ブログ・コラム
2025.12.13
住まいの色が心と暮らしを整える、壁・床・天井から考える色彩心理と建築設計
- カテゴリ:
- 家具と暮らしとインテリアコーディネート
住まいの色が、
心と暮らしを整えていくという事。
「大切なことほど、目に見えない」
そう感じる瞬間が、
暮らしの中にもあります。
心の落ち着き。
集中のしやすさ。
家族の会話の温度。

※壁紙(クロス)を選ぶ時間は、
暮らしの空気を整える設計時間。
住まい手さんの価値観と暮らしの趣から
間取りの先にある「心地よさ」を、
色と素材から丁寧に読み解いていきます。
それらは、
間取りだけで
決まるものではありません。
光の入り方、素材の質感、
そして色が、
静かに作用しながら、
日々の状態をつくっていきます。
私たちは日常の中で、
「なんとなく好き」
「無難そうだから」と、
色を選んでいることが多いものです。
しかし色は、
感情や行動の傾向、
さらには身体感覚にまで
影響を及ぼす
環境要素でもあるということ。
建築家の立場から見れば、
色は「飾り」ではありません。
暮らしの状態を整えるための、
設計要素のひとつです。
色は“気分”だけでなく、
“身体感覚”にも作用する
色の影響は、
気分の問題に留まりません。
同じ条件下でも、
赤系の空間では緊張や覚醒に寄り、
青系の空間では
鎮静に寄る傾向が見られる、
そんな実験報告もあります。
※脈拍・呼吸・血圧などの
反応差として現れることもあります。
もちろん、色の効果は
「万人に同じ処方箋」ではありません。
体調、経験、記憶、文化的背景、
そして照明環境によっても、
大きく変わります。
それでも、
住まいづくりの現場で
何度も感じることがあります。
色を整えると、
暮らしの“摩擦”が減る。
これは、
実感として確かなことです。
建築家として
色は「壁紙選び」ではなく
「暮らしの方向性を選ぶ行為」
だと考えています。
色選びで失敗しないために、
やまぐち建築設計室では、
色を単体で考えません。
次の3点セットで
捉えることを大切にしています。
・明度(明るい/暗い)
→ 空間の圧迫感・開放感、気分の軽さ
・彩度(鮮やか/くすみ)
→ 興奮・疲れやすさ、上質感
・色温度(暖色/寒色)
→ 団らんの温度、静けさ、安心感
さらに建築では、
壁・床・天井の「面積バランス」が
決定的に効いてきます。
・最も面積が大きいのは
「壁」
・体感に強く影響するのが
「床」(素材+色)
・空気感を左右するのが
「天井」(明度が鍵)
部屋別に色が“効く”
インテリアコーディネートの考え方
玄関|色で「安心」をつくる
玄関は、外の緊張から
内の安堵へ切り替える場所です。
低彩度のニュートラルカラー
生成り・グレージュ
柔らかい木色を基本に、
アクセントは小さく、
季節で替えられる範囲に留める。
それだけで、
心は驚くほど落ち着きます。
LDK|家族の温度は
「暖かさの設計」で決まる
団らんには暖色が向いています。
ただし、壁全面を
暖色にする必要はありません。
・床:
オーク〜ウォルナットなど“温度”のある木色
・壁:
白〜薄いグレージュ(明度高め)
・差し色:
クッションやラグなどのテキスタイル
木部で暖かさを担保し、壁は静かに。
これが、
長く飽きないLDKの基本です。
寝室|
眠りの質は「刺激の少なさ」で上がる
寝室は「見せる部屋」ではなく、
「回復する部屋」。
彩度を抑え、
コントラストを小さく。
青系が合う方もいれば、
ベージュ系が落ち着く方もいます。
大切なのは、
目と神経が休まる配色です。
書斎・ワークスペース|
集中は静けさでつくる
在宅ワークが増えた今、
色の設計は強い味方です。
青系は、集中・沈静の文脈で
語られることが多く、
落ち着きをつくりやすい色です。
ただし濃すぎると重さが出るため、
壁一面のアクセントや、
椅子・収納扉で
取り入れるのが現実的です。
水まわり|
白だけでは冷たくなる
白は清潔感の象徴ですが、
強すぎると冷たさも出ます。
白+木+少量のくすみ色
(グレーやセージ系)を加えることで、
清潔さと安心感が両立します。
実務で最も大切なこと
照明が変わると「同じ色でも別物」になる
色彩心理を住まいに活かすなら、
最後はここに行き着きます。
・昼の色(自然光)
・夜の色(照明)
同じ壁紙でも、
照明の色で表情は大きく変わります。
やまぐち建築設計室では、
色をカタログや
サンプルだけで決め切らず、
自然光と照明計画を
セットで検討することを
大切にしています。
色は「塗るもの」ではなく、
光によって
立ち上がるものだからです。
屋外で使う色や素材は屋外で
屋内で使う色や素材は屋内で
光の状態を近くして
検討を・・・・・。
先にも書いていますが
ホームぺージや
Instagramを通じていただく
相談事を
少しだけ公開させていただきます
(Q&A)
Q:落ち着く家にしたい。
まず何色から整えるべき?
A:面積が大きい「壁」を、
低彩度のニュートラル
(白・生成り・グレージュ)で
整えるのが近道です。
次に床の木色で“温度”を足します。
Q:おしゃれにしたいのに、
色で失敗しがちです
A:失敗の多くは
「彩度が高い色の面積が大きい」こと。
差し色は小物や布で工夫を。
壁や床は“静かに”が、
上質への近道です。
Q:家族で好みが違う場合は?
A:「個室は自由に」「共用部はニュートラルに」。
LDKは家族の最大公約数で、
寝室や書斎で自分の色を叶えると、
うまくいきます。
色は、
暮らしを前向きにする
「見えない設計」です。
色の効能が教えてくれるのは、
色は好みだけでなく、
心身の反応を伴う
環境だということ。
住まいは、
人生の時間を受け止める器です。
色を整えることは、
気分を飾ることではなく、
日々を整える環境の編集だと、
やまぐち建築設計室では
考えています。
新築・リノベーション
インテリアのご相談も、
「何色が正解か」ではなく、
「どんな暮らしの状態をつくりたいか」
というところから、
言葉や文字にして
考えてみてください。
資料請求・ご相談は
オフィシャルホームぺージの
お問合せから。
小さなお悩みからでも気軽にどうぞ。
やまぐち建築設計室|公式ホームページ
https://www.y-kenchiku.jp
○関連blog
壁紙で空間と暮らしのイメージをデザインするように、色・質感・柄の選び方次第で変化する暮らしの趣と暮らしを格上げするインテリアの構成提案。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail415.html
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
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