ブログ・コラム
2025.12.18
パントリーは本当に必要か。 建築家が紐解く、上質な住まいを支える収納と家事動線の設計と計画性。
- カテゴリ:
- 収納・片付け・暮らし・インテリア
パントリーは本当に必要か?
建築家が考える、
収納・家事動線・間取りを整える
住まいの設計思想。
家づくりを考え始めたとき、
多くの方が一度は思い描くのが
「パントリーのある暮らし」
ではないでしょうか。

※キッチンの家事動線上に
自然に組み込まれたパントリーは、
使う場所・しまう場所が明確に整理された設計。
見せない収納として
空間の美しさを保ちながら、
日々の家事を滞りなく支える、
静かに機能する存在となるように
ご提案させていただきました。
雑誌やSNSに並ぶ、
美しく整ったパントリー。
整然と並んだ食品ストックや
生活用品を目にすると、
「これが理想の住まいなのだ」と
感じてしまうのも
無理はありません。
しかし、
やまぐち建築設計室が
設計の現場で
何より大切にしているのは、
流行しているかどうか?
ではなく、
そのご家族の暮らしに
本当に必要かどうか?
という視点です。
パントリーは確かに便利な収納です。
けれど同時に、
使い方を誤ると「暮らしの質」を
下げてしまう
要素にもなり得ます。
パントリーとは
「収納量」を増やす装置ではない。
パントリーとは、
食料品や日用品、
キッチン周りの備品などを
まとめて収納する
空間のこと。
多くの場合、
キッチンに隣接して
設けることが多いものです。
本来の役割は、
キッチンを美しく、
そして機能的に保つための
調整空間。
つまり、
「たくさん入るかどうか」ではなく、
「暮らしの流れを乱さないかどうか」
が設計の本質になります。
暮らしやすい家、落ち着く住まい
家事が整う住まい、
上質な住まいほど、
見えない場所の設計が
暮らしの質を左右する
ということを、
住まい手さんの暮らしの内容と
数多くの設計経験から
実感しています。
パントリーの種類と、
設計上の本質的な違い。
個室タイプのパントリー
半畳〜2畳ほどの
独立した空間として設ける
パントリーです。
収納量は多く、
備蓄やまとめ買いに適しています。
ウォークインタイプ
収納量重視の構成。
一方で「行って戻る」という
動線になるため、
配置を誤ると
家事効率を下げてしまいます。
ウォークスルータイプ
様々な出入口と
キッチンをつなぐ“裏動線”として
機能する構成。
買い物→収納→キッチン
という流れが自然につながり、
設計次第では非常に
完成度の高い家事動線になります。
壁面収納タイプのパントリー
キッチンの壁面を
活用した収納形式です。
収納量は控えめですが、
- 管理しやすい
- 出し入れがしやすい
- 無駄が生まれにくい
という特長があります。
上質な暮らしほど、
「持たない設計」
「管理できる量」が美しさにつながる。
この考え方に共感される方には、
壁面収納のパントリーは
非常に相性の良い選択です。
パントリーのメリットと、
その裏側にある注意点。
まとめ買い
備蓄ができるという利点
家族人数が多いご家庭や、
忙しく日常の買い物頻度を
抑えたい方にとって、
パントリーは確かに心強い存在です。
また、
防災備蓄を日常収納に
組み込むという点でも有効です。
「収納が増えることで起きる問題」
一方で、設計相談の現場では
こんなことも
考える必要があります。
- 何をどこに置いたかわからない
- 賞味期限切れが増える
- 同じものを何度も購入してしまう
これは収納不足ではなく、
収納計画と暮らし方が
一致していない状態です。
収納は「量」ではなく、
内容を把握できるかどうかが
価値を決めます。
皆さんの現在の暮らしでは
どうですか?
冷蔵庫の中身を考えてみると
分かりやすいかと思います。
建築家が考える、
パントリー設計で最も重要な視点。
やまぐち建築設計室では、
パントリーを検討する際、
必ず次の問いを重ねます。
- 何を収納したいのか
- どれくらいの量が必要なのか
- 誰が管理するのか
- その動作は家事動線と調和しているか
- 現時点の暮らしでも
「物の把握」は出来ているのか
この整理をせずに
新しい暮らしで
パントリーを設けた場合は、
いずれ「使われない収納」に
なってしまう確率が上がります。
棚の奥行きは30〜45cm程度が適切で、
換気・湿気対策も不可欠です。
また、
扉についても
「美観」だけでなく「使い勝手」を
優先すべきだと考えています。
パントリーが向いている人、
向いていない人・・・・・。
向いている方
- 家族人数が多い
- まとめ買いが多い
- キッチンを常に端正に保ちたい
あえて設けなくてもよい方
- 家族人数が少ない
- こまめな買い物が苦にならない
- ストック管理が負担になりやすい
質のよい暮らしとは、
足すことよりも、
整えることで
完成度が高まるものです。
収納は「増やす設計」ではなく
「暮らしを映す設計」が大事。
パントリーだけに
限った話ではありませんが、
収納は計画次第で
住まいの価値を高める
可能性を秘めた空間です。
しかしそれは、
暮らし方と
丁寧に向き合ったときにのみ
成立します。
やまぐち建築設計室では、
間取り計画を描く前に
「暮らしの整理」を行い、
ご家族ごとに
異なる価値観を
空間へと翻訳していきます。
収納に迷っている方、
暮しについて
見直したい方にとって、
この考え方が
一つの指針となれば幸いです。
○関連blog
デザイン性と機能性を大切にしながら暮らしに溶け込む心地よい空間を考える間取りと設計デザイン・インテリアとLDK空間でのキッチン周辺のバランス。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail187.html
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奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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