ブログ・コラム
2025.05.30
暮らしの余白を紡ぐ『土間』という存在、現代の住まいに心地よき奥行きをもたらす設えと間取りの工夫、奈良の風土と響き合う中間領域のある家づくりを、暮らしを丁寧に考えた距離感を設計する現代式なモダンな土間の存在提案。
- カテゴリ:
- 設計の事・デザインの事
暮らしの空間に土間の存在感を
デザインすることで
日常の過ごし方も色々変化します。
やまぐち建築設計室が提案する
「土間のある家」の間取りと暮らしの豊かさ。
※暮らしの奥行きを生む和モダンのリビング空間。石調のタイル仕上げ土間とフローリングをほぼレベルにして静かなコントラストを描き、
庭の緑と室内の素材感が美しく調和します。
やまぐち建築設計室が手掛けた現代の住まいに心地よき和をモダンにアレンジした余白をもたらす設計デザイン提案事例
間取り構成の中に
土間の存在をデザインするということ。
間取りというのは単に
「部屋を並べる」という作業ではありません。
そこに暮らすご家族の価値観や、
日々の時間の流れ、
心の在りようまでも映し出すものだと、
僕は住まいを設計をする際に
常々感じています。
そこに「土間」という要素を設けることで
暮らしの空間は
随分と奥行きが生まれます。
それは面積的な広がりだけではなく、
精神的な余白や暮らしの余韻といった
目に見えない質の変化も
もたらしてくれるものです。
土間というと、
かつての日本家屋の玄関土間や
作業場のようなイメージが
先行する方も多いかもしれません。
しかし現代の住宅設計において土間は、
自由度の高い多用途空間や
意識をデザインする仕掛けとして
再評価されつつあります。
そしてそれは単に
流行やデザイン性の話ではなく、
住まい手の暮らし方を
大きく変えていくポテンシャルを持つ
存在でもあるのです。
〇関連blog
間取りの工夫と暮らしの空間拡張、現代に息づく土間のある家の魅力。
https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail473.html
やまぐち建築設計室でも、
近年「土間を活かした間取り」を
ご希望されるご相談が
非常に増えてきました。
この背景には、
ライフスタイルが多様化し、
家の中にもっと自分らしさを
持ち込みたいという
価値観の広がりがあります。
今回は「土間のある暮らし」の魅力を
改めて紐解きながら、
設計の工夫や間取りの考え方、
予算感や素材選びに至るまで、
実際の設計現場での知見も交えながら
書いてみたいと思います。
ぜひ自身の家づくりのヒントとして
お読みいただければ幸いです。
暮らしに「土間」があることの意義。
家という空間の中で、
部屋という単位は「用途」を
前提として成り立っています。
リビングはくつろぐ場所、
ダイニングは食事をする場所、
キッチンは料理をする場所と、
ある程度機能が明確に分かれています。
一方で土間は、
その用途が固定されていない柔軟な空間です。
暮らし方や季節、
家族の成長とともに、
役割が変化していく懐の深さがあります。
また土間は屋内と屋外の
中間領域としても機能します。
まさに「内でもあり、外でもある」空間です。
この境界の曖昧さこそが、
現代の住まいにおいて
重要な価値を持ち始めています。
閉じすぎず、開きすぎず。
家全体に「呼吸するような流れ」をもたらすのです。
暮らしの中にどう活かすか
土間がある家の豊かな使い方・・・・・。
玄関土間として暮らしを整える。
もっとも一般的な使い方のひとつが、
玄関スペースに
ゆったりとした土間を設けるプランです。
玄関というのは単なる「靴を脱ぎ履きする場所」ではなく、
家と外との境界をつくる大切な場所。
そこに広がりのある土間を設けると、
靴や傘だけでなく、
ベビーカー、自転車、アウトドア用品など、
外に持ち出す道具の居場所が生まれます。
これは実用的な意味合いもありますが、
同時に「帰宅する時間」や「外出する時間」が
とてもスムーズになる効果もあります。
慌ただしい朝の支度が整いやすく、
帰宅時も自然とリセットできる。
暮らしのテンポを整えるための
土間とも言えるのです。
※和モダンのしつらえにホテルライクな洗練を纏わせたリビング空間。
タイル仕上げの土間を内側にフローリングを外側に配置してリビング室内土間のアレンジをデザイン。
穏やかに切り替わり光と素材の陰影が暮らしに奥行きを与える空間設計を取り入れた
やまぐち建築設計室による現代式土間を取り入れた住まいのデザイン一例です。
リビングと一体化した「土間リビング」。
より空間としての演出効果が大きいのが、
リビングの中に土間を取り込んだプランです。
床材を切り替えたり、
段差をつけたりすることで、
リビングの中に
視覚的な変化や空間のリズムが生まれます。
またタイルやモルタルの質感が加わることで、
空間全体に素材感の豊かさが加わります。
土間リビングは床座の暮らしにも向いています。
家族や友人がラグやクッションを置いて
自由に座り、
くつろげる空間になるのです。
またペットとの暮らしとも非常に相性がよく、
犬や猫がのびのびと
過ごせる場としても人気があります。
インナーテラスとしての土間。
さらに土間は「庭とつなぐ中間領域」として
活用するプランも検討することがあります。
大開口のサッシ(窓)と合わせて
土間スペースを設けることで、
リビングと庭が一体化した暮らしが実現します。
晴れた日にはアウトドアリビングとして。
天候の悪い日でも、
半屋外感覚で植物や趣味の道具を
楽しめる場所として。
釣り竿の手入れやホビールームの空間としても
活用する設計事例もあります。
土間を「つなぎのま」として
雪見酒を楽しんだり・・・・・。
庭との距離感をぐっと縮めてくれる
という効果があります。
庭との関係性を大切にされる方には
特におすすめのアレンジプランです。
趣味や仕事の場として活かす土間。
土間は汚れや振動に強いという
素材的な特徴があるため、
趣味や仕事のスペースとしても
高い汎用性を持ちます。
DIY、陶芸、楽器演奏、絵画制作、
ガーデニング作業。
従来の部屋だと汚れや音が
気になって難しい活動も、
土間であれば安心して行えます。
また、趣味空間として家の中に
「特別な居場所」を持つことは、
家全体の暮らしの充実度にも大きく寄与します。
設計の工夫・・・・・。
土間を快適な空間にするために
寒さや湿気への配慮。
土間は一般にコンクリートやタイルといった
素材で仕上げることが多いため、
冬場の冷たさや湿気対策が重要になります。
そこで有効なのが、
床下への断熱材の施工や床暖房の導入。
特にリビング一体型の土間では、
床暖房との相性が非常によく、
冬でも快適に素足で過ごせる
土間空間をつくることができます。
また壁面にも調湿効果のある素材、
たとえば珪藻土や漆喰を採用することで、
湿気対策が強化されます。
こうした素材選びによって、
美しさと機能性が両立した空間が
実現するのです。
素材選びの妙・・・・・。
土間は素材の選択によって、
空間の印象が大きく変わります。
たとえばモルタル仕上げであれば、
無機質でモダンな雰囲気に。
タイル仕上げであれば、
ホテルライクな印象を演出できます。
また洗い出し仕上げなどを取り入れると、
和モダンな趣きのある
土間空間もつくれます。
重要なのは、
家全体の素材構成との調和。
部分的な演出にとどまらず、
住まい全体の「空気感」に寄り添う
土間設計が求められます。
間取り全体との関係性。
土間を活かす動線設計・・・・・。
土間の設計で重要なのは、
単体で成立させるのではなく
家全体の動線とどのように
絡めるかという視点です。
たとえば、
玄関土間からファミリークローゼットを抜けて
リビングに至る動線を設ければ、
帰宅後の動作が非常にスムーズになります。
また、土間→パントリー→キッチンと
つながる動線を組めば、
買い物帰りの動きが快適になります。
つまり土間は、
ただの空間としてではなく
暮らしのリズムを整える
「動線の要」として設計することが
とても大切ということです。
予算の考え方。
土間にかける費用配分と優先順位。
土間のある家づくりにおいては、
「どこに重点を置くか」を明確にすることが、
満足度の高い家づくりにつながります。
たとえば寒冷地や冬場の冷えが
気になる地域であれば、
断熱や床暖房の予算を
優先するべきでしょう。
一方でデザイン性を重視する方は、
素材や仕上げのクオリティに
こだわりの予算を配分するのも
一つの方法です。
そして何より大切なのは、
土間が暮らしのどんなシーンで
役立つかを明確にすること。
それが優先順位を決める指針になるのです。
土間のある家がもたらす、
豊かな日常の提案。
土間は単なる設備や
予備のスペースではありません。
暮らしの余白を生み出し、
日常の質を高めてくれる空間です。
使い方は無限大であるという事。
家族の成長やライフスタイルの変化に応じて、
姿を変えていく柔軟さも持っています。
やまぐち建築設計室では、
「暮らし方」を丁寧にヒアリングしながら、
そのご家族に最適な
土間空間をご提案しています。
あなたの理想の暮らしに、
土間という豊かな余白を
取り入れてみませんか?。
家づくりを通して、
より心地よい暮らしの風景が生まれることを、
心より願っています。
やまぐち建築設計室は
その家に暮らす家族の過ごし方を
デザインする設計事務所です。
‐‐----------------------------------------
■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
気軽にご連絡ください
------------‐-----------------------------