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ブログ・コラム

2026.01.20

家族の距離を整える新築住宅の間取り設計|建築家が考える「関係性から始める住まい」

カテゴリ:
間取り・動線・家事・プラン

暮らしを図面に落とす前に

家族の距離を、間取りで設計するように。

 

新築住宅における「暮らしの関係性」という視点

 

暮らしを図面に落とす前に。
一度、立ち止まって考えてみませんか。

あなたの家は、
家族の会話を「増やす間取り」でしょうか?

それとも、
知らないうちに

距離をつくる間取りでしょうか。

 

中庭の水盤と植栽をガラス越しに取り込み、黒い鉄骨階段がリビングを横断する和モダンのLDK。段差でつながる小上がり和室と、グレージュのソファ・ガラスのローテーブルが静かな陰影をつくり、家族の気配が自然に交わる“関係性を設計した”住宅空間。

※中庭の水と緑、リビング階段、和室のつながりを提案。
「会話が生まれる間取り」は、広さよりも

通り道と気配で決まります。

 

 

住まいに関してだけではなく

暮らしそのものに関して、
設計前の対話を大切にしています。

 

間取りで、

家族関係は変わりますか?

 

住まいの相談の場で、

ときどき投げかけられるこの問いに、
迷わずこう回答します。

 

間取りは、家族の関係性を

確実に形づくります。

 

ただし、

この言葉は「仲良くなる家」を

約束するものではありません。

 

建築家として伝えたいのは・・・・・。

間取りは感情を「直接」

つくるのではなく、
感情が生まれる「条件」を生み出す

ということです。

 

心理学の世界には、
「人は性格よりも環境に影響される」

という前提があります。

 

同じ人でも、

置かれた環境が変われば、

行動も感情も変わる。

住宅は、その環境の最たるものです。

 

新築住宅は、とりわけ強い。

なぜなら、
新築は「今の生活に合わせる」だけでなく、
これから十年二十年の暮らし方を、

先回りして規定してしまうからです。

 

家の間取りは「人生の運用設計」ということ。

新築は、比較的自由度が高い。
裏を返せば、

「決められることが多い」。

 

・玄関の位置
・廊下の有無
・階段の位置
LDKの向き
・洗面と脱衣の分離
・水回りの回遊
・個室の配置
・収納の置き方
・中庭・テラス・縁側の扱い
・窓の取り方
・音の逃がし方
・視線の切り方

 

これらはすべて、

デザインや利便性の話に見えて、
実は「関係性の運用設計」なんです。

家族の距離感を、
努力」に任せない。
運」に任せない。
その日その場の気分」に任せない。

住まいの仕組みとして、

自然に整う方向へ寄せていくように。

 

やまぐち建築設計室の住宅設計は、
この考え方を

基盤にしています。

 

「便利な間取り」が、

暮らしを分断することもあるということ。

現代の住まいは、

かつてないほど機能的です。

 

個室は確保され、
収納は充実し、
動線も無駄なく整理されている。

一見すると、

理想的な住まいに思えるかもしれません。

 

しかし・・・・・。
その「整いすぎた合理性」が、
家族の交流を静かに

削いでいるケースが少なくないのです。

 

ここで大切な観点があります。

 

人は「会うから話す」のではなく、

「会ってしまうから話す」ということ。

日常の会話の多くは、
意志よりも偶然から生まれます。

 

・たまたまキッチンへ行ったら、誰かがいた
・洗面で歯を磨くタイミングが重なった
・ソファに座った瞬間、視線が合った
・通りすがりに「おかえり」が出た

 

この「偶然の接点」が、
関係性の温度を保っています。

逆に、偶然が起きにくい間取りは、
会話の発生確率を

静かに下げていきます。

 

玄関から個室へ、

リビングを通らない動線・・・・・。

例えば、
玄関から廊下を通り、

そのまま個室へ入れる間取り。

 

帰宅しても

家族と顔を合わせる必要がなく、
生活の重なりは最小限で済みます。

 

忙しい暮らしの中では、
一見すると「気楽で効率的」に見える。

 

ですがこの動線は、
家族が自然に交わる機会を、

意図せず減らしてしまうことがあります。

 

・今日あった出来事
・表情の変化
・言葉にしない気配

 

それらは、
会話を「しよう」としなくても
「同じ場を通る」ことで

共有されてきたものだからです。

 

心理学でいう「摩擦(フリクション)の設計」

 

行動科学では、
人は意志よりも

摩擦に支配されると言われます。

 

疲れているときほど、
人は「最短で終わる行動」に流れます。

 

帰宅して、
わざわざリビングへ寄るには摩擦がある。
だから個室へ直行する。

 

これは性格ではなく、
環境の設計結果です。

 

新築の間取りは、
この「摩擦」をどこに置くかで、

日常を大きく変えます。

 

間取りは「暮らし方」を無言で

指示しているということ。

住宅の間取りは、

住まい手に多くを語りません。
けれど実際には、

毎日の行動をある意味では

「環境」という意味で誘導しています。

 

・ここを通る
・ここでは立ち止まらない
・ここは長居する場所

 

住まい手となる方は無意識のうちに、

設計された動線に沿って

暮らし始めます。

 

つまり、
間取りは生活を「選ばせている」

のではなく、
決めてしまっている事もあるのです。

 

やまぐち建築設計室が

大切にする言葉があります。

 

余白とは、

空間の余りではなく

「選択肢が残っている状態」であるという事。

 

余白とは、
ただ広いことでも、

空いていることでもありません。

 

・今日はリビングで話したい
・今日は静かに過ごしたい
・近くにいたい
・でも干渉はされたくない

 

そういう微妙な選択ができること。
それが、暮らしの余白です。

 

間取りが一本道だと、
暮らしは「型」になります。

型は、最初は楽です。
しかし、生活が変化したときに、

違和感として現れます。

 

新築で失敗しやすい

「間取りと暮らし」の落とし穴・・・。

 

設計者の判断で決まる、

家族の距離の「未来」。

 

ここからは、より具体的に。
新築で起きやすい「落とし穴」を、

設計判断として整理します。

 

玄関は、家族関係の「入口」である

玄関は、
単なる靴を脱ぐ場所ではありません。

 

心理的には、
外の世界から内の世界へ切り替える

境界」です。

 

この境界の設計が雑だと、
暮らしは乱れます。

新築でよくある誤解:「玄関は最小でいい」

 

確かに、

面積配分として玄関は削られがちです。
ですが、玄関が小さすぎると、

 

・帰宅時に渋滞する
・動作が荒くなる
・物が溢れる
・気持ちが整わない
・家の第一印象が落ちる

 

結果として、
家に入った瞬間から「余裕」が削られる。

余裕が削られた状態では、
人は会話よりも「処理」を優先します。

 

つまり、関係性の温度が下がる。

玄関は、

家族関係の入口です。
所作」が整うだけで、

暮らしの質が上がります。

 

「ただいま動線」は、

会話を増やすか減らすかを決める。

 

新築で必ず設計すべきは、
帰宅直後の流れです。

 

・帰宅手洗い着替えリビング
・帰宅リビング手洗い
・帰宅直行で個室

 

どれが正しいか、ではありません。

 

重要なのは、
あなたの暮らしにとって

「自然な流れ」がどれかということ。

ただし、

多くの家庭で共通するのは、
帰宅直後は疲れている。

だから人は最短行動に流れる。

このとき、
リビングを経由しなくても成立する家は、
関係性が薄まりやすい。

 

提案:玄関~リビングに

「ワンクッション」をつくる

 

やまぐち建築設計室では、
玄関とリビングを直結させるのではなく、
中間領域を挟むことがあります。

 

・土間の余白
・小さなカウンター
・コート掛け
・手洗い
・収納
・小さな腰掛け

 

目的は、収納ではありません。

帰宅後に「止まる場所」をつくること。

止まる場所があると、
人は一呼吸します。
一呼吸すると、声が出ます。

「ただいま」が出る家は、
間取りの仕組み」でできています。

 

水回りは「家事」ではなく

「家族の摩擦」を設計する場所。

 

新築でよくあるのが、
水回りを家事効率だけで

組み立てることです。

 

もちろん、効率は大事です。
ただし、効率だけを追うと、
家族の摩擦が増えることがあります。

 

例えば、
洗面・脱衣・浴室が一体化していると、
誰かが入浴中、

別の誰かが歯を磨けない。

 

朝の支度が重なると渋滞が起きる。

渋滞が起きると、
言葉が荒くなり、
空気が悪くなる。

 

つまり、
水回りは感情の摩擦が

起きやすい場所です。

 

提案:洗面と脱衣を分けるのは

上質さの基本設計だという事。

 

洗面と脱衣を分ける。
これは単なる流行ではありません。

 

・生活の重なりを捌く
・プライバシーを守る
・家族のストレスを減らす
・朝夕の衝突を防ぐ

 

その結果として、
暮らしの温度が安定します。

上質さとは、
見た目の豪華さではなく、
摩擦が少ないことです。

 

階段の位置は

「家庭の空気の流れ」を決める

 

階段は、

ただ上下階をつなぐ装置ではありません。

心理的には、

家の中の「流れ」そのものです。

階段位置には大きく二つあります。

 

・玄関近くの階段(個室へ直行しやすい)
・リビング階段(必ず家族と交差する)

 

リビング階段は賛否があります。
「音が気になる」「冷暖房が」と

言われることもある。

 

しかし、ここで問うべきは、
性能の対策が

可能かどうかだけではありません。

 

家族関係をどう設計するべきなのか?

ということです。

 

提案:リビング階段の本質は

「監視」ではなく「気配の共有」。

 

リビング階段の良さは、
子どもを監視することではありません。

 

・帰宅がわかる
・出かける気配がわかる
・表情が見える
・声をかけやすい

つまり、
関係性が途切れにくい。

一方で、
常に視線が刺さる家になると、
窮屈さが出ます。

 

そこで、
やまぐち建築設計室では
視線を「抜く設計」を併用します。

 

・格子
・段差
・袖壁
・天井の段差
・照明の陰影
・家具配置
・中間領域

 

リビング階段を
「つながり」だけで終わらせず、
「自由」も成立させる。

 

このバランスが、

暮らしを設計するうえで大切だと

考えています。

 

LDKは「広さ」より「関係の温度」を整える。

LDKが広いほど良い、
この発想も、半分正しく、半分危うい。

 

広さがあると、
余裕が生まれます。

 

ただし、広すぎると
家族の距離が遠くなり、
会話が減ることもあります。

 

ここで必要なのが、
場の分節」です。

 

提案:一体空間でも「居場所」を複数つくる。

 

・食べる場所
・くつろぐ場所
・作業する場所
・一人になれる場所
・家族が集まる場所

 

LDKを一体にしつつ、
心理的な居場所を分ける。

 

やまぐち建築設計室では、
間取り図だけでなく、
家具・照明・視線まで含めて
暮らしの編集」を行います。

 

個室は「広さ」より

「切り替えやすさ」で決まる

 

個室は大きいほど良い。
これも、半分正しく、半分危うい。

 

個室の価値は、

 

・こもれること
・集中できること
・整えられること

 

にあります。

ただし、個室が孤立すると、
生活が分断されます。

 

提案:個室は「近すぎず、遠すぎず」の距離を読む。

 

・リビングから一枚挟む
・廊下を短くする
・視線は切る
・気配は残す
・音は調整する

 

「気配はあるが干渉はしない」
この関係性が、
成熟した暮らしをつくります。

 

新築で「会話が増える家」に共通する設計、

頑張らなくても整う仕組み

 

ここまでの話をまとめると、
会話が増える家には共通点があります。

 

それは、
家族に努力を求めないこと。

頑張らなくても、
自然に接点が生まれること。

 

そのための設計は、
派手な仕掛けではありません。

 

・通り道の設計
・止まる場所の設計
・視線の設計
・音の設計
・光の設計
・温度の設計
・居場所の設計

 

住まいは、
「暮らし方の編集」を

内包した環境だという事。

 

光と影は、会話の「質」を整える

会話の量が増えても、
空気が落ち着かなければ

意味がありません。

 

落ち着きは、
空間の「明るさ」ではなく、
陰影から生まれます。

 

・間接照明
・天井の段差
・壁の陰影
・窓の位置
・外部の緑

 

光が整うと、人の呼吸が整います。
呼吸が整うと、
言葉が柔らかくなります。

 

設計は、暮らしの循環を

整える仕事でもあります。

 

住まいの質は

「判断回数」を減らすことで上がる。

 

心理学に「意思決定疲れ」という

概念があります。

 

最近は「脳疲労」という言葉も

知られるようになりましたが

一緒の内容ではありません。

 

※今回その説明は省略します

 

人は一日に何度も判断を繰り返すと、
心が疲れていきます。

 

家が散らかるのも、
家事が辛いのも、
片づけが続かないのも、
多くは「判断回数が多すぎる」からです。

 

・どこに置くか迷う
・動線が遠い
・片づけの手順が多い
・家族でルールが共有されていない

 

新築でできることは、
この判断回数を減らすことです。

収納は量ではなく、
置き場所の必然性」で設計する。

 

動線は短さではなく、
迷わなさ」で設計する。

 

そうすると、
整理収納は整い始めます。

 

設計のご相談前に多いお問合わせ

Q1. 会話が増える間取りは、

リビング階段が必須ですか?

 

必須ではありません。
ただし「家族が交差する仕組み」は必要です。
リビング階段はその一つの解であり、
視線・音・温熱の設計とセットで成立します。

 

Q2. 子ども部屋は広く取るべきですか?

広さより「位置」と「切替え」です。
孤立させない距離感と、

集中できる静けさを両立させます。

 

Q3. 玄関から直接リビングは避けた方が良いですか?

 

避ける/避けないではなく、
ワンクッションを

どう仕込むかが重要です。
止まる場所があると、暮らしは整います。

 

Q4. LDKは広いほど良いですか?

 

広さは武器になりますが、
居場所が分節されていないと

会話は減ります。
一体空間でも「居場所を複数」

つくることが鍵です。

 

Q5. 洗面と脱衣は分けるべきですか?

 

重なりが多い家庭ほど

効果が大きいです。
時間帯の渋滞が減ることで、

家の空気が穏やかになります。

 

Q6. 間取りはどの段階で

プロに相談すべきですか?

 

要望が固まり切る前が最適です。
要望の前に「暮らしの軸」を

整理することで、
最適解の家となる確率が上がります。

 

Q7. 間取りで「プライバシー」と

つながり」は両立できますか?

 

できます。
視線は切り、気配は残し、音は調整する。
この繊細な設計が両立の鍵です。

 

Q8. 上質な暮らしを間取りで実現するコツは?

 

豪華さではなく、摩擦を減らすこと。
判断回数を減らし、動線を整え、

陰影をつくる。
これが「上質さ」の基盤です。

 

間取りに正解はない。

ただし「考える順序」はあるということ。

 

どんなに美しい住宅でも、
どんなに高性能でも、
暮らしに違和感があれば、

良い住まいとは言えません。

 

間取りに正解はありません。
けれど、

暮らしを考える順序、

そしてそれぞれの家族と暮らしにとって

最適解は存在します。

 

設備や広さの前に、
家族の距離感を考える。

その一歩が、
住まいの質を大きく変えていきます。

 

やまぐち建築設計室では

設計前の対話を、住まいづくりの起点に

「どんな家を建てたいか?」

よりも先に、
「どんな暮らしを続けたいか?」を

伺います。

 

間取りは、その状態を生み出す為の

手段に過ぎません。

 

関係性から考える住まいづくり。

それを、一つひとつ

丁寧に設計しています。

 

暮らしを、プランとして

図面に落とす前に
言葉を整える時間を持ちませんか?

 

今回のブログが、
住まいと暮らしを見直す
小さなきっかけになれば幸いです。

 

○関連blog

小さなストレスを設計で手放す。毎日が穏やかに整っていく心地よさから考える間取りと家づくり。

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail685.html

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

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