ブログ・コラム
2026.11.06
いい家を建てる前に、これからの暮らしを見つめ直してみませんか?|奈良の建築家が考える、間取りより先に大切なこと。
- カテゴリ:
- 住まいと暮らしの設計思想
いい間取りを考える前に、
普段の暮らしの話を大切に。
奈良の建築家が大切にする、
家づくりの打ち合わせと対話の時間。
家を建てることを考え始めたとき、
何から話せばよいのでしょうか?

※家族と過ごす時間も一人でくつろぐ時間も含めて
光や素材、家族にあった距離感
空間のつながりを丁寧に考えることで、
日常の心地よさを整えていくLDKの提案事例。
仕事を終えて帰宅したとき。
ようやく自分の時間になったはずなのに、
家の中でも何となく落ち着かない。
休日くらいはゆっくり過ごしたいのに、
片付けや家事に追われて
一日が終わってしまう。
家族と過ごす時間は大切にしたい。
けれど、一人で静かに過ごせる場所も欲しい。
そんなふうに感じることは
ありませんか?
新しい家を建てたり、
今の住まいをリノベーションしたりする際、
多くの方が最初に考えるのは
間取りやデザインのことだと思います。
広いリビング。
使いやすいキッチン。
ホテルのような落ち着いた空間。
庭を眺めながら過ごせる場所。
どれも魅力的な希望です。
しかし、
それらを一つひとつ実現するだけで、
本当に心地よい暮らしに
なるのでしょうか?
やまぐち建築設計室では、
家づくりの打ち合わせで
大切にするべきなのは、
希望する間取りを
確認することだけではないと考えています。
普段、どのような時間を過ごし、
何を心地よいと感じ、
どんなことに小さな負担を感じているのか。
そのような暮らしの話をすることが、
住まいづくりの
大切な出発点になると思うのです。
間取りの話ではない時間に、
家づくりの手がかりがある。
やまぐち建築設計室では、
住まい手さんとの打ち合わせで、
間取りや設備とは
直接関係のないような
お話をすることがあります。
例えば、日頃のお仕事のこと。
休日の過ごし方。
普段、どのような時間に食事をされるのか。
ご夫婦で一緒に過ごす時間と、
それぞれが一人で過ごす時間。
料理や洗濯、掃除など、
毎日の家事について。
時には、旅行先で心地よかった場所や、
最近興味を持っていることなども
話題になります。
一見すると、
住宅設計には関係のない
雑談のように思えるかもしれません。
けれども、私はそうした
何気ない会話を大切にしています。
なぜなら、
人は自分が毎日繰り返している行動ほど、
その意味や理由を
意識しなくなることがあるからです。
いつも座る場所。
自然と家族が集まる時間。
帰宅して最初にすること。
無意識に避けている部屋。
何となく落ち着く窓辺。
普段の暮らしを振り返ってみると、
そこには住まいを考えるための
手がかりがたくさんあります。
そして、
ご自身では当たり前だと
思っていた習慣が、
実は新しい住まいの設計において、
とても重要な条件になることもあるのです。
「家事を楽にしたい」という言葉の奥にある、
本当の希望。
例えば、
打ち合わせで「家事が楽になる間取りにしたい」
という希望があったとします。
その言葉からは、
回遊動線やランドリールーム、
収納計画などが思い浮かびます。
もちろん、
これらを検討することも大切です。
しかし、もう少し
暮らしを掘り下げて考えてみます。
家事が負担に感じられるのは、
なぜでしょうか?
洗濯物を運ぶ距離が長いからなのか。
使うものを片付ける場所が
決まっていないからなのか。
料理と洗濯を
同時に進めることが多いからなのか。
それとも、
仕事から帰宅した後、
家事に時間を取られ、
家族とゆっくり過ごす余裕が
なくなっているからなのでしょうか。
同じ「家事を楽にしたい」という
希望であっても、
その背景によって
必要な設計は変わります。
移動距離を短くすることが
大切な場合もあれば、
物の定位置を整えることが
効果的な場合もあります。
ご夫婦で自然に家事を分担できるよう、
キッチンや収納の配置を
考えることもあります。
家事動線を短くすること自体が、
最終的な目的ではありません。
家事に費やす負担を見直し、
その先にある大切な時間を取り戻すこと。
私は、そのような視点から
間取りや住まいの構成を
考えることが重要だと思っています。
家族と一緒にいる時間と、一人になれる時間。
どちらも大切にする。
仕事や日々の役割に
向き合う時間が長い方ほど、
自宅では気を張らず、
自然体で過ごしたいと
思われるのではないでしょうか。
家族と一緒に食事を楽しむ。
リビングで何気ない会話を交わす。
庭の緑を眺めながら、お茶を飲む。
一方で、本を読んだり、
音楽を聴いたり、
考え事をしたりする時間も
必要かもしれません。
家族との時間を大切にすることと、
一人の時間を大切にすることは、
決して矛盾するものではありません。
むしろ、それぞれの時間を
尊重できる環境があるからこそ、
一緒に過ごす時間も
自然体で楽しめるのではないかと思います。
例えば、リビングと
緩やかにつながる書斎。
家族の気配を感じながらも、
視線が直接交わらない居場所。
中庭を挟んで、
適度な距離感を保つ空間構成。
一人で過ごすことを、
家族から離れることとして考えるのではなく、
それぞれの心地よさを
尊重することとして捉えてみる。
家族全員が、
いつも同じ場所で同じ時間を
過ごす必要はありません。
一緒にいることも、
一人でいることも、
無理なく選べる住まい。
そのような自由さも、
豊かな暮らしを支える大切な要素だと
考えています。
住まいの環境は、
日々の行動や心地よさと
深く関わっています。
私たちが普段過ごしている環境には、
光や温度、音、視線、
空間の広がりなど、
さまざまな要素があります。
そして、これらは単なる住宅の
設備やデザインの問題ではありません。
例えば、朝の光の入り方。
夜に過ごす場所の照明。
室内の温度差。
屋外から聞こえる音。
窓を開けたときに見える景色。
こうした住環境の条件は、
快適性や睡眠、
日常の行動に関わります。
実際にWHO(世界保健機関)は
住宅の温熱環境や騒音、
居住空間などを健康に関わる要素として
取り上げています。
また、
住宅内の照明と健康に関する研究でも、
光環境と睡眠などの関係が検討されています。
もちろん、
どのような空間が心地よいかは、
人によって異なります。
明るく開放的な空間を好む方もいれば、
少し照度を抑えた
静かな空間で落ち着く方も
いらっしゃいます。
大切なのは、
誰にでも同じ住環境を当てはめるのではなく、
その人の生活習慣や感覚を考慮して
整えることです。
朝は自然光の中で
気持ちよく過ごせるように。
夜は光の強さを調整し、
落ち着いた時間を過ごせるように。
外からの視線を気にせず、
カーテンを開けて庭を眺められるように。
その一つひとつが、
日常の何気ない時間の
過ごし方につながっていきます。
耐震性や断熱性能といった
住宅の基本性能を確保したうえで、
暮らしの感覚に目を向ける。
私は、そこに暮らしを深掘りする建築家が
住まいを設計する意味があると
考えています。
人を招く暮らしと、
家族だけで過ごす暮らしを分けて考える。
仕事柄、
ご自宅に人を招く機会のある方も
いらっしゃいます。
友人や親しい方との食事。
仕事を通じて知り合った方との語らい。
ご家族や親族が集まる時間。
そうしたひとときを
心地よく過ごせるように、
住まいを整えることも大切です。
ただし、お客様をもてなすために、
普段の暮らしを
犠牲にする必要はありません。
例えば、人を招くときには
生活感を抑えた空間で迎えたいけれど、
日常の家事は効率よく進めたい。
そうした暮らしであれば、
来客の動線と
家族の生活動線を整理したり、
キッチンの使い方や収納計画を
工夫したりすることが考えられます。
反対に、親しい友人とは
料理をしながら
会話を楽しみたいという方には、
キッチンとダイニングが
自然につながる構成が
似合うかもしれません。
大切なのは、
見栄えのよい空間をつくることだけではなく、
誰と、どのような時間を
過ごしたいのかを考えることです。
住まいの上質さとは、
高価な素材や設備だけで
決まるものではないと思います。
自分たちの暮らしに無理がなく、
大切な人との時間を
心地よく過ごせること。
そうした日常の積み重ねにも、
住まいの豊かさは
あらわれるのではないでしょうか?
建築家との打ち合わせ時間は、
希望を伝えるだけの時間
ではありません。
家づくりを考えるとき、
ご夫婦で意見が異なることもあります。
一方は開放的なリビングを望み、
もう一方は落ち着いた空間を求めている。
収納を増やしたいという
希望がある一方で、
できるだけ広くすっきりと
暮らしたいという思いもある。
こうした違いは、
決して珍しいことではありません。
そして、どちらかが
間違っているわけでもありません。
大切なのは、
希望の違いをすぐに
解決しようとすることではなく、
なぜそう思うのかを
互いに考え話し合うことです。
例えば「広いリビングが欲しい」
という言葉の奥に、
家族が自然と集まる場所をつくりたい
という願いがあるのかもしれません。
一方「落ち着いた空間が欲しい」
という希望には、
仕事から帰った後に
静かに過ごしたいという
思いがあるのかもしれません。
その二つは、
設計の工夫によって
両立できる可能性があります。
建築家との打ち合わせは、
単に希望を伝え、
間取図を確認するためだけの
時間ではありません。
ご家族の考えを整理し、
お互いの価値観を知り、
これからの暮らしに必要なものを
見つけていく時間でもあります。
そして、会話の中で生まれた気づきを、
具体的な間取りや空間構成、
素材、光、動線へと
置き換えていくこと。
それが、建築家として
大切にしている打ち合わせの意味です。
住まいづくりの時間そのものが、
これからの人生を考える機会になる。
住宅の設計には、
さまざまな決断が必要です。
土地のこと。
間取りのこと。
予算や性能のこと。
素材や設備、家具のこと。
選ぶべきことは数多くあります。
そのため、
効率よく打ち合わせを進めたいと
考えるのも自然なことです。
しかし、何を大切にするのかが
整理できていないまま
選択を重ねると、
判断の意味に関して
不具合が生まれることがあります。
反対に、
自分たちが求める暮らしの方向性が
明確になれば、
優先するべきことも
見えやすくなります。
本当に必要な広さは
どのくらいなのか。
どの場所に予算をかけるべきなのか。
どのような設備が自分たちの生活に
合っているのか。
これから年齢を重ねても、
心地よく暮らし続けられるのか。
こうした判断を支えるのが、
打ち合わせの中で
共有してきた暮らしの価値観です。
だからこそ私は、
打ち合わせにかける時間を、
単なる住宅設計の
準備時間だとは考えていません。
これまでの暮らしを振り返り、
これからの人生で
大切にしたい時間を見つめ直す機会。
そのような意味を持つ時間で
あってほしいと思っています。
これから、
どのような時間を家で過ごしたいですか?
家づくりを考え始めたとき、
理想の間取りが見えてなくて構いません。
好きな住宅の写真を集めていなくても、
具体的なデザインの
イメージがなくても大丈夫です。
まずは、普段の暮らしを
少し振り返ってみてください。
家に帰って、
ほっとするのはどんな瞬間でしょうか?
休日に、もう少し時間をかけたいことは
何でしょうか。
毎日の暮らしで、
少し負担に感じていることはありませんか?
これから先、ご夫婦やご家族で、
どのような時間を
重ねていきたいでしょうか。
そうした何気ない会話の中に、
住まいづくりの大切な答えが
隠れていることがあります。
やまぐち建築設計室では、
奈良県橿原市を拠点に、
注文住宅の新築や
リフォーム・リノベーションについて、
住まい手さんとの対話を重ねながら
住まいと暮らしの設計を行っています。
和モダンの住まい、ホテルライクな空間
平屋住宅、中庭のある家。
そのような住まいの形について
考えるときにも、
まず大切にしているのは、
そこで暮らす方の毎日の過ごし方。
間取りやデザインの希望だけでなく、
今の暮らしで感じていること、
これから大切にしたい時間についても
お聞かせください。
ご自身やご家族のこれからの暮らしを、
少しでも深く考えるきっかけになれば
幸いです。
奈良で注文住宅や住まいの
リノベーションを検討されている方へ。
やまぐち建築設計室では、
予約制の個別相談を通じて、
暮らしのご希望や家づくりの
課題についてお話を伺っています。
住まいをどのように整えるべきか、
丁寧に考えてみませんか。
‐----------------------------------------
■やまぐち建築設計室 Since2005■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/
住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
ご連絡ください
‐----------------------------------------






