく、
“これからの人生を、
どんな環境で過ごしていくのか”を、
住まい手と一緒に
考えていく時間なのだと。
「家を建てたい」の奥にあった、
本当の想い
F様ご夫婦との出会いは、
やまぐち建築設計室の
ホームページからいただいた、
一通のお問い合わせからでした。
「和モダンな家に興味があります」
その一文から始まったご縁。
〇過去ブログ・外部アメーバblog
(打ち合わせ一部始終等)
(仮称)暮らしのシーンに和モダンのエスプリが集う格子の家新築工事中現場、設計デザインのカタチ
https://ameblo.jp/arc22145arc/entry-12928170155.html
けれど、
実際にお会いしてお話を伺うと、
F様ご夫婦が本当に求めておられたのは、
単に“和モダンのデザイン”
ではありませんでした。
仕事から帰った時に、
気持ちがほどけるような空間。
忙しい毎日の中でも、
静かに心が整う暮らし。
家族や友人が
自然と集まりたくなる場所。
歳月を重ねながら、
愛着が深まっていく住まい。
そうした、
“感情としての心地よさ”
を求めておられたように感じます。

※F様ご夫婦と丁寧に積み重ねた「居場所」の
設計思想や、和と現代性が調和する
空間構成が評価され、
建築専門誌『和モダン14|ととのう居場所。』
からも掲載のオファーをいただき掲載。
地域に根差した住宅集
「上質な暮らしを叶える住まい」に掲載

家づくりを考え始めると、
人はたくさんの情報に触れます。
SNSには、
美しく整えられた空間写真が並び、
住宅会社ごとに
「理想の暮らし」が語られる。
けれど情報が増えるほど、
自分たちは、
本当はどんな暮らしをしたいのだろう?
という感覚が、
見えにくくなってしまうことが
あります。
だから私は、
最初の打ち合わせから、
間取りの話を
急ぎすぎないようにしています。
どんな朝を迎えたいのか。
どんな夜を過ごしたいのか。
何に疲れを感じているのか。
どんな空気感に安心するのか。
そうした会話を重ねながら、
住まいの前に、
“暮らし”を整理していく。
それが、
本当に心地よい家づくりに
つながっていくのだと思っています。
土地探しは、
「条件探し」ではなく
「未来の景色」を探すこと・・・・・。
F様ご夫婦との家づくりでは、
土地探しも大切な時間でした。
価格。
広さ。
方角。
利便性。
土地探しでは、
どうしても条件比較になりがちです。
ですが私は、
土地を単なる「数字」や「条件」で
見ないようにしています。
その場所に立った時の空気感。
朝の光。
風の抜け。
周囲との距離感。
窓から見える景色。
庭との関係性。
土地には、
そこに住む人の感情や時間の流れを
左右する力があります。
F様からいただいたお手紙には、
土地の候補が見つかる度に
現地まで足を運んでくださいました
という内容も書かれていました。
現地へ行くたび、
この場所なら、
夕方の光がきれいですね
ここは外から閉じながら、
中庭を開くと落ち着きそうですね
そんな話をしながら、
F様ご夫婦と一緒に
“未来の暮らし”を想像していました。
後にいただいたお手紙には、
私達では判断できない
土地のメリット・デメリットを
教えてくださいました
という言葉もありました。
ですが実際には、
土地の優劣を説明していたというより、
この場所で、
どんな気持ちで暮らせそうか
何が状況を悪化させる要因になるのか
という事柄を一緒に考えていた感覚に
近かったように思います。
打ち合わせで整理していたのは、
「間取り」ではなく「感情」について。
設計打ち合わせでは、
毎回さまざまなお話をしました。
仕事のこと。
休日の過ごし方。
家族との時間。
好きな場所。
落ち着く空間。
将来の暮らし。
その会話を重ねる中で、
少しずつ見えてきたものがあります。
それは、
F様ご夫婦が本当に求めていたのは、
「おしゃれな家」
というより、
“心が穏やかになれる時間”
だったのではないか?
ということです。
お手紙には、
毎回の打ち合わせで、
漠然としたイメージを丁寧に聞き、
具体化してくださいました。
とも書いてくださいました。
設計という仕事は、
単に図面を描くことではありません。
まだ言葉になっていない感覚や想いを、
空間として翻訳していく仕事でもあります。
F様ご夫婦が大切にされていた
「和」の感覚も、
単なる和風デザインではありませんでした。
深い軒の陰影。
木のやわらかな質感。
静かな光。
余白のある空気感。
外と内がゆるやかにつながる感覚。
そうしたものを少しずつ重ねながら、
“帰りたくなる家”を
一緒につくっていきました。
コロナ禍だったからこそ、
見えてきた「家」の意味
F様ご夫婦の家づくりは、
コロナ禍とも重なっていました。
お手紙には、
新型コロナの流行が起こり、
工事の進捗状況が
不安になることもありました・・・・・。
という内容も綴られていました。
あの頃は本当に
社会全体が先の見えない
不安の中にありました。
今の社会情勢もそうですが・・・・・。
だからこそ「家で過ごす時間」について、
多くの人が改めて考えた時期
だったように思います。
家は単に帰る場所ではありません。
心を整える場所。
家族との時間を受け止める場所。
外の不安から少し距離を置き、
自分たちらしさを取り戻す場所。
住まいとは、
人生を支える“環境”なのだと、
改めて感じさせられました。
「家に帰るのが楽しみになりました」
〇完成物件
暮らしのシーンに和モダンのエスプリが集う格子の家
インナーガレージと通り土間のある家
https://www.y-kenchiku.jp/shinchiku_detail41.html
完成後、
F様からいただいたお手紙の中で、
特に心に残っている言葉があります。
毎日仕事を終え、
家に帰ってくるのが楽しみになりました。
この言葉を読んだ時、
私は設計者として、
とても嬉しい気持ちになりました。
住まいの価値は、
豪華さだけで決まるものではありません。
広さだけでもありません。
設備だけでもありません。
「帰りたい」と思えること。
それは、暮らしにとって、
とても大きな豊かさなのだと思います。
お気に入りの玄関。
庭に咲く季節の花。
和と洋が自然に馴染むリビング。
静かな灯り。
落ち着いた陰影。
そうした小さな心地よさの積み重ねが、
人の感情や時間の流れを、
少しずつ整えていきます。
お手紙には、
家族や友人が『素敵なお家やね』と言ってくれます
という言葉もありました。
ですが、その“素敵”は、
見た目だけではないように思います。
そこに流れている空気。
ご夫婦の穏やかな時間。
暮らしの整った静けさ。
そうしたものが、
空間に自然と滲み出ていたのでは
ないでしょうか・・・・・。
家づくりとは「人生を整える時間」
F様は、お手紙の最後に、
これから人生のたくさんのイベントを、
この家と一緒に迎えられることが嬉しい
という想いを書いてくださいました。
家づくりは、
建物を完成させることが
目的ではありません。
建物を建てる、家を建てる事は
あくまでも「手段」です。
その場所で、
どんな人生を重ねていくのか。
どんな空気の中で朝を迎え、
どんな灯りの中で一日を終え、
どんな気持ちで
家族と過ごしていくのか。
住まいは、
人生を飾るためのものではなく、
人生そのものを支える大切な環境
なのだと考えています。
環境は人の心へ影響を与えます。
朝の光。
庭の緑。
静かな陰影。
木の質感。
風の流れ。
そうした環境の積み重ねが、
忙しい日常の中で、
気持ちに余白を
つくってくれることがあります。
だからこそ、
やまぐち建築設計室では、
単に便利な間取りを考えるのではなく、
その場所で、
どんな気持ちで暮らしていくのか?
という“暮らしの感情”までを含めて
設計の工夫を施すように考えています。
F様ご夫婦との
家づくりを振り返りながら、
改めて感じます。
家づくりとは、
図面を整えること以上に、
“これからの人生を整えていく時間”
だという事を・・・・・。
そして住まいとは、
完成した瞬間よりも、
そこで暮らし始めてから、
少しずつ本当の意味で
“家”になっていくのだと思います。
今回のブログが、
これから家づくりを考える方にとって、
「本当に大切にしたい暮らしとは何か」
家造りの意味を改めて見つめ直す
キッカケになれば嬉しく思います。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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