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ブログ・コラム

2026.01.24

食卓の静けさが、暮らしの質を決める。建築家が考える、和モダン住宅とテーブルウェアの設計思想

カテゴリ:
暮らしの事

テーブルウェアとは何か?

食事の時間を設計する最も身近な建築

 

住まいを考えるとき、

人はまず「間取り」や「デザイン」、

「性能」に目を向けます。

 

けれど、暮らしの質を

左右しているものは、

必ずしも大きな要素だけではありません。

 

毎日の生活の中で、

私たちが最も頻繁に触れ、

最も長く向き合っている

暮らしの時間に関する「設計物」。

 

それが、テーブルウェアです。

 

和モダンのダイニングに整えられたテーブルウェア。 黒と生成りを基調にした器構成の食卓で、箸は日本文化に則り横向きに配置され、箸先を左にして箸置きに正しく置かれている。 器・箸・余白が静かに調和し、食事の所作まで美しく整える設え。

※器の配置や箸の置き方には、
その家が大切にしている「暮らしの姿勢」が表れます。
日本文化に基づいた所作を丁寧に整えることで、
食卓は単なる食事の場ではなく、
日常を静かに調律する空間へと変わっていきます。

 

 

 

テーブルウェアとは何か?

単なる食器ではない存在・・・・・。

テーブルウェアとは、

皿や椀、カップといった

食器だけを指す言葉ではありません。

 

・料理を受け止める器

・手に触れる質感

・食卓に生まれる余白

・食事の所作や会話の時間

 

それらすべてを含んだ、

食事の時間そのものを構成する

道具一式を指します。

 

建築的に言い換えるなら、

テーブルウェアとは、

食事という行為のために用意された、

最小単位の空間設計

なのです。

 

食事の時間は、なぜ大切なのか?

心理学から見た「食卓」の意味

 

心理学の分野では、

食事の時間は単なる栄養補給ではなく、

・安心感の回復

・感情の整理

・人間関係の安定

に深く関わる行為だとされています。

 

特に「環境心理学」では、

人は無意識のうちに

空間から感情の影響を

受けていることが分かっています。

 

・落ち着いた色調

・過度な刺激のない質感

・心地よい余白

 

こうした要素が整うことで、

人の脳は「安全」「休息」の

モードに切り替わります。

 

食事の時間に、

なんとなく落ち着く、

自然と会話が穏やかになる。

 

その背景には、

食事によって満たされる以外にも

視覚・触覚・音といった感覚情報が、

確実に影響しているのです。

 

器が変わると、心の状態が変わる・・・。

 

同じ料理でも、

・白磁の皿に盛るのか

・土ものの器に盛るのか

・テーブルコーデがどうなのか?

・誰とどのような空間で食事をするのか?

 

それだけで、

受け取る印象は大きく変わります。

 

これは「認知心理学」でいう

フレーミング効果の一種です。

※認知バイアス

 

人は、料理そのものではなく、

料理が置かれた「文脈」も一緒に味わっています。

 

つまり、

テーブルウェアは、

料理の味を変えるのではなく、

味わい方を変えているのです。

 

和モダンの住まいとテーブルウェアの関係

 

和モダンの考え方に触れた住まいが

大切にしているのは、

・派手さ

・情報量

・主張の強さ

ではありません。

 

むしろ、

・静けさ

・余白

・光と影の移ろい

といった、

状態としての美しさです。

 

テーブルウェアでも

同じ考え方で選ぶことが基本です。

 

和モダンに合う器とは何か

和風でも、モダンでもない・・・・・。

 

和モダンに合う器とは、

「和柄」や「伝統文様」が

施されたものではありません。

 

・色数が抑えられている

・光を反射しすぎない

・手に取ったとき、温度を感じる

 

そうした器です。

 

白、生成り、グレージュ、墨色。

このあたりの色調は、

和モダンの建築空間と

非常に相性が良いかと考えています。

 

なぜなら、

空間と器が同じトーンの

沈黙を持つからです。

 

家族構成で変わる、器の正解

 

テーブルウェアに

「万人にとっての正解」はありません。

 

夫婦二人暮らしの場合

・器を揃えすぎない

・少しずつ選ぶ余地を残す

静かな時間を楽しむための

器構成が向いています。

 

子育て世代の場合

・軽さ

・割れにくさ

・扱いやすさ

これらが最優先ではないでしょうか?

ただし色と質感を揃えることで、

生活感は自然と抑えられます。

 

二世帯・多人数の場合

・主菜皿は統一

・副菜や小物で変化

統一と変化のバランスが、

暮らしのストレスを減らします。

 

平日用と来客用を分けない理由

 

間取りの構成や暮らし方を

整える打ち合わせの時間、

よくある質問に、

「来客用の器は必要ですか?」

というものがあります。

 

やまぐち建築設計室では、

完全に分ける必要はないと

考えています。

 

なぜなら、

使われない器は、

日常の整理収納にとって「ノイズ」になるからです。

 

おすすめは、

日常の器をベースに

小皿、トレイ、箸置きで「重ねる」

という考え方。

 

これは建築でいう、

中間領域・可変性の発想と同じです。

 

建築と連動するテーブルウェア設計

 

やまぐち建築設計室では、

テーブルウェアを「後付け」で考えません。

 

ダイニングテーブルとの関係

 

・木のテーブル器は静かに

・石・セラミック器は柔らかく

 

日常の暮らしに

必要位以上のノイズが生まれないように

素材同士が競わないことが重要です。

 

そういう状態が、

どのような状態なのか、

小さなストレスが

蓄積されていく雰囲気が伝わると思います。

 

照明計画との関係

・間接照明陰影が出る器

・ペンダント照明マットな質感

光を映すのではなく、

光を受け止める器を選びます。

 

テーブルウェアは

「小さな建築」であるという事。

 

建築が人の行動を整えるように、

器や食事の時間もまた、

所作を整えます。

 

・音が静か

・手に馴染む

・安定感がある

 

それだけで、

人は無意識に丁寧な動きを選びます。

 

これは心理学でいう

行動誘導(アフォーダンス)の一種です。

 

器が人の動作を導いている状態です。

器が整うと、

食事の時間も整うということ。

 

住まいは、

大きな設計だけで

完成するものではありません。

 

毎日の食卓に置かれる一枚の器や

カトラリー類が、

心の速度を少し落とし、

呼吸を整え、

一日の終わりを穏やかにします。

 

暮らしの豊かさの本質とは、

「見せる美しさ」ではなく、

在り方としての美しさが

無理なく自然な「ふるまい」で

心地よく過ごす時間が存在する事。

 

テーブルウェアは、

そのためのピースなのだと、

やまぐち建築設計室では考えています。

 

私たちは、

住まいを「暮らしの場」として

設計しています。

 

そして、

場もまた、暮らしそのものです。

 

食卓の風景を思い浮かべてみてください。

そこにはどのような時間が

流れていますか?

 

今回の投稿が、

ご自身の暮らしを見つめ直す

きっかけになれば幸いです。

 

○関連blog

インテリアという暮らしの大切なエッセンス、日々過ごす空間を丁寧に考える事で生まれる日常の質感のデザイン。

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail262.html

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

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