ブログ・コラム
2026.02.26
孤独を設計するという思想 ― 暮らしの輪郭に心がほぐれる、上質な和モダン住宅
- カテゴリ:
- 和モダン思想
孤独を設計するということ。
静けさが、
暮らしの質を決めるという事実。

※家族の居場所を距離感と視界調整で
設計を工夫した和モダン住宅の設計実例。
中庭とつながる大開口のLDKが、
光と木の質感によって心を穏やかに整え
空間を遮断する事も可能な仕掛けを設計。
家づくりを考え始めるとき、
多くの方が
最初に思い浮かべるのは
「間取り」や「広さ」です。
リビングは何畳にするか。
キッチンはアイランドか対面か。
収納は足りるだろうか。
吹き抜けは必要だろうか。
それらは確かに大切です。
しかし、
私は設計の初期段階で、
必ず別の問いも投げかけます。
今の暮らしの中に、
静かにひとりでいられる場所がありますか?
新しい暮らしの空間には
喜怒哀楽によりそう場面があるほうが
良いと思いますか?
少し意外そうな顔をされることもあります。
けれど、
この問いこそが、
住まいの本質に触れる入口だったりします。
なぜ、私たちは日常の中で
疲れているのか?
現代は、
常に「誰かとつながっている」時代です。
仕事では責任ある立場を担い、
家庭ではパートナーや子どもと向き合い、
スマートフォンの向こうでは
絶えず情報が流れ続ける。
充実しているはずなのに、
どこか落ち着かない。
休日であっても、完全に心が休まらない。
その理由の多くは、
人間関係の過密さ、
情報の過密さにあります。
人は社会的存在です。
他者との関わりの中で生きています。
けれど、関わりが濃くなりすぎると、
無意識のうちに緊張が蓄積していきます。
評価されること。
期待に応えること。
役割を果たすこと。
それ自体は素晴らしい営みです。
しかし、常に「誰かの前の自分」でいると、
本来の自分の輪郭が
曖昧になってしまうものです。
だからこそ、
意識的に「孤独な時間」が
大切だと考えています。
孤独とは、孤立ではないということ。
ここで言う孤独とは、
人を遠ざけることではありません。
家族を拒絶することでもありません。
「役割を脱ぐ時間」だということです。
夫でもなく、妻でもなく、
親でもなく、部下でもなく、
上司でもなく、経営者でもない。
ただの「ひとりの人間」として在る時間。
環境心理学の研究では、
人は外部刺激が減少し、
視覚・聴覚・触覚が穏やかになると、
自律神経が整い、
思考の深度が増すことがわかっています。
つまり、
静かな環境は、
精神を回復させるということです。
住まいは、
その環境をつくる最も身近な場です。
本当に豊かな人たちが
大切にしていること・・・・・。
設計のご相談を受けていると、
ある共通点に気づきます。
忙しく働き、
社会的責任を担いながらも、
人生を丁寧に
味わおうとする「住まい手」ほど、
「心の質」
を大切にされています。
広さや設備の豪華さよりも、
・朝の光が気持ちよく入るか
・夜、照明が柔らかく落ちるか
・会話が自然に生まれるか
・ひとりで思索できるか
そうした「体験の質」を重視されます。
それはむしろ、合理的な選択です。
精神が整っていなければ、
どれほど立派な家に住んでも、
本当の安らぎは得られないからです。
絶えず緊張を強いられる空間で
過ごしたいですか?
それとも「住まい」という環境の中では
本能的に、
自然体の自分に戻りたいですか?
静けさを設計するということ。
やまぐち建築設計室では、
空間をある意味で「情報量」
という視点で捉えます。
・視線の抜け方
・天井の高さ
・素材の反射率
・音の響き方
・光の拡散
これらはすべて、
脳への刺激量に関わります。
勿論・・・心にも。
例えば、中庭のある住まい。
外界から守られながらも、空とつながる。
視線が遠くへ抜けることで、
思考も伸びやかになる。
例えば、畳の小上がり。
床に座ることで重心が下がり、
呼吸が深くなる。
例えば、
書斎という小さな籠り空間。
壁に囲まれた安心感が、心を落ち着かせる。
人それぞれに環境が持つ
力の影響は異なります。
これらは単なるカタチのデザインではありません。
心理的範囲も含めた設計の話です。
夫婦の距離を守る家
仲の良いご夫婦ほど、
「一緒にいる時間」と同じくらい、
「それぞれの時間」を大切にされています。
常に同じ空間で過ごすことが
調和ではありません。
適度な距離があるからこそ、
再び向き合うときに新鮮な対話が生まれる。
孤独な時間を持てる家は、
関係を壊すどころか、
むしろ「関係性」を守ります。
奈良という風土
奈良の町並みには、
どこか静かな気配があります。
派手さよりも、陰翳。
強さよりも、深さ。
和モダン住宅の本質は、
装飾ではなく、時間の流れを整えること。
軒の深さ。
木の質感。
柔らかな間接照明。
それらは、
暮らしの速度を緩めます。
家は、社会から帰還する場所だという事。
外では役割を果たす。
内では自分に戻る。
この切り替えがうまくいく住まいは、
人生の質を底上げします。
怒りを持ち帰らない。
疲労を翌日に残さない。
焦りを静める。
その積み重ねが、
仕事の成果にも、
家族関係にも、
静かに影響します。
間取りの前に、価値観を整える
家づくりの本質は、
間取り図に示されるようなカタチや
図面に示される「寸法」だけではありません。
「どんな時間を増やしたいのか。」
ここが定まらなければ、
どれほど洗練されたデザインも、
空虚な箱になってしまいます。
孤独を避けない家。
静けさを味方にする家。
それらの持つ意味は、
本質を求める人のための
「住まい」だという事です。
家は、人生の拠り所であり
在り方を示す場です。
華やかである必要はありません。
けれど、
整っている必要はあります。
孤独な時間が持てる家は、
心を整え、
思考を澄ませ、
夫婦の対話を深めます。
やまぐち建築設計室は、
建物をつくるのではなく、
暮らしの質を設計しています。
まずは、
静かな時間が生まれる空間について
考えてみませんか?
住まい造りについて
少し立ち止まって考えてみたい
そんな方の目に、
そっと届けば幸いです。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
住まいの設計、デザインのご相談は
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