ブログ・コラム
2026.01.25
暮らしが整うと、思考の疲れは静かにほどける・ストレスの正体は「空間の秩序」住まいから考える認知的負荷の改善と所作の設計
- カテゴリ:
- 設計の事・デザインの事
人はどんな空間でストレスを溜めているのか?
暮らしの秩序と所作から考える、
住まいの本質提案。

※ダイニングの奥にI型キッチンを据え、
視線と行動をシンプルに整理したLDK。
迷いの少ない動線と余白のある構成が、
無意識の判断を減らし、
思考が静かに整う空間をつくります。
私たちは日々、
多くのストレスを抱えています。
仕事の責任、
人間関係、情報過多、時間の不足。
しかし、
住まいの相談に来られる方と
丁寧に話を重ねていくと、
その原因は「忙しさ」や「仕事量」
だけではないことが、
次第に見えてきます。
むしろ多くの場合、
ストレスは、
無意識のうちに身を置いている
現在の住まいの空間状態から
生まれている・・・。
そう感じる場面が少なくありません。
人が最もストレスを
感じやすいのは
選択を迫られ続ける空間です。
決定疲れ(decision fatigue)
という概念があります。
人は一日に数万回もの
小さな判断をしており、
その積み重ねが
集中力や感情の安定を奪っていく、
という考え方です。
実は住まいの中には、
この「決定疲れ」を
加速させる要素が数多く潜んでいます。
・どこに物を置くか、毎回迷う
・動線が定まらず、体が無意識に緊張する
・視界に情報が多く、脳が休まらない
・次の行動を考えながら、常に小さな判断をしている
こうした状態が続く空間に身を置くと、
人は知らず知らずのうちに
慢性的な疲労状態に入っていきます。
「何もしていないのに疲れる」
「家にいるのに気が休まらない」
その違和感は、
性格だけの問題でも、
気合い不足でもありません。
空間が、
人に判断を強い続けている
状態だということです。
ストレスは「散らかり」よりも
「秩序の欠如」から生まれるということ。
多くの人は、ストレスの原因を
「片付いていないから」
「物が多いから」と考えます。
しかし、実際には
多少物が多くても、
ストレスを感じにくい住まいは
存在します。
逆に、
一見すっきりしているのに、
なぜか落ち着かない空間もある。
この違いを分けているのが、
秩序がその人の暮らしにおいて
仕組みとして
成立しているかどうかです。
・物の量ではなく、
居場所が決まっているか
・片付けなくても、
自然と整う流れがあるか
・動線と収納が、
行動と一致しているか
秩序とは、
頑張って維持する状態
ではありません。
何も意識しなくても、
そうなってしまう状態を指します。
この秩序が欠けていると、
人は毎日、小さなストレスを
積み重ねていきます。
行動と空間がズレると、
人は無意識に疲れるということ。
人の行動は
「意思」よりも「環境」に
強く影響されるとされています。
つまり、
・行動しづらい空間ではやる気は削がれ
・迷いの多い空間では判断力が鈍り
・落ち着かない空間では
感情が荒れやすくなる
これは意志の弱さではありません。
人間の脳の構造そのものです。
例えば、
・帰宅後、
荷物を置く場所が定まらない
・キッチンでの動作が
毎回少し遠回りになる
・洗濯や片付けの流れが
途中で途切れる
こうした小さなズレが、
一日の終わりには
大きな疲労として現れます。
住まいとは、
所作を整えるための「場」です
所作とは、
歩く、座る、手を伸ばす、
振り返る、といった
無意識の動きの連なりです。
上質な住まいは、
この所作が驚くほど自然に、
美しく流れます。
・立ち止まる場所に自然と余白がある
・座る位置に安心できる視線と光がある
・動線に無理がなく体が緊張しない
この状態が続くと、
人は次第に「急がなくてもいい」
感覚を取り戻します。
これは副交感神経が
優位になる環境です。
つまり住まいは、
人の自律神経に直接働きかける
存在でもあるのです。
日常が整うと、
人生の判断が静かになるということ。
住まいが整うと、
変わるのは「感情」だけではありません。
判断のスピードと質も変わります。
・焦って決めなくなる
・他人の基準に振り回されにくくなる
・自分にとっての
適切さが分かるようになる
これは
認知資源が回復している状態に
近いものです。
暮らしの中で無駄な判断が減ると、
人は本当に大切なことに
思考を使えるようになります。
思考に余裕が生まれる状態
という事です。
家づくりの目的は、
「生活を便利にすること」
ではありません。
暮らしを、
持続可能な状態に整えることです。
便利さだけを追い求めた住まいは、
往々にして情報量が多く、
刺激が強くなりがちです。
その結果、
・便利なのに疲れる
・快適なはずなのに落ち着かない
という矛盾が生まれます。
静かな秩序がある住まいは、
人を心地よく誘う・・・・・。
誤解を恐れずに言えば、
本当に整った住まいは、
人を甘やかしません。
むしろ、
・無駄なことをしなくて済む
・本質的な行動に集中できる
・自分の基準を保ちやすくなる
結果として、
仕事の質も、人間関係の安定度も、
確実に変わっていきます。
これは派手な変化ではありません。
しかし、長い時間をかけて、
人生の輪郭そのものを
良い意味で変えていく力があります。
住まいは、人生の「速度」を
決めるということ。
私たちは無意識のうちに、
空間が許す速度で生きています。
せかされる空間では、
どんなに意識しても、
心は急ぎます。
落ち着いた秩序のある空間では、
自然と呼吸が深くなり、
判断が静かになります。
ホテルのラウンジや美術館、
メンターと過ごしている時は
気持が穏やかに
変化してっていませんか?
どんな速度で生きたいのか。
どんな状態で一日を終えたいのか。
その答えは、
間取りや素材以上に、
空間に込められた秩序と
所作の設計に現れます。
これから住まいを考える方へ
新築であれ、リフォームであれ、
リノベーションであれ、
住まいを見直すことは、
人生を立て直すための静かな機会です。
・今の暮らしは、判断を減らしているか
・行動は、空間に支えられているか
・所作は、自然に整っているか
もし一つでも引っかかるなら、
それは住まいが、
あなたを責めているのではなく、
整え直すタイミングを
知らせているのだと思います。
人は、環境によって変わります。
そして、住まいは
最も長く身を置く環境です。
だからこそ、
暮らしの秩序を整えることは、
生き方を押し付けることではありません。
本来の自分に戻れる状態を、
空間として用意すること。
それが、やまぐち建築設計室の考える
住まいづくりです。
下記に直近半年の間にいただいたご質問を
お客様にもご了承いただき、
要約してまとめました。
皆様のご参考になれば幸いです。
Q1. 家にいるのに、
なぜかストレスが溜まるのはなぜですか?
A.空間が無意識に「判断」や「緊張」を
強いている可能性があります。
人は、視界に入る情報が多い空間や、
動線が定まらない環境にいると、
知らず知らずのうちに小さな判断を繰り返しています。
この状態が続くと、脳が休まらず
慢性的な疲労やストレスにつながります。
Q2. 散らかっていなくても
落ち着かない家があるのはなぜですか?
A2.見た目ではなく、
「暮らしの秩序」が整っていないからです。
物が少なくても、
・動線と行動が噛み合っていない
・収納と使い方が一致していない
・視線の抜けや余白が考えられていない
こうした状態では、人は無意識に疲れます。
大切なのは片付いているかどうかではなく、
何も考えなくても
自然に整う仕組みがあるかです。
Q3. 暮らしの秩序とは何を指しますか?
A3.行動・動線・収納・視線が
一貫している状態を指します。
暮らしの秩序とは、
「頑張って整えること」ではなく、
整えようとしなくても
整ってしまう状態のことです。
たとえば、
帰宅 → 荷物を置く → 手を洗う → くつろぐ
この流れが無理なくつながっていると、
人はほとんどストレスを感じません。
Q4. 住まいは本当に心理状態に影響しますか?
A4.はい。住まいは自律神経や
思考に大きく影響します。
心理学的にも、人は
環境によって感情や行動が左右されることが
分かっています。
光・音・視線・距離感が整った住まいでは、
副交感神経が優位になり、
落ち着きや集中力が自然と回復します。
Q5. 新築とリノベーション、
どちらが暮らしを整えやすいですか?
A5.どちらが正解というより、
「設計の視点」が重要です。
新築でも暮らし方を整理せずにつくると、
住みにくさを抱えることがあります。
一方で、リノベーションでも、
生活動線・所作・秩序を丁寧に読み解けば、
非常に整った暮らしは実現可能です。
重要なのは、建物より先に
「暮らしの構造」を考えることです。
Q6. 忙しい共働き家庭でも、
落ち着いた暮らしは可能ですか?
A6.可能です。むしろ忙しい方ほど、
空間設計の影響を強く受けます。
時間に追われる日常では、
一つひとつの小さなストレスが
積み重なりやすくなります。
だからこそ、
・移動距離が短い
・判断が少ない
・片付けに迷わない
こうした住まいは、
日々の消耗を確実に減らしてくれます。
Q7. 暮らしが整うと、
仕事や人生にも影響しますか?
A7.はい。判断力と集中力が変わります。
住まいの中で無駄な判断が減ると、
人は本当に大切なことに
思考を使えるようになります。
結果として、
・仕事の質
・人間関係の余裕
・人生の選択の精度
これらが変化していきます。
Q8. これから家づくりを考える際、
最初に考えるべきことは何ですか?
A8.間取りではなく、
どんな状態で一日を終えたいかです。
・夜、どんな気持ちでソファに座りたいか
・朝、どんな光で目覚めたいか
・家に帰ったとき、どんな呼吸をしたいか
そのイメージが、
住まいづくりのすべての判断基準になります。
今回の投稿が、
blogをご覧になられている皆さんの
暮らしを見つめ直す
きっかけになれば幸いです。
○関連blog
LDKとキッチンだけにとどまらず、 暮らしの心理を設計するということ・環境心理学から読み解く、心が静かに整う住まいの本質
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail702.html
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奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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