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ブログ・コラム

2025.05.19

その85cmは本当に快適ですか?建築家が提案する住まいにと暮らしに関する家事効率と身体負担を見直すキッチンの高さ設計というデザインの考え方

カテゴリ:
キッチン 収納

 

キッチンの高さ、

85cmで本当に快適でしょうか?。

 

 

ホテルライクなモノトーンインテリアのLDK空間。黒を基調としたキッチンと、グレートーンの家具が調和した上質なデザイナーズ住宅のリビングダイニング。奈良で注文住宅を検討する家族向けの洗練された暮らしを演出する設計事例

 ※ホテルライクをイメージしつつ「ホワイトグレーインテリア空間」をデザインしたLDKに配置したキッチンの提案

 

 

―日々の料理が「楽」になる、

ちょうどいい高さを建築家と考える。

 

はじめに、キッチンという空間にこそ、

「身体との対話」が必要です。

 

家づくりのご相談にいらっしゃる方の中で、

キッチンの高さについて

具体的に検討されている方は、

意外と少ない印象を受けます。

 

システムキッチンだから大体同じだと思っていた。

標準でいいです

とおっしゃる方も多いのですが、

実はたった数cmの差が、

日々の疲れやストレスに直結するとしたら、

どうでしょうか?。

 

キッチンは、ただ「機能的」に

整っていれば良いという空間ではありません。

 

朝、昼、晩と毎日立つ場所。

仕事終わりに疲れた身体を動かす場所。
時に、家族との会話が弾む場所。

 

だからこそ、

その空間に立つときの「心地よさ」や

「身体の自然な動き」が、

暮らしの質を大きく左右するのです。

 

今回は、

そんな「キッチンの床からの高さ」

ということについて、

住まい手さんの身体感覚と

建築的視点からすこし書いてみたいと思います。

 

なぜ「キッチンの高さ」が

それほどまでに重要なのか?

 

キッチンの高さは、

調理中の姿勢や動作に

大きな影響を与えます。

 

たとえば・・・・・。

洗い物をしていると、

腰がずっと曲がっていてつらい。

 

・包丁を使うときに肩が上がってしまい、肩こりを感じる

・盛り付け作業の際に、目線の位置が合わず違和感がある

 

こういった「なんとなくの不快感」や

「ちょっとした疲れ」が、

日々蓄積していくことで、

料理の時間そのものがストレスに

変わってしまうこともあるのです。

 

さらに、

キッチンを使うのはひとりではありません。

 

共働きのご夫婦や、

成長してきた子供、

高齢の親御さんまで、

さまざまな家族構成に応じて

誰が使うかも重要な視点になります。

 

一般的な「85cm」という高さに潜む盲点とは?

 

多くの住宅用キッチンで採用されている

ワークトップ高さ85cm

 

これは、

JIS規格に基づいた高さであり、

日本人の平均的な体格に

最も適していると言われています。

 

勿論85センチだけではなくて

±5センチは標準で用意されています。

 

しかしこの「平均」に

安心しきってしまうのは少し早計です。

 

身長160cm165cmの方にとっては

フィットしても、

それより低い方・高い方にとっては、

わずか数cmのずれが

身体への負担を増やしてしまうのです。

そういう意味での日々の蓄積が

どのように影響するのか?。

 

標準であるがゆえに、

「選べる余地がある」ということに

気づきにくいのが、

キッチンリフォーム・新築設計における

盲点です。

 

建築家がご提案する「適切な高さの見つけ方」

 

僕自身が設計の中で活用しているのは、

数値的なアプローチと

実体験的な感覚の両輪です。

 

【数値から導く目安】

身長 ÷ 2 + 5cm
 これは基本的な目安で、

手早く基準を導くことができます。
 (例:160cmの方 → 160 ÷ 2 + 5 = 85cm

肘の高さ − 1015cm
こちらは身体の構造から導く方法で、

より身体に寄り添った基準値になります。

 

肘を支点にして包丁を扱ったり、

水仕事をする際、

自然な肘角度が維持できる高さこそ、

疲れにくいキッチンの基礎です。

 

建築設計においては、

「身長 × 肘高 × 調理スタイル」のバランスを

統合的に検討することが非常に重要です。

 

家族で使うキッチン。

誰を基準にするべき?

 

多くのご家族が直面するのが、

「誰の身長を基準にするか」という問題です。

 

・共働きで夫婦ともに料理をする

・子どもにも調理の機会を与えたい

・ご両親との同居・介護も想定している

 

このような状況では、

単一の身長基準では対応しきれない

ケースもあります。

 

そのような場合、

「主に使う方」+「他の家族が違和感なく使えるバランス点」を

設計の中で導き出すようにしています。

 

100点の正解はという意味ではなく

80点を家族全員で分かち合う事で

その設計が暮らしをよりよく

昇華するという考え方です。

 

キッチンリフォーム・新築時の具体的な選択肢

▽ 01|既存キッチンのかさ上げ

比較的コストを抑えられますが、

構造上の制限や美観面の注意が必要です。

 

仮に5cm上げたい場合でも、

床下収納や既設排水との兼ね合いを

慎重に検討します。

 

▽ 02|システムキッチンのサイズバリエーションを活用

現在は85cmだけでなく、

80cm90cm95cmといった

選択肢があるメーカーも多数あります。

 

さらに、

最近では85cmを基準に1cm単位で

設定可能なメーカーも登場しています。

 

木天井と間接照明が美しく調和した、フルオーダーメイド対応のバロスショールームの最新アイランドキッチン。異素材を融合させた洗練デザインと機能性を両立した空間は、奈良で注文住宅を検討中のご夫婦に人気の高級キッチンプランの参考事例

※フルオーダーメイド対応のバロスショールームのアイランドキッチン。

 

▽ 03|完全オーダーの造作キッチン

素材や形状、

棚の高さまですべてカスタマイズ可能な

キッチン設計。

 

やまぐち建築設計室では

調理スタイルや身体感覚に徹底的に寄り添った

オーダーメイド設計をご提案することも可能です。

 

「高さ」だけでは足りない、

暮らしに寄り添う空間設計へ。

 

快適なキッチン空間を実現するには、

高さだけでなく、

全体の動線設計や収納配置、

パーツごとの高さ設定も必要です。

 

・シンクの深さや高さ腰への負担

・コンロの高さ鍋の中を見下ろす角度の快適さ

・吊戸棚使用頻度に合わせた手の届きやすさ

・ゴミ箱や配膳スペース動作の流れの中での無理のなさ

 

これらをキッチン単体ではなく、

LDK空間を含む間取りとして

洗面やその他空間との接続性まで視野に入れながら

一貫設計することが、

使いやすい暮らしに直結していきます。

 

〇参考blog〇

間取りとの融合提案、生活の質を底上げする家の設計と暮らしのスタイル。

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail420.html

 

設備機器類ショールーム活用術

「立ってみる」から始まる理想の空間。

 

言葉や数値での説明では限界があります。
だからこそ、

ショールームで実際に立ってみることを

おすすめします。

 

ラグジュアリーなアイランドキッチンとダイニングテーブルが融合した、高級感あふれる和モダンスタイルのキッチン空間。照明と造作収納のバランスが美しい、奈良で注文住宅を検討する富裕層夫婦に向けたハイグレードな住空間設計の一例

※インテリアメーカーショールーム・MOLTENI&C OSAKAショールームLDK空間展示

 

・普段使っているスリッパや靴下で立ち位置を確認

・シンクで手を洗う・まな板を使う・フライパンを持ち上げる動作を体験

・家族全員が立って「違和感のない範囲」をすり合わせる

 

「不快感」は設計段階で取り除けます。

家族で感じて共有する時間こそ重要です。

 

ちょうどいい高さは、暮らしを変える。

家づくりは、目に見える形や仕様の

比較だけではありません。

 

ほんの数cmの差が、

毎日の心身のストレスを

取り除いてくれることもある。

 

キッチンという空間を、

「立つ場所」「調理する場所」ではなく、
暮らしの流れを支える装置として見つめてみる。

 

そうすることで、

家は単なるハコではなく、

「暮らしの質を上げるための道具」へと

進化します。

 

やまぐち建築設計室では、

身体と暮らし、

そしてご家族の未来に寄り添う

設計をご提案しています。

 

〇ご相談受付中|キッチンから考える家づくり

 

キッチンを軸に、

家事動線・収納・ライフスタイルの見直しまで。

 

住まいを自分たちらしく整えたいと

お考えの方はぜひ気軽にご相談を。

 

やまぐち建築設計室は
その家に暮らす家族の過ごし方を
デザインする設計事務所です。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

住まいの設計、デザインのご相談は
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